第17話 その依頼、受けます!
翌朝、私達は二手に別れて行動を開始した。
アイシャはネーシャを連れて、必要な物の買い出しに出て、私とクウネはジーノさんのお店に向かった。
昨日の晩のうちにクウネに両親宛ての手紙を書かせたので、それをジーノさんに届けてもらうようにお願いするのと、あとはお仕事を紹介してくれないか、お願いする為でもある。
ジーノさんには昨日伝えていたので、すぐに応接室に通してもらった。
「忙しいのに、すいません。ジーノさん」
「いえいえ、全然問題ないですよ。お二人こそ昨日は家の掃除で疲れてませんか?」
「はは、私はあのスキルしか使ってないので、体は全然疲れてないんで、大丈夫です」
「クウネも、全然元気!昨日はご飯ありがとうございました!」
「それは良かった。で、お手紙でしたね?」
「あ、はい。これです。お願いします!」
そう言ってクウネは深々と頭を下げながら、ジーノさんに手紙を渡した。
ジーノさんはそれを受け取り、地図をテーブルに広げた。
「昨日は思い出せなかったんだけど、ここにあるランウェル村で間違いないと思うんだけど」
「そう!クウネ、ランウェルの村から来ました!」
「じゃあ、合ってるね。ちょうど近くを通る商会の定期便があるから、寄るように言っておくよ」
「ありがとうございます!」
「それと、この宛名はドラザン・ラヴィンと読むのかな?」
「そうです!お父さんはドラザン・ラヴィンって言います」
「よし、分かったよ。必ず届けるから、待っててね」
そしてジーノさんはその手紙を懐に仕舞うと、私の方に向き直り、
「で、ラフィーネ嬢はお仕事の件でしたね?」
「はい。できれば冒険者ギルドに登録をして、クエストでお金を稼ごうと思ってるので、ジーノさんに口利きをしてもらえれば助かるんですが」
「そうなんですね。でも、冒険者の登録は僕が間に入らなくてもすぐに出来ますよ」
「そうなんですか?」
「ええ、登録の際に手形を取って、名前を伝えるだけ。名前も偽名で構いません」
「そんなに簡単なんですか?」
「言い方は悪いですが、ギルドにとって冒険者は危険な仕事を請け負ってくれる消耗品みたいなもんです。手形は犯罪歴がないかを調べる為と、報酬を渡す時に本人かどうか確かめる為に取るんです」
なるほど、そういう事なのか。
誰でも簡単になれる代わりに危険と隣り合わせの仕事で、何の保障もない。
だから、日銭を稼ぐにはもってこいの仕事なんだな。
そのままジーノさんが続ける。
「それで、ギルドが出すクエストには必ず依頼主がいます。その依頼主はギルドも調査をして犯罪性がないか、確認してから冒険者に発注されます」
私とクウネは頷きながら、聞いている。
「我がトサレタ商会でも、時々ギルドに依頼を出すんですが、その依頼を出す時に、冒険者の指名が出来るんです」
「受ける冒険者を指名ですか?」
「そうです。ですので僕としては、依頼を出す時にラフィーネ嬢を指名するという形で協力したいと思ってます」
「本当ですか?」
「ええ、もちろんクエスト内容を確認していただいて、気に入らなければ断る権利もありますので、その時は遠慮せずに断ってください」
「いやいや、せっかくお仕事させていただくのに断るなんて、出来ませんよ」
「いえ、それは本当に遠慮せずにお願いします。中には危険を伴う物もありますので」
「解りました。その時はアイシャとも相談して決めるようにします」
そしてジーノさんに冒険者ギルドの場所などを聞いていると、一人の女性が慌てた様子で応接室に入って来た。
「来客中、申し訳ありません。支店長。緊急の案件でしたので」
「ん?何かあったのか?」
女性は私達に聞こえないようにジーノさんに耳打ちすると、ジーノさんの表情がみるみる険しくなっていった。
二人で何事か、小声で話すと女性は慌てて応接室から出て行った。
「ジーノさん、何かあったんですか?」
「いえ、ちょっとしたアクシデントがあったみたいですが、大丈夫です」
「でも、ギルドに依頼をというのが、聞こえたんですが…」
「うーん、仕方ないですね。ギルドに依頼をする案件ではありますが、危険なクエストになるかもしれませんので、指名はしませんよ?」
「どんな内容かだけでも教えていただけますか?」
「分かりました」
トサレタ商会で採掘を依頼している作業員が、作業現場でモンスターに襲われたとの事だった。
幸い、数人の軽傷者が出ただけで、無事に避難できたらしいが、先週も同じ作業場でモンスターに襲われたらしい。
それでギルドに、まず作業員の護衛の依頼を出すという事だった。
「作業員を襲ったモンスターはグレイベアという、凶暴なモンスターです。奴らは群れる上に、縄張り意識が強いので、このまま放置すれば恐らくこれからも、この作業場は危ないと判断したのです」
ジーノさんは沈痛な面持ちで、私達に話してくれた。
私の中では、もう聞く前から決まってたんだけどね。
内容を詳しく聞いたら、燃えてきた。
「その依頼、私も受けます!」
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