第2話 尋問
「さあ、説明してもらおうか」
「な、なにを?」
ここは取り調べ室。周りには十人を超える刑事たちがいる。もう逃れることは出来ない。
「とぼけるのもいい加減にしてもらおうか」
「そうだぞ! ふざけんな!」
取り調べ室の机に座る僕、その反対側に座る刑事。そいつの声に反応して周りの刑事たちが声を上げた。
「説明も何も、ただの幼馴染ってだけだよ」
「ふーん、ただの幼馴染ね……」
「何だよ、その含みのある言い方」
何か掴んでいるような言い方してたけど、本当に何も無いんだよな。
「んじゃあ、昨日の買い物デートはどう説明するんだ! ただの幼馴染でも中々行かないぞ?」
えっと……そういうものなのか? あんまりよく分かってないんだけど、幼馴染で買い物ぐらい行くだろ。
「別に普通じゃない?」
僕は首を傾げながらそう言うと、目の前の刑事の剣幕が一層厳しくなった。
「普通だと!? お前どんだけ羨ましい人生歩んできたんだよ!」
それ、お前の妬み以外の何物でもないだろ。ただの逆恨みじゃないかよ。
「僕にどうしろって言うんだよ……」
「俺にその子を紹介してほしい」
「却下」
どうせここにいる奴ら全員、アイツの体目当てだろうし。しずくに送る目線が大体顔より下にあるのは、男の僕にも分かる。
そんなエロ猿共にアイツを渡せるか!
「頼むよ〜、友達でもいいから〜」
「そんな下心しかない奴に、紹介したくない」
「お前……」
目の前の刑事は机を強く叩くと、唇を噛み締めるように。
「女と接する時に下心ない男がいるかよ!!」
「ロクデナシだな、お前は……」
まったく男の本能をそのまま体現しているような奴だな。
「お前は分かってないよ、俺らみたいな女子と接点がない男の気持ちが」
分かってたまるか。そんな下心しかない奴らに近寄りたい女子なんていないだろ。
「まあ、分からないな」
「そうだろ! お前は女に恵まれているんだ!」
「め、恵まれてる? 僕が?」
「だってそうだろ? 俺らが話したことないような女子とよく話してるじゃないよ!」
コイツ、それだけで恵まれてるとか言ってんのかよ。普通に世間話してるだけだろ。
「大した話してないぞ?」
僕はそう言うと、目の前の刑事はどういう訳か涙を流し始めた。
「俺らには、それがないんだぞ……! この苦しみを分かってくれよ……!」
ったく、何だよこの茶番……
周りの刑事達も泣いてるし、コイツらどんだけ女子に飢えてるんだよ。
「そうは言っても僕の一存じゃ、紹介なんて無理だぞ?」
しかもしずく、他の男子の事「猿ども」なんて言ってたし、会わせるのもなんか抵抗あるんだよな。
「それはそうか……盲点だったな」
いや、そこは一番最初に浮かぶ所だろ! それぐらい気づけや。
ていうか、コイツらガチなのかボケなのかすらも分からない。
ツッコミたい所満載だし、疲れてきたから、そろそろこのコント劇を終わらせようと思う。
「んで奏真、これいつまで続けんの?」
「いつまで? そんなの決まってるだろ?」
「そんなカッコつけながら言う事じゃないよ」
「良いだろうが! 水刺すなよ、せっかく楽しくやってんだから」
「何で、僕が巻き込まれなきゃいけないんだよ」
「ちょっとくらい付き合ってくれても良いだろ?」
何がちょっとだよ。
放課後になって僕の周りを囲って恐喝のように、自分たちの欲望を押し付けて。
しかも一時間もこんな茶番続けてさ、こっちの時間も考えてもらいたいもんだよ。
「これが俺の青春なんだよ! これしか青春できないんだよ! いいよな、お前はあんな幼馴染がいてよ!」
「やめてくれ、悲しくなってくる……」
それからようやく解散になったのは、授業が終わってから二時間が経過した後だった。
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