紙飛行機の手紙(童話)

 大きな川をはさんで両岸に、小さな二つの村がありました。二つの村の人たちは、たがいにもうひとつの村の人たちと、楽しくお話がしたかったのですが、大声を出しても届きません。みんな川の音に消されてしまうのです。それほど大きな川でした。

 川に橋をかけるという計画がねられたのはいつのことだったでしょう。両方の村でいっぺんに思いつかれたのです。はじめは木の橋を作りました。、

 ザザー

 やっと五メートル作ったところで、木の橋は、あんまり速い川の流れに飲み込まれ、どこかへ行ってしまいました。

 次は石の橋です。

 大小さまざまの石を、川にジャボジャボ投げこみました。

 コロコロコロ……

 でも、やっぱりだめ。そんな石ではムリなのでした。

「もっと大きな岩じゃないと――」

 そこで両方の村の人たちは、近くの山から「ヨイショ」、岩をきりくずし、橋の土台にしたのです。

「さあ、今度こそ、大丈夫だ」

 人きな岩の土台は、急な川の流れにも、ちゃんと耐えぬきます。工事はずんずん進みました。両方の村の橋造り職人たちが、川のちょうどまん中で出会います。

「バンザイ! やった、完成だ!」

 さて、それからが大変です。橋のできあがったお祝いをしなくてはいけません。二つの村の人たちが集まってのお祝いは、橋の上での昼食会と決まりました。たくさんの食べもの。いっぱいの飲みもの。そしてそれよりも、もっとあふれるくらいのおしゃべり。両方の村の人たちは、ドンチャン、ドンチャンさわぎました。

 グラ、グラ ……

 なんの音でしょう?

 グラ、 グラ、グラ ……

「大変だあ、橋がおちるう」

 ようやっと両方の村の人たちが逃げ終わるとすぐに、橋はまた川の中に、

 ドッボーン

 と、落っこちてしまいました。

「さびしいな」

「さびしいね」

「お話ししたいのに――」

 両方の村の人たちは、くちびるをかんで、くやしがりました。

 そして、ある日、

「そうだ! うんとよく飛ぶ紙ひこうきを折って、手紙を出したらいいんだ」

 村の若者のひとりがいいました。


 ずいぶんと時をへだててはいますが、この二つの村をわけていた川の上には、いまだに紙ひこうきが飛びかっています、えっ、橋ですって、もちろん橋はできあがっています。(了)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る