第16話 大掃除からのワクワク

 話もまとまり、ジーノさんは立ち上がり


「よしっ、それでは私の店に戻りましょうか?契約書も書いていただかないといけないですし」


「そうですね」



 そう言って、四人とも立ち上がった瞬間、

 ぐーっと豪快にクウネのお腹が鳴った。

 顔を赤くしたクウネがモジモジしながら


「ご、ごめんなさい…」


 するとジーノさんが笑って言った。


「少し早いですが、昼食を食べてから戻りましょうか!近くに美味しい店を知っていますので」


「ホントですか?ジーノさん」


 私が聞き返すと


「ええ、すごく美味しいと評判の店です。まだ少し早いので開いてないかも知れませんが、僕が店主とは知り合いなので大丈夫です」



 そして私達はジーノさんの案内で、そのお店に昼食を食べに行った。


 確かにそのお店の料理は美味しかった。


 クウネは二週間ほど、まともに食事をとってなかった事もあり、モリモリ食べていた。



 それから私達はジーノさんのお店で、あの家の契約を済ませ、この後の予定を決める事にした。


 本来であれば、ジーノさんの店側があの家をキレイに掃除してから、私達に渡す流れなのだが、クウネが住み着いてしまってて、その間の掃除ができなかったので、あの家は私達三人で掃除させていただくと伝えた。


「でも、ラフィーネ嬢、三人だけであの家の掃除は大変ですよ」


「うふふ、大丈夫です。私にはすごいスキルがありますから」


「えっ?どんなスキルなんですか?」


 と、目についた物を動かそうと思ったら、アイシャが隣でコホンと咳払いをした。



「すいません、ここではちょっとお見せできなくて…」


「そうですか。でも、すごい気になるので、後でその様子を見に行ってもいいですか?」


「ええ、是非見に来てください」



 そしてまたジーノさんにお願いして、ありったけの掃除道具を借りさせてもらった。



 午後はあの家を掃除だけして、今晩はとりあえず昨日の宿屋に三人で泊まる。

 明日、必要な物の買い出しをした後に、引っ越しをするという予定に決まった。




 そして私達はネーシャに掃除道具を積んで、再びあの家にやって来た。


 家の前に着いて、クウネが私達に言った。


「お腹もいっぱいになったし、お掃除いっぱい手伝うよー!」



 やる気満々で掃除道具を持って、家の中に入っていく。


 私は念動を使い、掃除道具をどんどん家の中に運び込んだ。



 よしっ、じゃあ最大出力でやっちゃうよ!



 ホウキや雑巾、ちり取りを全て宙に浮かせて、目に写る全てを同時に掃除していった。


 それを端で見ていたクウネが


「なにそれ!?ラフィーネがやってるの?」


「そうだよー」


「すごいすごいすごいー!あっと言う間に終わっちゃうよっ!」


「クウネ!ホコリがすごいから、家中の窓を全部開けてきて!」


「了解っ!」



 そう言って走り出したクウネは階段を使わず、一飛びで二階に上り、ものすごい速さで一つ一つの部屋の窓を開けていった。



 いや、あなたもすごいよ…。



 アイシャはその様子を呆れたように見ながら、庭をホウキで掃除していた。


 私はそんな感じで一部屋づつ回っていった。


 すると、一階の奥の方からクウネの大きな声が聞こえた。


「ラフィーネ!来て来てー!」



 何事かと思い、私はすぐにクウネの声の方へ行った。


「見てー!ラフィーネ!すごい!大きいお風呂!」


「おおー!ホントだねー!立派なお風呂だー!」


「これならみんなで入っても余裕だねー」


「そうだね!じゃあ、ピカピカに掃除して、明日みんなで入ろう!」


「わーい!クウネ、頑張ってピカピカにするね!」



 そんな感じで私とクウネはキャッキャしながら、掃除をしていった。



 途中でジーノさんが、お茶とお菓子の差し入れを持って来てくれた。



 そして私達の掃除する様子を見て


「すごいですね、ラフィーネ嬢。これなら掃除屋を始めてもやっていけそうですね」


「褒め言葉になってないよ!ジーノさん!」


「いやいや、本当にすごいです。このスキルは」



 そうして日暮れまで掃除をして、家の中はかなりキレイになった。


 幸いベッドやソファなど家財道具はそのままだったので、食器類などを買い揃えれば、すぐに住める状態にまでなった。




 掃除を終えた私達はジーノさんのお店に掃除道具を返して、宿屋に戻ってきた。



 クウネがお風呂に行っている間、私は少し気になっていたので、アイシャに聞いてみた。


「私がクウネと住むって言い出した時に、保護者になるって言ってくれてありがとうね。アイシャ」


「いえ、別に大した事ではありませんよ」


「そうなの?でも驚かせちゃったでしょ?」


「まあ。でもクウネと話しているのを聞いている内に、お嬢様がそう言い出すんじゃないかというのは予想できてましたので」


「あはは、私って分かりやすい?」


「最近はちょっと行動が読みにくくなってましたが、だいぶ慣れてきました」


 そう言ってアイシャは私に向かってニッコリ微笑んだ。



 いよいよ明日から、あの家での新生活が始まる。



 私はそう考えるとワクワクして、モーネサウラに来た初日の時と同じようにあんまり眠れなかった…。

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