とある日のデート

あの日から数日が経過し、私は町に遊びに来ています。

何の為って?それはもちろん玲央様とデートをするためです!

待ち合わせ場所の噴水の前で早く来ないかなと、ソワソワしながら玲央様の到着を待っていると

遠くの方から走ってくるような音が聞こえ、そっちに視線を向ければ玲央様が走りながらこちらへと向かってきていた。

「玲央様…!」

「っはぁ…!ごめんっ待たせちゃったかな?」

「いいえ、今来たばかりですわ」

「そっか……良かった……」

「それよりも……玲央様、髪が乱れていますよ」

そう言うと、私は彼の髪を手で軽く整えてやる。

すると、玲央様の顔がみるみると赤く染まっていった。

「わっ…ご、ごめんね…っ百に会いたくて急いでたから…」

「実は、私も玲央様に早く会いたくて待ち合わせの一時間前に着いてしまって……お揃いですね」

私が照れくさそうにはにかむと、玲央様も恥ずかしくなったのか顔を逸らしてしまった。

そんな様子が可愛らしくてつい頬が緩んでしまう。

「百、今日は何したい?」

「えーっと……」

考えながら町を見回していると一つのお店が目に入った。

それは、前世の私が大好きで、この世界にもあることが嬉しくてそのお店をジーっと

見つめていたら、玲央様にあのお店に行きたいの?と聞かれ、はっ、と我に返った。

「あ、いや、えーと…」

「だってあんなにジーっと見つめて、いいよ。いこっか?」

「わっ!ちょっと!玲央様!?」

玲央様は私の腕をつかみ、走り出した。

そして、あっという間にそのお店の前まで来るとお店の中に入っていく。

お店の中に入ると甘い匂いが広がっていて、この空間にいるだけでも幸せな気持ちになれる。

「でも、百がチョコレート好きだなんて知らなかったなぁ~昔は嫌いって言ってなかったけ?」

「えっ!?あー…成長して味覚が変わったんです」

「ふ~ん?」

我ながら苦しい言い訳だ、我ながら苦しい言い訳だ、と思いながらも何とか誤魔化せたようでほっと一安心する。

確かに【前の百】なら嫌いだったかもしれないが、今は私になったので好みも変わっているのだろう。

しかし、この変化はゲームの進展に何か影響はあったりするのだろうか?

この間だって、ヒロインであろう子の魔法の暴走の話を聞いたばかりだし、また不安な事が増えた気がする。

「百?難しい顔してるけど大丈夫?」

「あ、大丈夫ですわ、どれも美味しそうで。どれにしようか迷っていたんです」

「じゃあ、はい!これ」

「これは…?」

渡されたのはラッピングされた小さな箱。

「チョコだよ、俺からのプレゼント」

「え?いや、悪いですよ!」

「いいから受け取ってよ」

「……ありがとうございます」

玲央様から貰ったのはハートの形をしたピンクのチョコレート。

とても可愛い見た目で食べるのが勿体無いと思ってしまった。

「じゃあ、いこっか?」

「そうですね、行きましょうか」

さっきの買い物で少し疲れた私達は、街中から少し離れた

人気の少ない公園に来た、辺りを見回して目に入ったベンチに腰掛けると

さっき玲央様から頂いたチョコレートの箱を紙袋から取り出し眺めた。

この世界に来て初めて貰ったプレゼント、それが嬉しくて…なんだか、食べるの勿体ないなぁ

そう言えば、前世でも初めて貰ったプレゼントはチョコレートだったな。

「本当にチョコレートが好きなんだね、百」

「えっ?…はいっ、でも食べるのが勿体ないなーって思ってたんです」

「じゃあ、俺が食べさせてあげる」

「へ?……っ!」

玲央様は私の口元まで、チョコレートを持ってくるとそのまま指ごと口に突っ込んできた。

「どう?おいしい?」

「ふぁ、ふぁいっ……おいひぃです……」

玲央様はそのまま私の口から指を引き抜くと、今度は自分の唇に持っていきぺろりと舐める。

その姿に私はドキドキしてしまい、思わず目を逸らすとクスッと笑われてしまった。

「百、もう一個あるから、はい」

「じ、自分で食べられますわ!!」

玲央様は有無を言わさず、再び私にチョコを食べさせようとする。

さすがにこれ以上は恥ずかしくて無理なので断ろうとするが、彼は一向に引き下がろうとしない。

結局根負けした私が折れ、玲央様の差し出すチョコを口に含むと、彼は満足そうな表情を浮かべた。

「美味しい?」

「……はい、ありがとうございます」

「ねぇ、百。俺にも頂戴……?」

「え……っんぅ……っ!?」

突然顎を持ち上げられ、キスをされると同時に口内に甘さが広がった。

玲央様は、ゆっくりと口を離すと妖艶に微笑みながら、耳元で囁くように言った。

「ごちそーさま♡」

さっきまでの可愛かった玲央様を返して欲しい…こんな事されたら私の心臓がいくつあったって足りないよ…っ

そんな事を思いながら私たちの甘いデートの時間は過ぎていったのだった。

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