第11話 二人で神域へ
「セレミース様、レベッカを連れてきました」
「いらっしゃい。そこのソファーに座って良いわよ」
「あ、ありがとう、ございます……!」
レベッカはガチガチに緊張している様子でソファーに腰掛けると、セレミース様を凝視した。あまりの綺麗さに目が離せないって感じだろう。
本当にセレミース様は綺麗なんだよなぁ。俺もまだまだ見慣れないので、ついつい目がいってしまう。
「貴方はレベッカと言うのよね。私はセレミース、平和の女神よ」
「わ、わ、私は、レベッカです……平和の女神様とお会いできるなんて、光栄です」
「ふふっ、そんなに緊張しなくても良いわよ。セレミースと呼んでちょうだい」
「か、かしこまりました。セレミース様」
かなり緊張してるみたいだな……俺はレベッカの緊張を解くためにも、さっそく話を進めることにした。
「じゃあレベッカ、色々と説明するな」
「うん……ここは、リュカの能力で来れるところなんだよね?」
「そう、神域って言うんだ。神域干渉って能力でどこからでも来れる。人は入った場所にしか出られないんだけど、物はどこからでも出し入れできるから倉庫としても使えるんだって」
それから俺はセレミース様の助けも借りつつ、レベッカに今朝からの出来事と俺の能力について全てを話した。それを聞いたレベッカは、驚きすぎて途中から固まっていた。
「なんか凄すぎて、よく分からないよ……」
「まあそうだよな。俺もやっと実感が湧いてきたところだから、それも仕方ないと思う」
「でもとりあえず、リュカが強くなったのは分かったよ。今まで努力してきたのを知ってるから嬉しい」
「……レベッカ、ありがとう」
「持つ人によっては怖い力だけど、リュカなら絶対いいことに使ってくれるよね。リュカの活躍が楽しみだなぁ」
レベッカはまだ緊張しているのか、少しぎこちない笑みを浮かべてそう言ってくれた。俺のことを心から信じてくれる人がいるだけで、本当に救われるよな……俺は心の奥がふわりと温かくなるのを感じた。
「それでレベッカ、ここからが本題なんだけど、さっき話した神力行使の光魔法で病気の治癒ができるんだ。もしレベッカが嫌じゃなければ、お母さんの病気を治癒してみたいと思ってるんだけど……」
「……え、治せる、の? お母さんを、治してくれるの!?」
レベッカは今までで一番の反応を示し、凄い勢いでソファーから立ち上がると俺の肩を掴んだ。その顔は驚愕と僅かな期待に染まっている。
「可能性は高いと思う。セレミース様、ですよね?」
「ええ、よほどの末期か進行がとても早い病気じゃなければね。レベッカの母親はどんな状態なの?」
「……病気になってからは二年ぐらいで、ゆっくりとだけど確実に悪くなっていて、まだギリギリ家の中でなら動けるけど、すぐ横になってしまいます」
「それは……多分大丈夫だと思うけれど、早くヒールをかけた方が良いわね」
そんな状態のお母さんの看病をしつつ、妹の面倒を見てお金も稼いで家事もしてって頑張ってたのか……レベッカは凄いな。
レベッカは俺のことを努力してた、凄いと言ってくれるけど、レベッカの方がよほど見えない努力を重ねてきたと思う。
「リュカ、お願いします。お母さんを助けて欲しい……お願い!」
「もちろん全力を尽くす。……でもそれでダメだったら本当にごめん。絶対とは言えないから。神力行使は魔法でできる範囲のことしかできなくて、俺が普通の人と違うのはヒールをずっと一人でかけ続けられるってことだけだから」
「……分かってる。それでもお願いしたい。可能性があるなら」
瞳に涙を浮かべながら覚悟を決めた表情で頷いたレベッカを見て、俺は緊張を感じながらもそれを表に出さずに頷いた。
――絶対に成功させたいな。
「さっそくレベッカの家に行こう。妹さんは別の場所にいてもらうことはできる?」
「お隣のおばさんに預けられるよ」
「じゃあ妹さんにはそこにいてもらって、お母さんはどうしようか。寝てる間にヒールが終わればいいんだけど」
病気の治癒はその病気の程度にかなり左右されるけど、基本的には数時間の連続ヒールで治ると聞いたことがある。
数時間なら運が良ければ目が覚めないだろうけど……家に知らない人がいてさらには自分に魔法を掛けてて、その上で目が覚めないってことはないよな。
「母親のことはあまり気にしなくても大丈夫よ。病気の治癒をされている間は体の変化が大きくて、基本的には目が覚めないから」
「そうなんですか? それなら安心です」
セレミース様の一言で問題は解決し、ホッと安堵の息をついた。これでもう解決すべき問題はないな。
「じゃあ宿に戻って、すぐレベッカの家に行こう」
「うん。リュカ……よろしくね」
俺はレベッカの手を取って、また神域干渉を発動させた。
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