婚約者がやってきた!

ノックの音に『はい』と返事をすると、ゆっくりと扉が開かれそこに現れた人物それは……

「百!?倒れたって聞いたんだけど大丈夫!?」

そうだ…忘れてた…私の婚約者の『月城玲央』

少しふんわりした性格だけど、怒ったら怖いってあかりは言ってたっけ。

「ごきげんよう、玲央様」

「ごきげんようじゃ無いよ!百本当に大丈夫?」

「ふふっ、玲央様が来てくださいましたから、もう大丈夫です」

「そっか、よかったぁ…」

この人攻略対象じゃ無いからか、ヒロインに一番優しくていい人じゃんって思うかも何だけど

私の事が好きすぎて、私の言う事は何でも聞くから

ヒロインに意地悪する計画に乗ってきたり、手助けをしたりするらしい…

まぁ!私が転生したからにはそんな事はさせないんだけどね!

と言うかこの世界本当にヒロインに優しくなさすぎるよ…まだ見ぬヒロインに私は少し同情してしまった。

「そうだ百!今日はね百が好きそうな本もってきたんだぁ」

「本…ですか?」

「そう!えっと…これ!」

そう言って手渡されたのは、綺麗な装飾が施された本だった。

表紙にはエプロンドレスにリボンを付けた女の子が描いてあった。

これはもしかして不思議の国のアリスだろうか?嬉しいなこの世界にもあったなんて

それにこの世界の百もアリスが好きなんだ、ほんと私とそっくり。

「これ……いただいてもよろしいのでしょうか?」

「うん!」

「ありがとうございます玲央様…大切にします」

「喜んでくれて僕もうれしい、あ、そうだ、この本一緒に読もうよ!二人の方がきっと楽しいし」

「えっと……」

「だめかな……?」

「いえ!そんなことありませんわ!では、お言葉に甘えて……」

「やった!それじゃあ」

そう言うと玲央様は私の近くに座り本を広げた。

「ほら、ここ座って」

そう言いながらポンポンと自分の膝の上を叩く。

その仕草がまるで子供みたいで思わず笑みを浮かべてしまう。

「玲央様……?その体勢は……」

「だって二人で読むならこれが良いと思って、はいどうぞ?」

いやいや、そんな笑顔で言われましても……

「さすがに恥ずかしいですよ……」

「僕は気にしないよ?だからおいで?」

うっ……そんな甘い声で言われたら断れないじゃない……

「分かりました……失礼致します……」

そう言って彼の上に腰を下ろすと、彼は嬉しそうにぎゅっと抱きしめてきた。

そして後ろからページをめくっていく。

「ねぇ、百はどのシーンが好きなの?」

「そうですね……やはりアリスが一番好きですよ」

「やっぱり?僕はチェシャ猫だなぁ、なんか自由奔放って感じで憧れちゃうよ」

「ふふっ、確かにあのキャラクターは魅力的かもしれませんわね」

「でしょ?あ、あと白ウサギも良いよね、ちょっとドジで可愛いし」

「えぇ、白ウサギはとても可愛らしいと思いますわ」

「あ、百、このシーンは?」

「これは……」

そんな会話をしながら私たちは本の世界を楽しんでいった。

「玲央様、そろそろ戻らないと……」

「んー、もう少しだけ……ダメ?」

「ダメ……じゃないですけど……」

「やった!ありがと」

あれから数十分経ったけど、彼はずっと私のことを離してくれない。

「そうだ、百は来年学園に行くんだよね?」

「はい、そのつもりですが…何かありましたか?」

「いや、ちょっと変な噂聞いちゃって」

それから、ぽつぽつと玲央様が話し始めたのは予想もつかない出来事だった…

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