第81話 当日の動き
「まず一番大切なのは、私たちだけでセザールと相対することでしょうか。セザールがパーティー会場にいるならば、そこから引き剥がさなければなりません」
アンのその言葉に皆が同意を示すように頷き、まずはセザールをどうやって退席させるかを考えることになった。
いい案が思い浮かばず場に沈黙が流れると……レベッカが何かを思いついたのか、微妙な表情で躊躇いながら手を上げる。
「あの……セザールを退席させる方法ではないのですが、一つ気になることがあります」
「何かしら?」
レベッカの言葉にセレミース様が答えると、レベッカは少しだけ首を傾げながら口を開いた。
「先ほどセザールによって国王や宰相が操られているという話を聞きましたが、それだと上層部を一掃という目標にも迷いが生じませんか? 操られているだけなら……」
レベッカのその言葉はもっともなものだったが、すぐにアンが首を横に振った。
「私は上層部を一掃するのはそのままで良いと思うわ。たとえ完全に操られていたとしても、セザールという人物にまんまと帝国内に入り込まれ、さらには操られ帝国がここまで壊れてしまった。そのことだけで、国王と宰相の大きな罪だもの。もう意思があったかどうかはあまり関係がないわ」
王女ならではのその意見に、レベッカは僅かに瞳を見開いてから、ゆっくりと頷いた。
「確かに……そうだね。この現状を引き起こしている時点で、国王や宰相様には責任が発生するかも」
「ええ、今後への禍根を残さないためにも、この世に残すべきではないわ」
「……分かった。じゃあ帝国の上層部を一掃する方針は変えずにいこう」
レベッカが納得できたのか真剣な表情で頷いたのを見て、アンはレベッカに微笑みを向けた。
「ミローラ様とセレミース様も、上層部一掃の方針でよろしいでしょうか? リュカも良いかしら」
「もちろん、俺に異論はないよ」
「私もないわ。大局のために少数の犠牲は仕方がないことよ」
「僕は……できれば本当に悪いやつだけを排除してほしいけど、この場合は仕方がないと思う。生かしておいた方がたくさんの被害が出るのなら、皆に賛同するよ」
全員が同じ意見で概ね一致したところで、上層部一掃の計画はそのままとなった。
そこで皆がまたセザールへの対処法を考え始めたのを見て、俺は頭に思い浮かんでいた作戦を話すために口を開いた。
「セザールをパーティー会場から引き離す方法に戻りますが……一ついい案を思いつきました。セザールは破壊が好きということならば、一番派手に戦闘が行われている場所を見に来ると思うんです。なので誰もいない場所で俺が魔法で建物を壊しまくり、その音に惹かれてやってきたセザールを倒すというのはどうでしょうか?」
単純なその提案に皆はしばらく考え込み、まず口を開いたのはセレミース様だ。
「音でセザールを誘き出すというのは少し難しいかもしれないわね。水鏡で現場を覗かれてしまえば、すぐに争いは起きていないと知られるもの」
確かにそうか。相手も眷属なんだから、水鏡で見られることを常に考えておかないといけないのだった。
それだと俺が考えた方法は難しいな……他に考えられるとすれば、無理やり会場から引き剥がすぐらいしか思いつかない。
「リュカ、当日ってエルネストたちはどういう動きをするのか決まっていたかしら?」
振り出しに戻って方法を考えていたら、アンが俺に視線を向けて首を傾げた。
「いや、まだ細かくは決まってないはずだ。ただ王宮内にいる騎士の仲間が王宮の外にいる仲間を引き入れて、一気に皆で会場に突入するとは聞いた。騎士たちは直前まで帝国側に付いて、戦いが始まったと同時に謀反を起こす手筈らしい」
「そうなのね……それならばエルネストだけは裏切るのを少し先延ばしにしてもらって、エルネストにセザールを会場外に誘動してもらえば良いんじゃないかしら。例えば皇帝などと一緒に安全のために逃すという名目で」
確かにそれはありだな。エルネストは王宮内で思ったよりも高い地位にいるみたいだし、エルネストの言葉を信じてくれる可能性は高いだろう。
事前に逃げるルートを聞いておけば、容易に追いかけることができるし、先回りもできるかもしれない。
「その作戦の問題点は、セザールとの戦いの場にエルネストがいることになるという部分と、セザールたちをなぜパーティー会場から別の場所に移動させたいのか、エルネストに理由を説明しないといけない点だな」
「ええ、そこでこれは難しい提案かもしれないけれど……エルネストに私たちのことを伝えてしまうのはどうかしら」
伝えるって……もしかして、眷属だということを? それはまた、大胆な提案だな。
〜あとがき〜
書籍に関するお知らせです。
「女神の代行者となった少年、盤上の王となる」ですが、発売日は7月28日です!
それに伴って本日はカバーイラストが公開されましたので、そのお知らせをさせていただきます。
カバーイラスト、本っっ当に最高です。とても綺麗でかっこいいです。
下記に添付してある近況ノートに貼ってありますので、ぜひご覧ください!
それからこの機会に書籍の情報を少し開示させていただきますが、今回の書籍版はかなり改稿してあります。
まずプロローグからweb版とは違います。全く違うと言っても良いかもしれません笑
完全にwebにはないストーリーも追加されていたり、書き下ろし番外編ももちろん収録されています。
それからスタンピード中の王国側の動きなど、リュカたち以外の視点の話もかなり追加してあります。
書籍版、とても面白くなっていると思いますので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです!
感想なども近況ノートに送っていただければ、私がとても喜びます笑
すでに予約は始まっておりますので、よろしくお願いいたします!
↓こちら近況ノートです。
https://kakuyomu.jp/users/aoi_misa/news/16817330660255301277
蒼井美紗
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます