異世界から生還したら、クラスメートに幼馴染を寝取られてたので俺は彼女の記憶をデリートした
東夷
第1章
第1話 帰ったらラブホ
「戻られてしまうのですね……あなたが居なくなってしまっては私はどう過ごせば良いのでしょう……」
「ごめん、向こうに残してきた大事な人がいるんだ」
別れるを告げると、どっと宝石のように綺麗な瞳から真珠のような大粒の涙をこぼす麗しいこの国のお姫さまであるマリエル……
そんな彼女たちにさようならの挨拶を済ませ、神官たちに頼んだ。
「最愛の人のもとへだな?」
「お願いします」
俺がここに来たときのように足下に魔法陣が展開し、キラキラとした光の粒子が身体を包み込んだ。
(さらば異世界!)
香織、待っててくれ!
* * *
ふと気づいたら、俺はシャワールームにいた。どこだ、ここ? まったく知らない場所で俺の家でも、香織の家でもない。ふと備え付けの大きなミラーに映る自分の姿を見て安心した。
元に戻ってる!
俺の姿形は異世界で死線を潜り抜けてきた結果、原形を留めないくらいに変化していたから……それにしても、転移する前はオタク、陰キャ、小太りと三重苦丸出しだったのに、顎のラインはシャープに、痩せた影響で顔の彫りも深くなったような気がする。それに全体的に筋肉質になってた。
これが俺……
女の子みたいに両手で頬を触ってた。
女の子!
そうだ、神官たちに香織の側にって、頼んだはずなんだが……俺がどこなのか思案していると、何やら声が聞こえくる。
「す、すごぃよぉ……」
香織の声だ。なんだ、ちゃんと神官たちはいい仕事してくれたんじゃないか、ありがてえ! 俺は香織の声のする方に引き寄せられるように向かおうとしたのだが、何だか妙に吐息混じりで色っぽい……
「祐介く……ん……」
「桐島のことなんて俺が忘れさせてやるよ」
「うん……」
祐介? 俺のことを忘れる?
どこかで聞いたことのある男の声も聞こえる……
シャワールームのドアを開けるとギィと大きな音を立て、開いた。俺はこのとき開けてはいけない扉を、開けてしまったのかもしれない。
なんてことだ……
ドアの音なんて気にならないくらい男と女が激しくまぐわってる……でも、女の子の方は俺の知ってる香織の髪色とは違った。異世界へ飛ばされる前は黒髪。だが顔を見れば分かる。香織は明るい髪色に変わっていた。
ギシギシとベッドが軋む。垢抜けた香織の上にクラスメートの山崎が覆いかぶさっていた。
「そんな……なんでなんだよ香織……」
「きゃっ!? え!?」
「桐島っ! おまえ、生きてたのかよ!?」
布団で下半身こそ隠れていたが、もう何やってたか小学生ですら分かる。俺に気づいた二人は混乱していたが、俺も混乱してるんだよ!
異世界から命からがら戻ってきて早々に幼馴染で彼女をクラスメートに寝取られてる場面に遭遇しちまったんだから!
「
「は? 何が違うんだよ! 俺がどれだけ苦労したって思ってんだよ。何度も何度も死にそうになってやっと戻ってきたのに、香織がこんなにも薄情だと思わなかった」
中学生んときはいい雰囲気になってたが、キスまでってお互いに決めて、高校生になって親がいないときを見計らって、と思ったら俺は異世界に……
香織と結ばれる……
それを頼りにして、異世界で好意を持たれた相手からの誘いも全部、断ってきたっていうのに香織は簡単にクラスメートに股を開いてるって、何なんだよ。俺だけ誠実を貫いたって馬鹿みてえじゃん。
どっちが誘ったとか、そんなのどうでもいい……
本当なら山崎をぶん殴ってやりたいとこなんだろうけだど、俺にそんな気力すら残らないくらいショックを受けてた。死にそうになったり泥水すすってようやく帰ってきたら、これだ。
まるで戦地から帰ったら、嫁が間男と不倫してた気分だよ!!!
清楚な子だったのに他の男に突かれて、あんな乱れて喘いでなんてもう何も信じられねえ!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!」
俺はラブホの階数を確認もせずに窓を開いて、そのまま飛び下りていた。
「要ちゃーーーん!」
「桐島ぁぁぁーーーっ!」
―――――――――あとがき――――――――――
作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。
【乙女ゲーのざまぁされる馬鹿王子に転生したので、死亡フラグ回避のため脳筋に生きようと思う。婚約破棄令嬢と欲しがり妹がヤンデレるとか聞いてねえ!】
異世界ファンタジーざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!
表紙リンク↓
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