第19話「絆」

『クロスチェンジャー』を直す為、クロガネに連れられグランスタ王国に帰るオーヴェル。

だが、オビトは更に魔力を高め今にも暴れ出そうとしていた。


その頃、魔王城でもディアボロスがドラゴニル達に竜王とオビトの事を話していた。

「クロスセイバーが竜王の息子!?まさか……俺と同族だったとは……」

この事実にはドラゴニルも驚く。

「そう、まさかあの竜王の息子がクロスセイバーだったとは思わなかったがな」

「ディアボロス様、クロスセイバーが竜王の息子なら奴が竜王子……次の竜王は奴と言う事ですか!?」

「そうだ。それが分かった以上、奴を野放しにしておく訳にはいかん……全勢力を持ってクロスセイバーを抹殺しろ!」

「はっ!」


セイラは眠って少し魔力を回復した。

目を覚まし起きて来ると寛太がダイニングの椅子に座っていた。

「寛太……」

「セイラちゃん……起きたんだ」

「うん……」

「お師匠様達は?」

「オーヴェルさんとクロガネさんはクロスチェンジャーを直す為にグランスタ王国に帰ったよ」

「あっ、そっか……」

「ご飯出来てるけど食べる?」

「うん」

寛太は作っておいたおかずを温め始めた。

寛太のその手は震えていた。

「寛太?……ひょっとして怖いの?」

「え?……いや……そんなはずは……」

「無理……しなくていいよ。私も初めてオビトのあんな姿見て、怖いもん……」

「え?セイラちゃんも?」

「うん……オビトとは小さい頃からずっと一緒に居たのに……全然知らなかった……もう……オビトに私達の声は届かないのかな?って……」

セイラも寛太も皆不安だった。

もしかしたらクロガネもオーヴェルも不安なのかも知れない。


そんな皆の不安を他所にドラゴンと化したオビトは力を蓄え再び現れた。

オビトの火球が街を破壊して行く。


「オビト!」

セイラはオビトが街で暴れている事を察知。

「私行って来る!」

セイラが現場に向かおうとする。

「待ってセイラちゃん!……俺も行く」

「寛太……うん」

セイラと寛太がオビトの元へ向かう。


暴れるドラゴンに街は大パニック。

だが、そこに魔王軍も現れる。

ギレースとドラゴニルが指揮を取り使い魔達がオビトに攻撃する。

「まさか、お前と共同戦線になるとはな」

「足を引っ張るなよ……」

「何だと!?」

しかし、使い魔の攻撃では全く通用せずオビトに返り討ちにされる。


「やはり使い魔程度じゃダメだ!俺が行く!!」

ドラゴニルが前線に立つ。

「おい!クロスセイバー!お前も俺と同じ竜族だったとはな!どっちが上から勝負しようぜ!」

ドラゴニルがオビトに攻撃を仕掛ける。

しかし、オビトの凄まじい攻撃はドラゴニルさえ受け付けない。

「ぐっ……これが……竜王子の力か……」

そこにセイラと寛太が到着。

それをギレースが見つける。

「アイツら……使えるかも知れん……」


「セイラちゃん、何かオビトを鎮める魔法無いの?」

「そんなの無いわよ!」

「じゃあどうするの?」

「とにかく攻撃して大人しくさせるしかないわよ」

セイラは『フレイムインパクト』

しかし、オビトには全く効かない。

「炎吐いてる相手に炎は効かないんじゃない?」

「確かに……」

オビトがセイラと寛太にも襲い掛かる。

「うわっー!?」

「ちょ、ちょっと辞めてオビト〜」

セイラと寛太も逃げるしか無かった。


その頃、グランスタ王国では……。

オーヴェルが『クロスチェンジャー』の修理を続けていた。

「はぁ……もう少しだ……」



オビトの攻撃にセイラと寛太は追い詰められていた。

その時、ギレースが背後からセイラを捕えた。

「うっ!!」

「大人しくしろ……」

「ギレース!?こんな時に……」

「クロスセイバー……貴様の仲間が死ぬぞ!それでもいいのか?」

オビトの動きが一瞬止まった。

「オビト……」

「今だ!!」

オビトの背後からドラゴニルが攻撃。

巨大な火球がオビトを襲った。

「オビト!?」

「フンッ……」


