接触1
3日間の休みの後、ダンジョンアタックを再開したが、ダンジョンから帰ると、何かしらの理由を付け綾人の許可の元アレクが宿を出て何処かに行ってしまう事が多くなった。
帰ってくるのは綾人が寝る直前や寝た後だ。
一度、女性物のような香水の匂いがしたので、あの元婚約者の所へ行っているのか命令にならないように聞いた所、アレクの虫の居所が良くないタイミングだったようで、冷たく"主人には関係ないでしょう"と言われてしまった。
アレクはその後すぐにキツく言って申し訳ないと謝罪の言葉はくれたが、理由を話す事は無かったので、本音が出てしまったのだろう。
きっと夜帰ってくるのが遅いのも、あの元婚約者絡みではないだろうか?
早く奴隷から解放される術でも探しているのだろうか?
円満に別れる為の"身体料"を用意しているのだろうか?
賎奴隷解放の手続きの話し合いでもしているのだろうか?
それとも元婚約者と男女のカップルとして愛し合っているのだろうか?
あの元婚約者に対して嫉妬心がわいてくる
あんな美人で、身分の高い貴族で、女性で自分には持っていないものばかりを持っている人。
男性は恋愛対象じゃなかった筈なのに、アレクの元婚約者への嫉妬心で、自分がアレクをそう言う意味で好きだと言う事に気がついてしまった。
そして、未だに第三王子である事も、女性が元婚約者である事も、夜何をしているのかも、何もアレクからは言われない。
いっそ鑑定で全部知っているんだぞと言いたい位だけど、また"主人には関係ないでしょう"なんて言われたら、今度は立ち直れなくなりそうなので、何も言えない。
それにアレクは物じゃない意志のある人間だ。この世界では違っても、綾人自身が"奴隷であってもアレクを1人の人間として扱う"事を決めているのに、今更アレクの行動制限なんてかけられるわけがない。
あれから、お互い当たり障りのない会話しかしないから、何となくギクシャクもしている。
今日は買い出しの日だ。アレクが1人で行くと言うので、綾人は宿で大人しく待っている。
あれから、アレクは買い出しは自分が1人で行くと言って綾人を宿に留めておくようになった。
綾人も外を出歩いて、たまたまアレクと元婚約者が仲良さそうに話している場面にでも出会したら、この奴隷と主人の関係が終わってしまう事を認めざるを得なくなってしまう気がして、怖くて出ることが出来なかった。
アレクが部屋から出て行ってしばらくした時
――コンコン。
ドアをノックする音が聞こえる。宿の従業員だろうかと思ってドアを開けるとアレクの護衛騎士のヨハンがいた。
思わず固まる綾人に、ヨハンは丁寧に自己紹介をして、事情を話したいから部屋に入れてくれないかと言われた。
綾人は何となく事情を察したし、鑑定で身元の話に嘘がない事も分かっていたので、廊下での立ち話も何だしと部屋に招き入れた。
そこで、アレクの国の現状を知る。簡単に言えば、王太子は半身不随で意識はあるものの対外的には弱味になりかねず先行きが不安、第二王子はクズ、第四王子は10歳で身分も低く、現時点で次期国王に相応しいのが行方不明だった第三王子のアレクしかおらず、戻ってきて欲しいという事だった。
アレクを陥れた国とはいえ、現時点で次期国王に相応しいのはアレクしかいないのだから、そりゃぁアレクには早く戻ってきて欲しいだろう。
そして、とうとうヨハンからアレクの本名と身分を聞いてしまった。
……鑑定で知ってたけど。
でも、出来れば本人から言われたかった……。
聞いてしまってはもう見て見ぬ振りなんて出来ないだろう。
案の定、本題はアレクの奴隷解放の件だった。
こちらも元々奴隷解放を計画していた事を話す。
ヨハンからすれば一刻も早く奴隷解放したいのかもしれないが、あと1週間で賎奴隷解放手続きも併せて出来るから、1週間待ってくれないかと話をした。
ヨハンも綾人がアレクを雑に扱っていない事が分かっているようで、1週間待ってくれる事になった。
そして、2人で詳しい計画を立てた。
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