コオロギ食より人間食な未来

漢字かけぬ

第1話 倫理観崩壊の果てに

 コオロギ食より人間食な未来


 ー 世界観 ー


 突如全世界が推しだしたコオロギ食。

 当然我がテンプラ国も例外ではない。


 しかし動物性たんぱく質が不足している20年後の未来。

 発案当初よりも技法が洗練され低カロリーで旨い物が当たり前になっていた。


 ところが今度はコオロギ食が不足する事態となり人々は飢えていた。


 と同時に2023年から続く引きこもりやニートなどの社会問題がより顕著に。

 具体的には60万人いた彼らは100万人に増えてしまった。



 ー 人間食の歴史 ー


 このままでは資源が枯渇してしまうと焦った政治家は対策をした。

 葬式で人間を焼く過程を廃止し巨大なミキサーで液状に変換するよう指示。

 これが人間食の始まりである。


 もはや遺伝子組み換え生物しかいないこの惑星において”人間”すら

 リソースにしなければやっていけないほどのタンパク質不足なのだ。


 ポールワイス氏の思考実験では試験管に生きた動物を入れ、(Aとする)

 原形が残らないように処理、(Bとする)

 重量はAもBも変わらない。さて失われたものは何か?という問い。

 かの実験の答えは生物学的組織の崩壊が答えだ。


 でも初めからAもBも死体ならば?

 火葬もミキサーも変わらない。命の尊厳は守られるべきだが死体にはない。

 アイドルやインフルエンサーたちだった物を小さな瓶に入れて売り出した時

 人々はこぞって買い求めた。

 人間食がビジネスの標的になった瞬間である。



 ー さらなる躍進 ー


 火葬による二酸化炭素を発生させないミキサー葬は旧SDGSの思想を継ぐ。

 環境に対して意識の高い住人にも受け入れられ世界中に広がった。


 しかしテンプラ国は環境問題より少子化もとい無子化のほうが問題だ。

 なにふりかまっていられない政府は100万人いた引きこもりに

 仕事を与えるため知恵を出した。

 特定の性別に対しては人権問題になってしまうため、

 XY染色体を被験者にして実験はスタート。

 無論初手で去勢はします。


 辿り着きし最終結論は”人間の遺伝子及び容姿を改変させ搾乳させること”だ。

 20年前ですら”例の病気のワクチン接種者の母乳から抗体が検出された”

 ことが確認されている。

 搾乳係には各種成長ホルモンが積極的に投与されている。

 つまり抗体と栄養たっぷりのミルクで育った人間たちは圧倒的なスタイルと

 美男美女の集団となるのは想像に難しくない。



 人権問題については1日12時間の動物性たんぱく質を供給させるため

 個室とネット環境WI-FI、パソコン、衣食住を提供した。

 彼らは喜んで我々の実験に協力してくれた。

 小言をいう親もいなければ月に20万以上の資金が配布、

 20年前の生活保護より高額なのだ。

 親から渡される”お小遣い”よりも高額かつ

 働いたら負けな彼らのプライドを傷付けない最良手。


 ー 反発 ー

 

 コオロギ食を許容した人間たちも

 顔の崩れた生命から出されたミルクは拒絶するようだ。

 ならばと整形外科医を呼び片っ端から顔面を整えた。

 搾乳に耐えうる巨大な乳房と偽りの美人顔。

 下手な人間よりも美しくなったので彼らに恋をしたり

 人間同士の婚姻率が低下したがそれは別部署が対応する問題だ。


 ー 各国政府の対応 ー


 当然テンプラ国以外が黙ってはいない。

 各国似たプランを開始するが、人権問題やら給料を上げろの大合唱。

 せっかくの動物性たんぱく質工場となったテンプラ国を潰すわけにはいかず、

 技術提供で手を打った。


 テンプラ国の搾乳係は勤勉である。

 ネット環境さえ与えておけば12時間も個室から出ない。

 食事やトイレ、シャワーは別だが歴戦の猛者はペットボトルで用を済ませ、

 ながら食事をしてまで搾乳に取り組んでいる。

 理論上睡眠とシャワー以外は搾乳され続け18時間越えの強者が現れた。



 ー 暴走する旧テンプラ国民 ー


 テンプラ国には各国に提供できる資源がなかった。

 故に機械加工品を提供してきたのだが、低賃金により優秀な技術者が流出。

 しかし今はミルクを売ることで各国から資金調達に成功したのだ。


 広がるグローバル化の波に押しつぶされたサラリーマンがひとり、またひとりと

 搾乳係へと変わっていった。


 他の産業が衰退し、高給取り扱いになった搾乳係に対して

 抗議運動が起きたこともあった。

 だがそれら全員を受け入れる準備がこちらにはある。

 公務員のような人数制限もないからだ。


 他者の足を引っ張ることしかできない20年前より賢くなったじゃないか。

 栄養満点のミルクのおかげだな。

 批判よりも自分が利益を得るために努力する方に回れたのだから。



 ー 搾乳係のその後 ー


 無論彼らは大量の薬品によって生きています。

 テンプラ国の利益の為に死んでもらっては困りますから。


 賃金を搾取されてた旧時代よりミルクで済む方が彼らにとって幸せでしょう?

 ふふっ。らしくないこじゃれたジョークをいった所でお開きにしましょうか。



 ー あとがき ー


 最近ひとり赤ちゃんプレイで哺乳瓶にハマっています。

 こんな怪文書にお付き合いいただきありがとうございました。

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