その執事、『悪魔』

櫻 愛梨

『現実世界と異世界』

第1話 「夢?現実?」

「喜代子ー、一緒に帰ろー?」

 友達の喜代子に声を掛けたこの女の子こそ、主人公、愛梨えりである。

 これからこの子に起こることは誰も知らない。

「あ、うん、いいよー。今日部活ないし、帰ろー」

 今は下校時刻。愛梨と喜代子は友達で帰る約束をしていた。

「んじゃあ、靴箱で待ってるー!」

「はーい!」

 そう口約束をし、靴箱に向かい歩く愛梨。

 靴箱にて

「遅いなー、喜代子の奴。男子に捕まってんのかねー?」

 ブツブツ言いながら喜代子を待つ愛梨。

 数分後

「ごっめーん!お待たせ」

 待ちながらネイル塗り直す愛梨の元に走って現れる喜代子。

「あ、やっと来たー!カック奢りね?」

 くすくす笑いながら話す愛梨と喜代子。

「えー?今月ピンチなのにぃー」

 拗ね気味に言う喜代子。

 バサバサッバサバサッ

「ねえ、教科書かなんか落とした?」

 喜代子が愛梨に問う。

「鳥じゃない?それよりカック行こうよー」

 喜代子を引っ張り、カックに行こうとする愛梨。


 ???『アレが主様ですね…』

「ねえ、ほんとに何も言ってないよね?」

 不思議そうにする喜代子。

「えー?私が何言ったって言うのよー?」

「それもそうか。あ、ねぇねぇジョニーズのー!」

 話しながら帰宅する愛梨と喜代子。

「カック行こー?」

「はいはい」

 愛梨に声を掛ける喜代子と、仕方ないなと笑って付いていく愛梨。


 カックにて

「アイスカフェオレとハンバーガー二つずつで」

「先に席取っとくねー?」

「はーい」

 愛梨が会計を済ませてる間に2階のテラス席に席を探しに行く喜代子。

「お待たせー」

「あ、こっちこっちー」

 席に座って待っていると喜代子がカックのアイスカフェオレとハンバーガーをもって2Fにやってくる。

「お待たせー。席取っといてくれて有難う」

 カタン、とカウンターテーブルにカフェオレとハンバーガーの乗ってるプレートを置き、愛梨に話す喜代子。

「ううん、席取って置くって私が言ったんだし、気にしないで」

 そう喜代子に話して笑う愛梨。

「あ、うん。わかった」

 愛梨の言葉にホッとする喜代子。

 ???「…様。主様」

 愛梨「え…?」

 また声が聞こえ、カックでキョロキョロする愛梨。

「どうしたの?」

 心配そうに愛梨に声を掛ける喜代子。

「ねぇ、なんかまた声が...。幻聴なの?これ」

「え?だ、大丈夫だよ、きっと」

 不安そうな愛梨に心配して支える喜代子。

 ???『…様、主様』

 異世界から現世にやってきて、喜代子と愛梨の前に現れる黒い羽の生えた男性、ベリト。

「え?な、何?主って?私何も持ってないし…」

 ベリトにあるじと言われ困惑する愛梨。

「主様の鞄に付けている、その薔薇のキーホルダー」

「これが、どうしたの?」

 薔薇のキーホルダーを指差して話すベリトとキョトンとする愛梨。

「此方の世界を助けてくれる主様の印でございます」

 頭を下げて敬意を払い、説明をするベリト。

「『此方』の…世界?『此方の世界』って?」

 不思議そうにする愛梨。

「今晩、眠った時に異変があると思います。それでわかると思いますが、朝には元の主様の部屋に戻るようにしておきますので、決して『夢』で、片付けることが無いように心に留めておいて欲しいのですが…宜しいですか?主様。会わせたい方々もいらっしゃいますので。」

