SJC、死後の世界でデスゲーム

園後岬

第1話 ガールミーツガールズ

 目が覚めたとき、私は知らない部屋にいた。


 たぶん自分の変な寝言で、アクション系の夢を見ていたからきっとそれっぽい決め台詞を何か叫んで、その声に自分で驚いて起き、そして振り上げていたらしいかかとをごんと打った。


 いった、と蕩けた声で呟いて、よくわけのわからないままうねうねと身じろぎして、何かに対する漠然とした苛立ちを、乾いた口の中でもごもご噛んで、瞼を開いたのは、それからだいぶ経った後だった。


 目を開けてからも、見たものがしっかり像を結ぶまでは数秒の時間が必要で、まず肌の触感と、次いで鼻と耳の感覚が、鮮明に脳内を侵食していく。


 冷たい床、埃っぽい空気、電灯はゴテゴテした白熱灯で、白い壁紙の天井にはシミ一つない。ああ、こんな天井知らないや、とぼんやりと思った。


 起きぬけの重い頭で、どこかのホテルで寝てしまったか、それとも誰か客の家にいるのかと考えて、凝り固まった背中の痛みに気づくのが遅れ、起き上がろうとするとバキバキえぐい音がした。


 昨日私、どこで仕事やってたっけ?働きの鈍い脳はろくな記憶を引き出してくれない。学校サボって、カフェオレ飲んで、電車に乗って―――新宿?渋谷?というかそもそも電車には乗れたんだっけ。


 いずれにしても、こんなにきれいな天井は、私の家のどの部屋にもない。帰りたくないなぁと独り言ちた。


 いっそ雇い主がもう一日拘束してくれないかと期待して、部屋の中をぐるりと見渡した。


 ちょっとレトロな、木造っぽいデザインのワンルーム。家具の色は全体的に茶色っぽく、天井と同じく白い壁に沿って、正面にタンス、左側の壁に本棚、反対側にドレッサーと、天蓋のついたキングサイズくらいのベッドがあった。


 敷物は、広い室内には不釣り合いな大きさの、幾何学模様のラグが一枚だけあり、部屋の隅っこの本棚の陰に寄せられていた。

 

 雇い主らしき人は見つけられず、私は自分のバッグを探して部屋の中を少し歩いた。

 

 たぶんベッドの上かなと思ったけど、布団をめくっても何もなく、少し離して隣に置いてあるドレッサーの天板の上にも見当たらなかった。


 あとは本棚の陰になっているラグのところしかなく、そんなところにバッグなんか投げるだろうかと思いながら振り返って―――反対側の壁、最初に寝ていた床からは見えなかったその場所に、女の子が四人、座り込んでいるのに気づいた。


 わ、と胸中で短い悲鳴を上げ、ばくばくと早鐘を打つ心臓に息を詰まらされる。誰だっけ、この人たち。


 寄り添うように体を預け合っている二人は、それぞれ別の都立高の制服で、一人は髪が長く、もう一人は肩ぐらいのボブをベージュ系の色に染めている。インナーを青くしているウルフの子は、膝に顔を突っ込んでいて確認できず、最後の一人は、なんというべきか、とにかく全部が、白かった。たぶん誰にも、見覚えはない。


「あ、起きた?」

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