第11歩 映画デート【前編】

 前山さんと三上さんと連絡先を交換してから2日が経ち金曜日。高校生になってから今日が《12日目》の夜。


 村田さんと話して明日の土曜日の朝10:00からの映画を観に行く事になった。


 現地集合なので、遅れないようにしないといけない。


 10:00から映画が始まるから、最低でも15分前には集合しておきたい。

 するとバス停からショッピングモールの映画館までが10分ぐらい。

 でもバスが来るのが5分遅くなったとしても大丈夫なようにして。

 家からバス停までが5分だから……。出掛ける準備や朝ご飯とかの時間も考えたら明日の起きる時間は…………8:45くらいか!!




 明日着ていく服も、洋服屋さんのマネキンが着てるやつをパクった。

 所謂、マネキン買いをした。


 これならファッション全然分からん俺でも大丈夫だろう。






《13日目》



 遂に映画を観に行く日になった。


「あぁ……寝不足だ」


 早めにベッドに入ったものの、不安で中々眠りに付けなかった。

 いつの間にか眠ってはいたが眠りが浅かったのか頭がぼーっとしている。


 眠過ぎて瞼が上がらないが、今日は大事な約束の日。遅刻でもしてみろ。印象最悪だ。


 今日は今後の関係にも関わってくる大切な日だと自分に言い聞かせると眠気は徐々に薄れて来た。



 しかし逆に不安でお腹が痛くなってきた。


 お腹を擦りながら支度を始める。



 時間に余裕を持って支度を終える事が出来たが腹痛が襲ってきてトイレにダッシュ。


 トイレが終わって時間を確認するともう後3分でバスが来る時間になっていた。



「まっずい。走らないと間に合わない!!」


 俺は急いで荷物を持ってしっかり戸締りもしてバス停に向かう。


 体力が無いので直ぐに息切れる。重い足を必死に前に出す。

「はぁはぁ……」


 もっとちゃんと運動しとくべきだった。足が重い……重すぎる。

 鉛の様に重くなった足をそれでも必死で動かす。予定に遅れる訳にはいかない。

 しかもこのバスを逃したら次は30分後。絶対に逃すわけにはいかない。



 やっとの思いでバス停に着き、膝に手を当て「ぜぇはぁぜぇはぁ」と空気を吸っているとバスが到着。


 何とか間に合った……。




 椅子に座って一息着いて汗を拭う。


「こりゃ絶対明日筋肉痛だな……」


 窓に映った自分の顔を見て苦笑しながら、無事バスに乗れたことに安堵のため息を吐く。



 バスに揺られる事約10分、目的地に着いた。


 足が凄く重い……。



 時刻を確認すると当初の目的通り9:45分。


 お腹が痛くなるというハプニングもありながら、何とか予定通りに着くことが出来た。


 後は村田さんが来るのを待つだけだ。



「ふぅ」とほっとため息を吐いて空を見上げる。


 雲がゆっくりのんびりと動いているのを見ていると自分の気持ちも不思議と穏やかなものになっていった。





 暫く空を見上げていると「お、お待たせ……」と、か細い声が聞こえてきた。

 微かに聞こえた声は遠くの人のだろうか……。


 あぁ、俺と同じように待ち合わせしている人がいるんだなぁ……とぼけーとしていると誰かに肩を叩かれた。


 ん? なんだ?と思い、振り返るとそこには村田さんがいた。


「お、お待たせ……」


「あ、うん」


 どうやらさっき微かに聞こえた声も村田さんだったらしい。声が同じだった。


「ごめんね、遅くなって」


「い、いや全然。俺もさっき来たとこだし……」


 テンプレの会話をしていると気が付き少し恥ずかしくなって目を逸らす。


 横目で村田さんを改めてチラッと見ると今度は服が目に入った。


 ちょっと大人しめの印象を与えるベージュぽい色の半袖のパーカーに、ジーンズ。


 ジーンズで脚がスラッと長く感じ、スタイルが滅茶苦茶良く見える。


 可愛い系の村田さんの服装としてはワンピースとか着てくるんかなって思ったけど、こんな感じの少しボーイッシュな格好も凄く似合っていた。


 美人な人とか可愛い人は何を着ても似合うと俺は思う。


 試しに地雷系の服を着た村田さんを想像してみる。


 …………うん、いい。めっちゃいい。


「行かないの?」


 ハッ!! 思わずキモイ想像をしてしまった。

 村田さんに見惚れて映画のことを忘れてしまっていたが、声をかけられ正気に戻る。


「い、行こっか」


 慌てて返事をして映画館に向かう。



 チケットを買う時、席を隣同士にしていいのか迷っていると村田さんが迷いなく隣同士の席を選択。


 気にしないタイプなのか……。


 俺は気にしちゃう!! 緊張して映画に集中出来なさそうだなと不安を抱きながらもチケットを購入。



「ポップコーンとか買う?」


 因みに俺は1人で観る時はジュースとかも買わない派。


「んー、どうしようかなぁ……」


 村田さんが迷っている。ここは奢っていい所を見せよう!!

 昨日検索して見たデートのアドバイスには男が奢れって書いてあったし!!



「ペアセットにしよっか?」 そっちの方がお得でしょ?と村田さんが言ってきた。


 コミュ障の俺には拒否する事なんて出来ず……。


「お会計860円になります」


 1000円をサッと出してお会計を済ませる。


 商品を受け取ると、村田さんが「はい」と430円を渡そうとしてきた。


「あ、いや大丈夫」


「え? 奢ってくれるの?」


「う、うん」


「そっか、じゃあお言葉に甘えて。ありがと」


 太陽の様な明るい笑顔を向けられ、この笑顔を見れただけで奢った甲斐があったなと満足した。後悔はない。


 今日は何故か妙に明るい様な気がする。余程映画が楽しみなんだろうな。


 俺も楽しみだ。原作も面白かったからね。


 席が隣同士って言うのが緊張する……集中して見れなかったらもう1回1人で見に来よ……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る