「わかった。この子は?喜代子って言うんだけど」

 ベリトの話を聞き、喜代子を指差して話す愛梨。

「そちらのお友達の方は、今晩は大丈夫です。それでは、お待ちしていますね」

 にこりと微笑み、愛梨と喜代子に会釈し飛び去って行くベリト。


 その日の夜

「ふぁぁ…今日も疲れたし寝よーっと。おやすみぃ」

 帰宅した愛梨は夕飯を終え着替えたあとに疲れてしまいそのままベッドに行き眠りに落ちた。

《―夢の中?―》

「主様、来ていただけて良かったです。お待ちしておりました」

 愛梨を見つけお辞儀をし、挨拶をするベリト。

「あれ?私、寝てたんじゃ―」

「向こうの世界の主様は眠っておられることになっております。心配なさらないでください」

「では、緊張されていると思いますので紅茶の用意を致します。」

「え?あ、有難う」

「なーなー、主様が見つかったって本当かー?」

 ベリトと愛梨の居る大広間にノックもせずズカズカ入ってくるもうひとりの執事、アイム。

「あの、えっと…」

「なーなー、ベリトさん!」

「何です?主様の前ですよ」

 アイムの態度にクスッと笑いながら紅茶を煎れ、愛梨の前に差し出すベリト。

「じゃあ後で2階の執務室来てくれよ!話があるから」

「わかりました、向かいます。主様もよろしければ如何でしょうか?きっと楽しいですよ」

 アイムの話に返事をすると、愛梨に提案するベリト。

「楽しい…の?楽しいなら行ってみたい」

 ベリトの話に返事をし、頷く愛梨。

「ですが、その格好だと、異世界の者だと色んな方々に知られてしまいます。此方のお召し物にお着替えください。」

 そう話すと着替え用の薄いエメラルド色のワンピースを愛梨に渡すベリト。

「わかった」

「では、廊下にてお待ちしていますので、お召し物を着られたらお声掛け下さい」

  頭を下げ、一度退室するベリトとアイム。

「綺麗なワンピースね」

 大広間の個室で一人着替える愛梨。

「主様、如何でしょうか?」

 愛梨に声を掛けるベリト。

「はーい」

 ワンピースを着終わり声を掛ける愛梨。

「では、失礼致します」

 そうベリトが言うと、個室のドアを開けるベリトとアイム。

「お手をどうぞ、主様」

 手を差し出すベリトとアイム。

「あ、有難う」

 気恥ずかしそうに二人に連れられ、2階の執務室に向かう愛梨。

 執務室にて

「そういやぁ、ベリトが主様連れてくるんだってよ!」

「へー、楽しみですね!悪魔執事だけだと、死んじゃう悪魔執事も居ますから。主様の存在が本当なら、ボク達も力を出せますし」

「へへっ、さっきベリトさんと一緒にいるの見たけど、可愛い子だったな」

「へー!!」

「何だ?フォカス、主様に興味あるのか?」

「な、なあに?あったらおかしいの?仕方ないでしょ!お会いしたことない方に興味持つのは自然なことだよ?」

 ムキになって話すフォカス。

「なんだか賑やかな声が聞こえるけれど…此処は?」

「執務室です。皆さん、いらっしゃっていますよ。主様をお迎えするんだと、皆さん張り切っていました。あ、そうそう。主様、猫ちゃんはお好きですか?」

「好きだけどどうかしたの?」

「いえ実は、猫の姿をした執事が二名ほど居ますので。それなら良かったです。」

「そうなのね。その二人のお名前は?」

「フォカスくんとフォラスくんですね」

「名前を呼んであげたらいいかしら?」

「いいと思います。やはり主様はお優しいですね」

 愛梨の提案に嬉しそうにする、ベリトとアイム。

「そういえば、アイムはこのお城の料理人なんです。作って欲しい物があったら彼に頼むといいですよ」

「今それを言うのかよ、ヘヘッ」

 ベリトに反発しては、愛梨を見て恥ずかしそうに微笑むアイム。

「それでは参りましょう」

 ベリトとアイムに手を取ってもらい、執務室の中に入っていく愛梨。

「只今戻りました、主様をお連れ致しました。」

 愛梨の手を取り執務室に入っていくベリトとアイム。

「主様!」「主様!」

 ベリトとアイムと手をつないで入ってきた彼女が主だと思い、愛梨の前に出ていくフォカスとフォラス。

「フォカスくん、フォラスくん。お待たせしました。」

 ベリトが微笑んでそう言うと、愛梨に飛びつくフォカスとフォラス。

「「うわーい!初めまして、主様」」

 もふもふの二人に抱きつかれ、受け入れて抱きしめ、2人を撫でる愛梨。

「初めまして。貴女お名前は?」

「僕はフォカス。こっちは弟のフォラス」

 主様を見て説明するフォラスの兄、フォカス。

「そう。初めまして、私は櫻 愛梨と言います。よろしくね」

 フォカスとフォラスに気付いては、目線を合わせて話そうと、しゃがんで微笑みを浮かべ、話す愛梨えり









 




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