第8話
僕たちはしばらくお互いに何も話さずに学園まで歩いた。僕は学園に入ったところで流石に気まずさから謝罪をした。
「暗い空気になっちゃったな……すまない。こんな話をするつもりはなかったんだけど」
何故、こんな話をしようと思ったのだろうか?もしかしたらあの時、彼女が出していた空気、どこか何か辛いことを思い出すようなそんな空気に親近感のようなものが湧いたのかもしれない。まさか西野さんも……いや、とりあえず今は余計なことなど考えずに復讐に集中しよう。
翌日、僕と西野さんは学園長に呼ばれて、パーティーメンバーの紹介をされていた。
「二人とも、自己紹介を頼む」
「三年生の
「同じく三年生の
まさかの先輩ですか……。まぁ、同学年で組んでくれそうな人は思い当たらなかったけどさ……。
僕たちが自己紹介した後も、なんとなく気まずかったがそれはダンジョンに潜ってみると変わった。僕らへの戦いの中での配慮とかもそうだが一番はやはり……。
「手堅いな……」
二人は動きの一つ一つが洗練されていた。そして連携も取れていた。九条とかとは比べるまでもない。断然強かった。
一度気になって尋ねてみた。僕みたいな無能が入って面倒くさくはないんですか?足手まといじゃないんですか?と。
「ん?別に気にしないよ。それにあの学園長の頼みだからね~。」
その言葉には
そして、ダンジョンに潜ったりしながら一週間の経ったある日、とうとう僕の待望の日が訪れた。ついに僕の見せていた悪夢が九条と加奈の間にひずみを生んだ。
奴ら二人がいつものようにいちゃつこうとしたときに九条が軽いスキンシップとして加奈の体を触ろうとしたところで加奈がヤダッと言う声とともに九条を突き飛ばした。
「加奈?」
それに九条は唖然とした顔を向けた。
「なんで……なんか、怖いの。男の人が……。ああ!」
彼女は突然頭を抱えて苦しみ出した。僕は加奈が僕の思惑通りに苦しんでいるのを見て内心でほくそ笑む。
「おい!大丈夫か、加奈?」
「やめて!近寄らないで!助けて誰か!」
そんな加奈に九条は途方に暮れてしまった様子で立ち尽くしていた。
しばらくすると、先生がやってきて狂ってしまっている彼女を保健室に連れていく。
僕の悪夢はじわじわと精神を削っていき、現実世界にも影響を与えられる、その証明が為された瞬間だった。
ただ順調そうに見えて一つ懸念点があった。
それは——もう一人の標的である九条に特に変化が見られないところだった……。
普通ならそんなことはあり得ないはずだった。夢の中でカノジョを奪われてそのあとその本人から拒絶されるのだ。間違いなく夢のことが頭でチラついて動揺くらいはするはずなのに少し困惑しているだけ。これは間違いなく異常だ。だから僕は真相を探るために九条のことを監視しだした。
運のいいことに、九条はその日の放課後いきなり動きを見せた。野球帽にサングラスといういかにも怪しい雰囲気しか醸し出していない格好で。
僕はダンジョンに行かなくてはいけなかったので分身を出して意識を半分そちらに傾けながらダンジョンに潜った。
そして、僕は探索途中で思わずえっ?と驚きの声を漏らしてしまった。
九条の傍に女子が来てそのこと腕を公然と組み始めたからだ。
そう九条にはもう一人付き合っている人がいたのだ……。
もう一人の僕がそんな彼らを尾行する。
彼らが何かを会話しているので聴覚強化の魔法を使い会話を聴き取る。
「新しく付き合い始めたのに私なんかと一緒に遊んでていいの?」
「ああ、加奈のこと?あくまでも俺はお前が本命だって知っているだろあいつはお遊びだからw」
とっさに
お遊び?そんなので他人の大事な人を奪ったうえ、僕と西野さんを殺そうとしたのか。いかれてるなこいつ。やっぱり今すぐにでも殺してやらな……いや冷静になれ僕。殺すとしてももっと苦しめてやってからじゃないとダメだ。と現実の僕が殺意を必死に押し込めていると西野さんがそんな僕の様子を見て怪訝な顔を向けてくる。
僕は曖昧に作り笑いを浮かべてみせると再びもう一人の僕の方に意識を集中させる。
「可哀そうwww。それなのに上野くんから奪ったの?」
「おいおい、奪ったとか人聞きの悪いことはやめてくれよ。あくまでも別れたところを俺が貰っただけだから。それに悠乃だって似たようなもんだろ。——彼氏いるのに俺と一緒に遊んでるんだから」
……えっ?この学園終わってない?普通に浮気してるやつらいるの風紀乱れすぎてね……。ここまで来ると怒りというよりは呆れも僕には出てきた。
「そのことは言わない約束でしょ。お互い様なんだから」
「まぁ、そうだな」
状況をまとめよう。僕の見せてた
というかその悠乃とかいう女子と付き合っているお方さんよ、心から憐憫の情を示させていただこう。
でも苦しまずに安心していてくれ。そんなクソ野郎、——僕がまとめて燃やしておくから。
さぁてと、どうやってお料理しますかね。
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