第4話 チュートリアル④
同じフリーミッションを数度クリアし、そこそこのGを稼ぐ事が出来た。
このゲームはとことんまでプレイヤーに厳しく、同じフリーミッションで得られる報酬はやればやる程減って行くのだ。 十回で初回の十分の一程度になってそこで止まる。
似たようなフリーミッションをいくつかクリアし、そこそこ纏まった金額を得る事が出来た。
溜まったGの表示とショップ内にあるアイテムを交互に眺める。
取りあえずこの初期状態をどうにかしたいと思っていたので、何か買おうと考えていた。
フレームは大量のGかPが必要なので購入は現状、不可能だ。
買えるのは外装と武装。 スペック的に多少は盛れるが、そこまで変わらないので今の段階だと見た目を弄る以上の意味はない。 武装は
緑色の量産機みたいな見た目も嫌いではないが、自分用という特別感が欲しい。
欲張っても仕方がないので取りあえずは火力を優先して武器を買う事を選択。
突撃銃があるので短機関銃は除外。 残りは狙撃銃か散弾銃になるが、どちらにするべきか?
このゲームは武装を格納するストレージのようなものはなく、そのまま持って行かなければならない。
突撃銃と狙撃銃は嵩張るが持って行けなくはない。 持ち替えは少し面倒だが、いけなくはないか。
そう考えて狙撃銃を購入し、外装は諦めて代わりに塗料を購入し黒く塗る。
――うん。 まぁ、こんなものか?
最後に名前を付けて完了になる。 実は最初にできたのだが、すっかり忘れていた。
ちなみに初期セットは「ソルジャータイプⅠ型」と呼称されている。
本当にフレームに少し肉付けしただけの最低限の装甲なので、能力値は綺麗に平均だ。
初心者用なので癖も少なく扱い易いのでしばらくはこれで行っても良いかもしれない。
取りあえず名前は――後で変えられるので適当でいいか。
何の気なしに考えた名前は「ホロスコープ」特に意味のある単語ではなく、本当にふっと浮かんだ名前だった。 この真っ黒な機体に俺と言う星座を刻む――
「うわ、やばい。 これ恥ずかしい奴だ」
ふっと浮かんが考えにヨシナリは身をくねらせる。
うん。 取りあえず最低限の形は整ったので次は街にでも繰り出すか。
メニューから街への移動を選択し、実行する。 するとトルーパーのコクピットに納まっていたマネキンみたいなアバターの姿でヨシナリは巨大な構造体の一角に立っていた。
名称はバベル。 巨大な塔が空中に浮かんでおり、その周囲を取り囲むように橋で繋がれた塔が浮かんでいる。 何だか倒れそうな名前だなと思いながらヨシナリはアバターを操作して移動。
ショップでアバターのカスタマイズも可能だが、金がないので手が回らない。
傍から見れば初心者丸出しなのでちょっと恥ずかしいなと思いながらあちこちを見て回る。
特に目的がある訳ではなく、単なる散策だ。 ここではプレイヤーショップや、クエストの協力者を募る場、後は練習試合ができるコロシアムなどが存在する。
プレイヤーショップは文字通り、プレイヤーが運営するショップだ。
使わないパーツを売り捌いたり購入、交換したりすることが可能となっている。
価格は好きに設定できるのでGではなくPで売っている者もいるようだ。
――まぁ、Pにすると余程の代物でもないと売れないが。
ちなみにだが、交換を悪用した詐欺などが一時横行したらしい。
交換を行う瞬間に違うものと入れ替えて騙し取るといった手法だ。
やった奴はその日の内に規約違反でアカウントを消された上で違約金を請求されて人生が終了したらしい。 これは少し話題になったので割と有名な話だった。
違反者は未成年だったので親に請求が行ったが、いくら何でも理不尽過ぎると法廷で争ったが驚く程の早さで敗北し、逆に大損したのは伝説となったらしい。
以来、この手の詐欺行為を行う者は絶滅した。 それの亜種として虚偽の通報を行って陥れようとした輩もいたが、同様に規約違反として裁かれたようだ。
ヨシナリはこの話を知っていたので何をやってはいけないかはしっかりと調べて来た。
とにかくこのゲームはプレイヤーに一定以上のモラルを求め、それを違反する者はどんな相手でも容赦なく裁く。 運営会社の母体が大手の軍事関連会社らしく、大抵の相手は喧嘩を売れば即座に叩き潰されるようだ。
――話を戻そう。
他は共同で行うミッションの仲間探しをしている者達だ。
ちらりと見ると服を着たヨシナリと同じマネキンの姿をしたアバターがぼーっと立っていた。
その頭上にはプレイヤーネームとミッションを請ける仲間を探しているといったウインドウが浮かんでいる。 どんなミッションなのか、どんな役割を求めているのかが記載されていた。
奇襲任務、前衛ブレード使い歓迎。 防衛任務、初心者歓迎などなど。
先述したようにこのゲームはプレイヤーに高いモラルを要求するので、基本的には字面通りに受け取っていい。 ちなみに合同任務や練習試合にかこつけたリンチ事件もあったが、そちらも行っていたプレイヤーは早々に駆逐された。 初心者を痛めつけて悦に浸る歪んだ思想の者達も一定数居たのだが、例によって規約違反で消えた。 このゲームの怖い所は警告なしで一発アウトなのだ。
一応、利用規約にも「規約違反が確認された場合、警告なしで処分の対象となります」としっかりと記載されている。 百科事典かよと思うレベルに細かく記された利用規約をいちいち確認しろと言うのは酷な話とも言えなくもないが、同意ボタンを押した時点で呑んだとみなされるので擁護は難しい。
一部のプレイヤーが圧政だ、横暴だと声を上げ、規約違反にかこつけて不当に金銭を得ようとしているのではないかと邪推する者もいたがその日の内に居なくなった。
サービス開始からまだ半年ほどしか経過していないにもかかわらず、表面化しているだけでこれだけの事件が起こっているのだ。 ヤバすぎるとヨシナリは思っていたが、それを差し引いてもこのゲームのクオリティは非常に高く、どうしようもなく惹かれるのだ。
結局、何が言いたいのかと言うと、このゲームは運営によって徹底的に消毒――滅菌と言っていいレベルで規制されているのでルールを守っている者には居心地が良く、ある程度の信用は担保される。
並んでいるミッション募集のウインドウを順番に眺め、ちょっとやってみようかなと考えた。
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