買い物day

 せっかく新しい拠点に移ったのに、何故か結局アレクと同じベットで寝るという残念な結果になった翌日。


 本日は買い物dayだ。


 まずは空間魔法付き鞄! 戦闘するのに大荷物を持ったままというのは命取りになる。


 レベルが上がれば、綾人の無属性魔法でなんとかなる筈だが、レベルが上がる前に死んでしまっては元も子もないので、泣く泣く購入を決めた。


 アレクは要らないと言っていたが勿論アレクの分も買った。


 そして、ポーション!


 この世界にもポーションがあった。


 ポーションはランクが上がる程不味くなるらしい。


 流通している1番レベルが高いポーションはハイレアポーションで、切り傷位まではある程度治してくれるらしい。ただ欠損したものは戻って来ないし、1度肉体から離れてしまったものは外科手術などないこの世界では失ったも同然なんだそうな。


 それに流しすぎてしまった血等は戻って来ない為、ポーションで無理矢理傷を塞いだ所で出血多量での死亡やショック死などは普通にある。


 後はHP回復薬やMP回復薬を2人分揃える。


 ここでもアレクは魔法が使えないからMP回復薬はいらないと言っていたが、喉の呪いを解呪したら魔法が使えるようになる事を知っている為、適当な理由を付けて無理矢理持たせた。


 そして、服。こちらも上着から靴まで一式2人分揃えた。


 ちょっとお金を出せば、ただのシャツに革鎧並の防御が付与されたシャツ等があったので、そちらを購入。


 鎧なども試着してみたが、重いし慣れないので、お金で解決する事にした。


 アレクも同じ感じにしたら、ちょっと呆れていた。


 ……良かれと思ってやってるのに解せぬ!


 最後に武器。


 アレクにはお金の糸目を付けず、選ぶように指示した。生命線だからね。


 綾人も店の中を色々回る。バトルアックスとかあって興味深く、持とうとしたら重くて持ち上がらなかった……。


 綾人のメインは居合術という事で、刀が無いか探したが、主流は剣のようで置いて無かったし、店主に聞いても王都まで行かないとないのではと言われて諦めた。


 でも、ここは魔法の世界! 無属性魔法のレベル(4)で身体レベル60以上又はレベル(5)で身体レベル10以上になると“創造魔法”というものが使えるらしいのだ。


 半ば伝説になっている錬金術師が無属性魔法レベル(5)を持っていたのは有名な話で、その辺りの記録は割と残っていた。


 そして、余談だが魔法属性の中でも無属性魔法がレベル(4)とレベル(5)での差は一番あるのではと言われている。


 そして"創造魔法"はレアな魔法なのだが、有用かというと実はそうでもない。創り出す事は可能なのだが、しっかり物の構造などが頭に入っていないと成功しないのだ。


 だから例えば、皿などは半径10センチで円形で、外側から少し中央に向かって傾斜があり、土を焼いた物でできていている……位説明できればあとはイメージ映像と合わさって物が出来るが、銃を作ろうと思って形だけイメージしても中の仕組み等を理解していないと物は作られないみたいなのだ。


 わざわざ魔力を使って、色々仕組みを理解してから皿を創り出すより買った方が早くて良い物が手に入るのだから、わざわざ創造魔法を使わなくても良いだろう。それに魔法属性レベル(4)以上からじゃないと使えないのもあって使い手が少ないのもあり、使う者がいるという噂は聞かない。


 だが、綾人の場合、レベルさえ上げれば条件を満たすし、子供の頃から居合をやっていたのだ、それこそ最低限の手入れはしていて、刀を分解した事もあるし、研ぎ師に頼んで研いで貰ったり、柄巻師に柄巻を交換して貰ったり、好きな刃紋について語り合ったりと刀との付き合いは長い為、問題なさそうなのだ。


 だから、レベル10までは、戦闘せず自分のメイン武器を得てから、少し戦えるようにしようかと思っている。


 それに、次にそこそこ出来る薙刀とか杖もこの店には売っていなかった。杖の代わりに槍があり、使えない事も無いが、容量の小さい空間魔法付き鞄に入らず持ち歩きに邪魔だし、ダンジョンの草原エリアならまだしも、最初は洞窟エリアらしくあまり広くはないので使い勝手が悪い。


 ただ、完全な丸腰というのもアレクが良い顔をしなかったので、投擲用のダガーを1セット購入した。


 アレクは魔法剣では無く普通の剣を選んだようだ。もうちょっと良いものでもと思ったが、アレクも譲らなそうだし、鑑定してみたが特に悪いものでは無さそうだったので、それを購入した。


 店を出ると、もう日が暮れる所だったので、そそくさと宿に帰る。


 ダンジョンに入るのは明日からだ。


 剣購入後からすぐに剣を帯びるアレクはやはり、元騎士団という事もあってかしっくりきていた。


 眼帯に品の良い戦闘服に使い慣れていそうな剣を帯びたイケメン……格好良すぎて周りからの視線も熱を帯びる物が多いようだった。


 奴隷じゃ無かったら、ハーレム主人公を地でいく存在だろう。


 まぁ、あと数ヶ月後にはそうなっているだろう。


 アレクとの契約は"1年"と言っていたが、実はここに来る前にふらっと奴隷販売所に行って、奴隷紋の除去を1年後ではなく3ヶ月後には出来るよう、奴隷販売所との契約を結びなおしていた。


 アレクとの生活は全く嫌では無く心地良い。


 良く綾人の事を見ていて、何に置いても先回りして準備を整えていたりするし、綾人の事を暴こうともせず、綾人の事は知らない筈なのに、そんな事気にならないとでも言うように懐いてくれているように見えるのだ。


 だからこそ、1年も一緒に生活したら、綾人がアレクを手放せなくなりそうで怖かった。


 ……アレク離れをする為にも新しい拠点に来たのに、まさかの同じベット続行とは思わなかったが。


 なんなら、前よりベットが小さくなったので密着度は上がってしまった。


 まぁ、そんな生活もあと数ヶ月。この世界の常識もわかってきたので、後はどう生活するのが一番穏やかなスローライフを送れるか考えていくだけだ。


 宿に帰って落ち着いた頃ステータスを見て所持金が2億Gを切っていて、悲鳴を上げるのは数時間後の事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る