ポンコツ貴族令嬢が最強スキルをゲットしたので、自由を求めて家出する。~家出令嬢の冒険譚?~
十目イチヒサ
ポンコツ貴族令嬢家出編
第1話 最強の恩恵
とうとう私も手に入れた!
歴代に何人もの王国騎士団の優秀な騎士を輩出してきた、私の家『グレリオン家』。
両親も兄弟も剣のスキルをいくつも授かってきた。
私は18歳になる今日まで何のスキルも授からず、剣の腕も上達せず、家族や親類からはポンコツ扱いを受けてきた。
だが、今日!
私もスキルを手に入れた!
その名も『万物念動』
ー◇◇◇◇◇◇ー
いつもの朝、いつも通り目が覚めた。
詳しい内容は忘れたが、夢の中で凄いスキルを授かったのは覚えてる。
「おはようございます。ラフィーネお嬢様」
メイドのアイシャが目覚めの紅茶を出しながら、挨拶してきた。
おはよーと答えて、ベッドにテーブルを引き寄せてその上に乗った紅茶を飲んだ。
「お嬢様、ベッドの上で紅茶を飲むなんてはしたないで…、って、今どーやってテーブルをベッドの近くに持ってきたんですか!?」
「えっ?私今どーやって紅茶取った?」
「それを私が聞いてるんです!」
はっ!思い出した!『万物念動』だ!
私、念動でテーブル動かした!
試しにもう一度、今度は椅子を動かしてみよう。
すると、椅子は浮かせたり、倒したり面白いように自分の思い通りに動かせた。
「ねえねえ、アイシャ!すごくない?私、こんなスキル授かったみたい!」
「も、もしかして、今椅子をガンガン動かしているのはお嬢様ですか?」
「そうだよ!ほら!」
私が椅子を指差して、指を動かすと椅子も同じように部屋の中を動き回った。
「ちょっと、お嬢様!危ないですから!」
アイシャにそう言われたので、椅子を戻そうっと。
こんなに動かせるんだったら、ちょっと別の物も色々試してみよう。
「ちょっと!お嬢様!お気持ちは分かりますが、まずは着替えてください!」
アイシャが焦って止めに来たけど、この後も私は楽しくて部屋にある色んな物を動かしまくった。
色々と動かしたら、このスキルについていくつか分かってきた。
まず重い物は持ち上げられない。
ベッドやタンスを持ち上げようとしたが全然無理で、少し横にズラすぐらいが精一杯だった。
液体も駄目だった。
試しに紅茶だけをカップから出そうとしたけど、駄目だった。
それとアイシャも動かせなかった。
これもアイシャを持ち上げようとしたり、手を挙げさせようとしたけど、全然動いてくれない。
アイシャのメイド服のスカートがめくれるように念じたけど、スカートもめくれなかった。
万物じゃないじゃん!!
何でも動かせると思ってたのに!
でもまあ、剣ぐらいの重さだったら思い通りに動かせるから、これならあの人達を見返せるわ!
この後の朝食の席で宣戦布告してやる!
ー◇◇◇ー
「お父様、今朝私はスキルを授かりました」
朝食をとっている父親ガイゼルの手が止まり、その横にいる私の兄のギオールの手も止まった。
「ラフィーネ。一応聞くが、それは剣に関するスキルか?」
「いいえ、違います」
「そうか、なら大事に使うと良い」
いやいやいや、剣以外は興味無し!?
ホント、剣の事しか頭にないガンコ父様。
なら、この一言はどうだ?
「ですが、私のスキルは使いこなせれば、お父様にも剣で勝てると思いますが?」
「それは聞き捨てならんな、ラフィーネ。言っていい冗談といけない冗談があるんだぞ?」
実の娘をそんなに睨むか、普通。
すると兄のギオールも口を挟んできた。
「ラフィーネ。父親を愚弄しているのか?」
「いいえ、そのようなつもりは一切ありません。私が授かったスキルは『万物念動』というもので、このように物を自在に操れます」
そう言いながら、私は自分の目の前にあったナイフを浮かせてくるくると空中で回した。
「このナイフが剣であれば、いかにお父様といえど簡単にはいかないかと…」
それを見た父と兄が高らかに笑い、父が私に向かって
「得意げに話すから、何かと思えばただの大道芸ではないか。そのような子供騙しの芸で私に勝つと言っておるのか?」
「そうだぞ、ラフィーネ。父上にそんなチャチな芸当で挑むというのか?」
子供騙しやチャチなど、好き放題言ってくれるわね。
ホント頭くるわ、この二人。
「ではお父様。子供騙しかどうか、一度手合わせをお願いできますか?」
「良いだろう。暇つぶしに付き合ってやろう」
「お父上!本気ですか?このポンコ…、ラフィーネと手合わせなどと」
今、この嫌味お兄様、完全に私の事ポンコツって言った。
絶対わざとに決まってる。
「では、ラフィーネ。三日後で良いか?ちょっと所用で二日ほど時間が取れんのでな」
「ええ、構いません。是非よろしくお願いいたします」
父と兄の後ろでアイシャがすごいオロオロしてるけど、後で特訓に付き合ってもらおうっと。
私の隣では弟のグミールがキラキラした目で私を見ていた。
お前だけだよ、そうやって期待に満ち溢れた目をしてくれるのは。
優しくて可愛い我が弟よ。
そうして朝食後にアイシャと家の訓練場に来た私は『万物念動』の特訓を始めた。
まずは私がこのスキルでどのくらい剣を操れるかを知らないといけないと思い、訓練場にある木剣とかで色々と試す事にした。
木剣にも色んな重さがあるので、とりあえず一番重いヤツを操ってみる。
木剣はすぐに浮き上がり、私が思った通りに動いてくれた。
次に何本同時に動かせるか、試す事にした。
一本目を宙に浮かせてクルクル回す。
次に二本目を同じように回す。
三本目、四本目…と同じように回す。
「おお、スゴいですね。お嬢様」
アイシャがそれを見て思わず声を上げる。
そして五本目を浮かせようとした瞬間…
「あいたたたーっ」
急に頭に激痛が走り、空中で回っていた四本の木剣が地面に落ち、乾いた音が訓練場に響いた。
アイシャが私の方に急いで走って来た。
「大丈夫ですか?お嬢様!」
「大丈夫。大丈夫。ちょっと急に頭痛がしただけ」
「あまり無理をなさらないで、ゆっくりいきましょう」
「いやいや、ホント大丈夫だから」
うん、無理はしてるけど全然嫌じゃないんだ、アイシャ。
すっごく楽しくて嬉しいんだよ。
剣の名家に生まれて、立派なお父様とお母様に、優秀な兄弟にも囲まれているのに、私だけ剣の腕は全然ダメで…。
いつからかポンコツ令嬢なんて陰で呼ばれてるのも知ってるんだよ。
そんな私がこのスキルを使ったら、今まで全然思い通りにならなかった剣が、自分の思い通りに振れるんだよ。
文字通り、私を振り回していた剣を自在に操れるんだよ。
剣の腕が未熟で肩身の狭い思いをしていた私が、このスキルであの人達を見返せるかもしれないんだ。
そうして私は昼食を摂るのも忘れて、夕方まで訓練場で『万物念動』を使い、木剣を操りまくった。
そうして午前中に四本しか操れなかった木剣が、その日の夕方には11本まで操れるようになっていた。
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