だが、オビトの反撃に遭いドラゴニルは殴り飛ばされた。

「バカな!?あれだけ強力な火球を受けて倒れないだと!?」

ギレースはセイラを放した。

「え?」

「作戦変更だ……」

ギレースはそのまま姿を消した。

「何だったんだ?アイツ……」


オビトは再び空を飛んで何処かへ行ってしまう。


「オビトー!!」


翌日、朝になっても被害にあった人々の救出作業がレスキュー隊や自衛隊によって行われていた。


「街がこんなに……」

「これ……オビトがやったの……」

セイラと寛太が呆然と見ているとクロガネとオーヴェルがやって来た。

「セイラ!寛太!」

「クロガネさん!お師匠様!」

「これは酷い……これ……オビトが?」

「はい……」

「何としても止めなければな……」

「クロスチェンジャーの修理は終わったんですか?」

「ああ、一応な。だが、どうやってオビトに付けさせるか……」


だが、そこへギレースが再び現れた。

「待って居たぞオーヴェル……」

「ギレース……」

「貴様の冥王剣を頂く……それがあればクロスセイバーを殺せるはずだからなぁ」

「どういう事だ?」

「冥王剣の真の力を発揮すれば可能な事だ。だが、その為には先に貴様を殺す必要がありそうだな……」

「オーヴェルさん危険です。ここは私が……」

クロガネが戦おうとする。

「どうしても邪魔するなら……まず貴様からだ……」

クロガネは『変身』

パラディンオブナイトに変身し、ギレースと戦い始める。

パラディンオブナイトがギレースと激しい戦いを繰り広げる。

だが、そこにオビトも飛んでやって来る。

「あっ、オビト!」

「よし、ここはクロガネ君に任せて我々はオビトを」

「はい!」

オーヴェル、セイラ、寛太はオビトを追う。


「くっ……待て!」

「おっと……行かせねぇぜ?」

パラディンオブナイトが立ち塞がる。

「貴様〜……何処までも邪魔を〜……」


セイラ達はオビトを追い続ける。

「行かせん!!」

オーヴェルは魔法の鎖を出現させ、オビトを拘束する。

「凄い……流石お師匠様!」

「くっ……だが長くは持たん……セイラ、お前が行ってオビトにクロスチェンジャーを……」

「……分かりました」

セイラがペガちゃんを召喚しオビトに近付く。


その間もパラディンオブナイトとギレースの激しい攻防は続く。


セイラがオビトに近付く。

「オビト!お願い、元に戻って!」

しかし、オビトはセイラに向かって火球を吐く。

「きゃっ!?」

ペガちゃんが何とかかわしセイラは無事だった。


「くっ……オビト……」

「オビト……早く戻ってくれよ!」


セイラは果敢にももう一度オビトに近付く。

オビトがもう一度火球を吐こうとする。

「辞めろー!!」

寛太が叫ぶ。

すると、オビトの動きが止まった。

「オビトー!!」

セイラがオビトに飛び掛かる。

そして、『クロスチェンジャー』をオビトの体に当てる事でオビトの強大な魔力を封印して行く。

オビトはドラゴンの姿から人間の姿に戻って行く。

「よし、今だ!クロスチェンジャーをオビトの腕に!」

「はい!」

セイラはオビトの腕に『クロスチェンジャー』を装着。

「よし……これでオビトの魔力は再び封印された……良くやったぞセイラ!」

「はい!」

「セ……セイラ……」

「オビト?気が付いた?」

「俺は一体……?」

「もう……大丈夫よ」


そこに寛太が走って来た。

「オビトー!!お帰りー!!」


そしてパラディンオブナイトとギレース……。

「よし、やったか!」

「くっ……おのれ……」


ギレースは流石に分が悪いと察し姿を消した。


そして、寛太とセイラに支えられオビトが戻って来た。

オーヴェルとクロガネもオビト達と合流。

「オビト、良く戻って来たな」

「お師匠様……皆の声が聞こえたんです……」

「お前達の絆の力だな」

久しぶりにオビト達に笑顔が戻った。


続く……。

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