第15話*夜の訪問者

 シリウスはしばらく考え込んでるみたい。


 あれ? 怒らせちゃったかな? どうしよう。


 また、不安になる。しかしシリウスは頷き、私の意見を否定しなかった。


「そうだな! そうだよな。ごめん、俺の配慮が足らなかったよ。ちゃんと付き合いから始めよう! ちゃんとデートしような?」


 シリウス、私の意見を尊重してくれてるんだ。いきなり叫んだのに、怒ったり否定しないで優しいな。シリウスでホントに良かった。


「シリウスさん、ありがとうございます。ごめんなさい急に叫んだりして。私、我が儘ですよね?」


 何だか自分が恥ずかしくなってきて、気分が下がる。そんな落ち込んだ私をシリウスは優しく包んでくれる。


「そんなことないよ。俺も配慮が足らなかった。会えて嬉しくて、ずっと一緒に居たいからって、いきなり結婚や皇太子妃の話なんてしてさ。みさの気持ちをちゃんと考えてなかったよね。ごめんな? 明日も休みだよね? 朝からデートしよう!」


「はいっ! 嬉しいです! それと、あの……私、シリウスさんの連絡先知らなくて。どうやって連絡取れば良いかなって思ってて、スマホの連絡先教えてもらえますか?」


 やっと、聞けた……


 ん?


 シリウス、また難しい顔してる? もしかして、会う以外で連絡取りたくないとか?


「みさ、ごめん、直ぐには……また、教えるよ」


 だめ、なんだ……何だかショックだな。何かあるのかな。


 距離が縮まった気がしたけれど、また少し遠く感じちゃった――



 *



 夜――


 夕食が終わり、お風呂にも入ったので早めに布団に入る。明日のデートは凄く楽しみだけど、 モヤモヤが残ってしまう。


 そんな時、カリカリと窓を引っ掻く音が。良く見ると、窓の外に二匹の綺麗な猫が居た。


 その内の一匹は透き通るような白さで、月明かりに照らされて更に輝いている。


「猫? どうしたんだろう? 必死に窓をカリカリしてる」


 不思議に思い思わず窓を開けると、猫が二匹とも部屋の中に入り込んでしまった。


「あっ! ダメっ!」


 どうしよう。


 どうやって追い出そうと考えていると、突然猫が光りだした。


 え?


 思わずその光景に目を奪われ、見ていると猫だった二匹は人の形になった。


 ま、まさか……?


 まさかと思っていたが、予感は的中。猫はシリウスとフィリスだった。白猫がシリウスだ。


「シリウスさん? どうしたんですか? こんな夜に。それにフィリスさんまで」


 シリウスは照れながら、何故か不思議そうな顔をしてる。


「みさに会いたかったから、だよ? それにしても、驚かなかったみたいだね?」


「会いたかったって、さっき会ったばかりじゃないですか? それに、明日の朝も会うのに。それと猫が入ってきた事にはビックリしましたけど、人の形になる時に、あ! と思って。流石にあれだけの事があったら少しは慣れますよ」


「そか、そうだよね」


 シリウスは言いながら嬉しそうにしている。


「フィリスさんは? シリウスさんに付いて来たのですか?」


 すると、フィリスは丁寧にお辞儀をする。


「みさお嬢様こんばんは。私はシリウス様を送って来ただけですので、すぐに失礼しますね。それと、さんを付けなくてかまいませんよ、フィリスとお呼び下さい」


 フィリスって、丁寧よね。それにスマートで格好良いし。シリウスよりしっかりしてるかも。


「フィリスも大変ね。シリウスさんに付いて行かなければならないなんて。お疲れ様です」


「ありがとうございます、みさお嬢様。それでは失礼しますね」


 フィリスはペコッとお辞儀をし、また、猫の姿になって窓から出て行った。それを見てたシリウスが、何だかつまらなそうな顔をしている。


 って、ちょっと拗ねてる? 何で?


「シリウスさん、どうかしました?」


「みさ、俺も呼び捨てにして欲しい。さんが付いてると何だか寂しい。フィリスの事はすんなり名前で呼んでたし……」


 座り込んで、上目遣いで私を見る。


 か、可愛い。

 もしかして、フィリスに妬いてるの? そんな顔されたら……


「シ・リ・ウ・ス?」


 ちょっと意地悪っぽく言ってみたくなる。 そしたら、シリウスもちょっと意地悪っぽく笑い、


「みさーっ」


 抱きついてきた。


「きゃっ!」


 驚きと恥ずかしさのあまり、思わず叫んでしまった。


 この声が聞こえたのか、下から階段を駆け上がってくる音が聞こえる。ドンドンと激しくドアを叩く音。


 ヤバッ。誰か来たっ!


「みさ、大丈夫か? ここ開けろっ!」


 お兄ちゃんだっ。


「どうしよ……シリウス?」


 あれ? いない? 隠れたかな?


「今、開けるー」


ゆっくりと部屋の中を確認してからドアをあけると、


「みさ、大丈夫か? 凄い声したけど」


 お兄ちゃん、心配そうにしていた。そりゃそうだよね。あんな声出したし。


「ごめんね、大丈夫。ちょっと寝ぼけちゃって、ベッドから落ちただけだから」


「そか。でも、気を付けてな?」


 私の頭をポンポンし、部屋を出て行った。急に力が抜けて、ベッドに座り込む


「はぁー。ビックリしたー。それにしても、シリウス何処に行ったんだろ?」


 良く見ると、ベッドの布団が少し盛り上がっていた。


 ん? もしかして?


 布団をめくると、猫になったシリウスがそこにいた。また光り、人の形になる。と、何故か今度は服からシルクのパジャマみたいなものになっていた。


「みーさ。こっちおいで」


 ベッドの中で手招きする。何だか……恥ずかしいんだけど。


「シリウスさん、さっきは危なかったんですからね? もう……」


 言いかけると、


「シ・リ・ウ・スだよ? シリウス。呼び捨てにしてって言ったよね? みーさ?」


あ。甘々だ……恥ずかしい……


「うん……シリウス、ごめんなさいです」


もう恥ずかしすぎて、顔を見れなくなってきた。


「うん! よろしいっ」


 シリウスは私の頭を撫でながら、おでこにキスをする。私はシリウスに抱き締められながら、眠りに落ちた――









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