巡る

@LIAR27

回る

畳が薄いベージュの中に緑っぽさを帯びていた

クリアファイルくらいの大きさで、そこにはこの和室が当初の入居時新品だったことを表していた

叔父の引越しの手伝いを自分の家族と姉の旦那、つまり義理の兄としていた1週間前

もう1週間経った、いややっと1週間を終えられた

そんな情景を思い出しながら深夜3時39分のコインランドリーで残り44分と表示された画面を見ていた

コンビニで買った味とパッケージがリニューアルしてしまった飲み物を一口飲み

外の雨を無心で眺める

入り口にあるラジカセから流れるラジオは健康食品の広告の話からこれからのラインナップの紹介をするラジオパーソナリティの声を聴いていた

こんな時間に仕事をしてるのも大変だなと簡単に思った

時は待ってくれないなと少し悔しさが込み上げた

季節は止まることがなく

残酷にも歳をとっていく

春の前には風や雨が増えてきて

急に春の訪れがある

人もいつだって

何かいいことがあったり変わる時には

辛いことや大変なことが起きる

それが誰かに反対されたりとか

だがその末に春が来て

自分の中での好機が訪れるんだろうなと

偉そうにも達観してみる

もっと力をつけたい

そう頼りなく無責任に考える

何かしているのか

と言われたら何もしていない

現状今の自分に何があるかと言われたら

何もないのかもしれない

何もないなりに今健康でいられて

体調も普通でいられることを考える時間

それでいいんじゃないかなって

コロコロ心は変わる

心は1日にああでもない、こうでもないって

三千回くらい変わってるんじゃないかな

ふと気がつくとラジオからはコレサワのタバコが流れてくる

綺麗なギターの音色

きっと張り替えたばかりの弦なんだろうなと

その煌びやかな音を聴いて自分の最近弾いていないギターの弦を張り替えたくなる

もっとちゃんと僕を見ててよ

そんな歌詞に僕はちゃんと物事を見れているのかと考えたがこの時間にその思考はいけないと考えないようにしようとしていたら

他の客が入ってきてその思考も運良く中断された

運がいいで思い出した

運がいいと自分は結構思う人間だということ

昔読んだ本では

松下幸之助があるときの対談で

大変ですねと言われた時だったかあやふやだけど

大変ですが全部は運がいいと思って行くことが大事ですよ

そんな前向きな価値観が自分の中にも胸の片隅にあった

でもいま入ってきた客は

咳をしていた

汚く咳をして共用のテーブルを激しく揺らしながら洗濯物を置いたり

自動販売機で飲み物一本買うにしても

腹を立てているのかと言うほど暴れるように何かを買っていた

品がない

品がない人は元来僕は苦手だ

運が悪いとまでは思わないが運がいいとも今は急に思なかった

何気なく季節は移ろい変わっていくなかで色んな人が混ざり合ってできているこの世界で

この思いも願いもぐるぐる巡っている

コインランドリーを見て洗濯物が回ると言う表現より今はこう表現する

洗濯物が巡ってる

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