悪魔に拐われた精霊の娘~義家族との絆、皇帝様に溺愛されて~

猫兎彩愛

第1話*不思議な夢と不思議な場所

「メーティ!」


 誰? 透き通った青い髪、きらきらとした白い光に包まれた人? が、こっちに向かって名前を叫んでいる。


 メーティって、私……なの? 何をそんなに焦っているの?


「テティ! 駄目だ! 君は泉から出ると死んでしまう」


「ヘレウス……だってあの娘………が……」


「俺がきっと、テティを取り返す! 悪魔の好きにはさせない!」


 泉? 泉……って何? テティ……? ヘ……レウス? 悪魔……?


 これは、夢? あの人たちは……誰……?



 *



「みさー! 起きなさい。学校遅れるわよー!」


 お母さんの声がする。起きなきゃ。 さっきのは夢、だったんだ……それにしても、変な夢。


 夢を思い出し、考えながら下に降りていく。すると、お父さんとお母さん、大好きなお兄ちゃんが、先に起きてご飯を食べていた。

 降りてすぐ、お母さんに飛び付く。


「ねぇ、お母さん、お弁当作ってくれたっ?」


 今日は楽しみにしてた遠足。朝からウキウキしていた。


「ちゃんと用意したわよ。後は開けてからのお楽しみね。早く準備してらっしゃい」


 テーブルの上を見ると、ピンクの包みのお気に入りのお弁当箱を発見! どんなお弁当だろう? 今から楽しみで仕方ない。お母さんはいつも可愛いお弁当を作ってくれるから嬉しい。


「良かったなー! みさ、ずっと楽しみにしてたもんな」


 お兄ちゃんが、そんな私を見て、ニコニコ。ご飯を食べようと、お兄ちゃんの横に座るなり私の頭をナデナデしてくる。毎日のことだけど、ちょっと照れる。


「もうっ! 子供扱いしないでって言ったじゃない! お兄ちゃんだって、昨日、ウキウキで準備してたじゃん」


「ははっ。悪い悪い。みさが可愛いからついな。まぁ、俺も今日の遠足は楽しみにしてたよ? でも、最後だからちょっと寂しいかな。ミサはまだ五年生だから来年もあるし、ちょっと羨ましい……なんてな」


 確かにお兄ちゃん、ちょっと寂しそう。


「ほら、二人とも遅刻するわよー!」


「「はーいっ!」」


 慌ただしい朝が過ぎていく。いつもの日常。私はこれから起こることを知るよしもなかった。



 *



 ――遠足


 友達と遊びながら、自由時間を満喫していた。その時、公園の奥が何だかキラキラ光ってるみたいに見えた。私は少しずつそこに近付き、


「ねぇ、あっちで……」


 そう振り向いた瞬間、何かがおかしかった。友達がいない。それに……


 あれ? ここ、何処? 皆といたはずなのに……迷った?? どうしよう……


 道に迷ってしまったみたい。辺りを見回すと、そこは一面のお花畑。誰の姿も見えない。

 私はその場にヘタリ込んでしまい、動けなくなってしまった。


 涙が溢れてくる。これからどうしたら良いの? 帰りたいよ……


 暫く動けずにいると、背後から急に声を掛けられる。


「お前……誰だ?」


「えっ?」


 誰――?


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