第14話 雪は太陽を望む
これからどうしようか。日も暮れてしまったし、探し物をするには暗すぎる。
風も強くなってきた。
日向は普通の家庭の女性だ。普通の親は子の帰りが遅いと不安になるだろう。
俺は向かうべき場所があることにして、半ば逃げるように立ち去った。
彼女は俺を心配し、引き留めようとした。たぶん見透かされていたんだろう。
それでも俺は振り切って逃げた。
これ以上彼女に迷惑をかけるわけにはいかなかったから。
いつかまた会えたら礼が言いたい。
今度は俺が彼女をもてなしてあげたい。
そう思ったのは生まれて初めてだ。
ここまで初めての感覚を何度も連続して経験するなんて、赤子の時以来だろう。
当時のことは覚えてないが、それなりに毎日が楽しかった気がする。
いつからだろう。寒さを感じるようになったのは。
結構歩いてきた。やはり長時間歩くとのどが渇く。
空を見上げても雨粒一つ落ちてこない。
「のどが渇いた。」
そんなことを呟くと突然雨が降ってきた。雨なんてものじゃない。土砂降りだ。強風の所為で、横から殴るように雨粒が襲ってくる。
痛い。
ずっとだ。
ずっと殴られてきた。
ずっと。ずっと。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっと。
嫌な事を思い出した。
足に力が入らない。
ついに無理をしたつけが回ってきた。
もう彼女とは会えないかもしれない。
せめて屋根のあるところまで行こうと、最後の力を振り絞り、何とか体を引っ張っていった。
近くに建物が見えたのでそこまでは耐えることができた。
俺はすぐさま倒れこんだ。でもさっきと違ってちゃんと意識はある。
今度は休むように壁に寄り掛かった。
ちゃんと休むように。休んでもう一度彼女に会えるように。
よく見るととても汚い建物だった。かすかにたばこと書いてあるが、ずいぶん汚れているし、何よりとても傷んでいる。
おそらく、長いこと空き家なのだろう。
ここなら誰も来ることはなさそうだ。
濡れた服がこびりついて不快だ。
とても寒い。
俺は雪山の遭難者のように眠りに落ちてしまった。
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