白紙のラブレター
四方川 かなめ
1
プロローグ
「
放課後。
誰もいない校舎裏。
夏の日差しが煌々と滾る。
そんな中で、俺は告白された。
ハートのシールで封された1枚の手紙が、俺の前に差し出される。
「あ、ありがとう…」
俺は両手で、それを受け取った。
手紙を渡せて満足したのか彼女はキョトンとした顔をしたかと思うと、不意に口元を隠して走り出した。
いや、走り出すと言うかもはや逃げていた様な…?
ともかく、俺はすぐ様彼女を呼び止めた。
ただ1つ、聞いていない事があったから。
遠くで停止する彼女に、俺は肺いっぱいに空気を吸って。
「
空高く響いたその声に、聞こえてか聞こえずか、彼女は遠くでひらりと体半分こちらを向いて、風になびく長髪を耳にかけた。
「ゆりな」
声は、聞こえなかった。
校舎裏に吹く風と、自分の心臓の音で。
でも確かに、彼女はそう口にした。
「ゆりな」…と。
それが「友梨奈」なのか、はたまた「ゆりな」なのか、それは分からない。
ただ1つ…彼女は次の日、この学校を転校した。
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