第2話 四月八日
『京ちゃん、私ね!!やっぱり超能力だ!物を手で触れないで動かせるようになったの!』
またはじまった、こいつ全然懲りてないのか
「おいおい今度はなんだよ、そんなことできるのはマジシャンくらいなもんだろ。もしかしてマジシャンでも目指してるのか?』
彼女を嘲笑うようにそんな言葉を返す。
『もう!!京ちゃんってほんとに私のこと信じてくれないよね』
「あたりまえだ、そんなこと実際この目で見ない限り信じてやれん」
今までだってあいつの言ったことのほとんどをこの目で確認できたことはない。
リフティング500回できた、とか漢字全部覚えたとか
そんなことばかりだったが僕の想像する柚木はいつでも鈍くて不器用なやつだったからそんなこと出来るわけないと思っていた。
『もう、京ちゃんなんか知らない!!!!』
そう言って柚木は僕の席の対角線上一番端っこにある自分の席へ戻って行った。
「ったく、本当にできるもんなら直接見せてみろってんだよ、、、」
僕は誰にも聞こえないほどの小声でそう言った。
放課後、また柚木がドカドカとわざとらしく自分の存在を示すように近寄ってくる。
『ねえ、京ちゃんってさ、英語の担当の佐伯先生のことえっちな目でみてるでしょ!!』
また何か突拍子もない嘘を言って来るんだと身構えていた分、背筋が凍えるようにぎゅっとなった。
なぜならば今回に限っては当たりも当たり、大当たりのことを言ってきたのだ。
「きゅ、急に何言ってくるんだ!!確かに佐伯先生は帰国子女で少し教師らしからぬ格好をしているが、、、」
語尾が詰まった。
最高にキモいどもりかたをしているなと、自分が恥ずかしくなった。
だいたいなんなんだこいつ!例え俺が佐伯先生のことエロい目で見てたとしても(実際見ているのだが)僕は左下端っこの席、お前は右上端っこの席で見えるはずがないんだ!
「柚木、お前もしかして昨日のこと根にもってる??」
『どうだろうね!!!!』
これは確実に根に持ってるな、、。
ここは場を収めるために一応謝っておくか、まあ俺は悪くないけど。
冷静に考えてみれば佐伯先生をエロい目で見てたことも僕の隣の席にいる柚木の友達である吉田さんにでも聞いたんだろ。
「ごめん、柚木」
『なにが!!!』
相当ご立腹のようだ。
「昨日のこと。」
『もういい!!』
そう言った柚木は今度は、悲しそうな背中でドカドカと音を立てながらドアは向かっていった。クラスから出ていく直前、ドアの前で柚木は小声で何か呟いた。
『…………』
「おい!今なんて、、、、言った、、、」
俺が言い終える前に柚木は去っていってしまった。
「許してもらえた、、、訳ないよな」
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