第8話 休憩室での楽しみ

8月。


夏休みも明け、仕事の休憩中に浩哉と花菜は、事務室で映画やドラマの話しで盛り上がっていた。


「皆藤さんもうバーフバリ見てくれたんだ!どうだった?」


「予想以上に面白くて、徹夜で一気に2作見ちゃいました。特に2作目が面白かったです!」


「分かる!特に2作目最高だよね!」


「はい!今日は薦められたダークナイトを

見ますね!」


「マジか、そんなに無理して一気に見なくていいよ!」


(本当、素直でいい子だな.....)


食堂の事務室は狭く、デスクとパソコンが2台しかない。


そんな事務室で浩哉は、パソコンの得意な花菜に事務作業をメインに教えるようになっていた。


2人っきりで仕事をする時間が増え浩哉と花菜は必然的に話す時間が長くなり、休憩中も

従業員のほとんどが休憩室で過ごす中、浩哉と花菜は事務室で2人で過ごすようになっていった。


「わたし、チーフとこうやってお話しするのが仕事中の1番の楽しみなんです。」


「俺もそう!休憩時間1時間じゃ足りないよね。」


「チーフは何時に仕事終わるんですか?わたし、それまで仕事してもいいですかね?仕事終わった後話しましょうよ。」


あまり、自分から何かを提案することの少ない花菜が、珍しく提案してきたので浩哉は正直嬉しかった。


(嬉しいけど、仕事終わりに休憩室でいつまでも2人で話してるのもおかしいよな.....他のパートの目もあるし)


「いいよ。そしたら、仕事帰りスタバでお茶して帰らない?」


何気なく言った浩哉の言葉だったがそれが間違いだった。


「いやいや、パートとチーフがお茶なんかしてたらおかしいですよね?」


「そうかな?確かに、誰かに見られる可能性はあるけど、お茶ぐらいはいいんじゃないかな?」


「ありえないんで、2度と誘わないで下さいね!お茶だろうとなんだろうと、何があっても絶対に行かないので!」


花菜が珍しく怒ったような、呆れたような口調で言うので浩哉は驚いた。


「ごめん、ごめん、そしたら無理に時間作らなくていいよ。」


「こちらこそごめんなさい.....今日は帰りますね。お先に失礼します。」


そう言って花菜は逃げるように帰って行った。


(お茶だけでこんなに嫌がられるとは...。

とりあえず謝りのLINEを入れとこう。)


佐藤浩哉:さっきはごめん!外で会おうなんて言って、お茶でも何でも結婚してたらやっぱヤバいよね。明日も仕事頑張ろう。お疲れ様でした。


しかし花菜から返信が来る事はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る