第8歩 すごろくで親睦を深めよう!
《8日目》
昨夜は日中外に出て散歩をしたからか、意外と早めに寝る事が出来た。
けれどもやっぱり月曜日は憂鬱。
最近はもう当たり前になった村田さんへの挨拶も済ませ、席でゆったりとくつろぐ。
今は目標とか何とか言ってる場合じゃない。学校に来ただけでも偉いだろう。
今日はこれでもう十分頑張った。
…………いやダメだろ。確かに頑張ったし面倒くさいし、億劫だけど。
村田さん以外の人とも話せるようにならないと。
話しかけるタイミング、話す内容、色々な事が噛み合わず国語の授業に突入。
「よーし、今日はグループに分かれてちょっとしたゲームみたいなものをしてもらおうかな。親睦を深める為にも」
先生!? ナイスぅ!? これなら嫌でも同じグループになった人とコミュニケーションを取らないといけなくなる。
その時に喋りかけても「なんだコイツ」みたいに思われないし、話の話題もそれでいける!!
「じゃあ、前後で4人1組のグループね。机合わせてー」
しかも村田さんとも親睦を深めれるだと……!?
何するんだろう?
「皆何するんだってそう身構えなくてもいい。この時間は楽しくゲームするだけだ」
俺の心を見透かしたかの様な先生の発言。楽しく……ゲーム。とか言ってもあんまり面白く無いんだろうなぁ……。
そこは期待せずにいると先生がカバンから何かを取り出した。
「じゃーん! すごろくだ!」
先生がマス目が書かれた紙を掲げる。
その瞬間クラスから「おぉ」と小さな歓声が上がる。
「なんとこのすごろく……先生の手作りでーす!! 止まったマス目に書かれてる指示は先生が作りましたー!」
「じゃ、班も作れた事だし配ってくぞー」
配られたすごろくの用紙、サイコロそして人数分のコマ。
すごろくの用紙だけ自作なんだろうけど、これ作るの大変だったろうな……。
いい先生や……。
ジーンと心温まっていると「じゃ、各々好きにやってなー」と開始の合図がされる。
「「「「…………」」」」
誰か喋ってくれぇ!! 進行してくれぇぇえ!!
この無言の空気に耐え兼ねて最初に口を開いたのはいつもは前の席の子。机をくっ付けているので今は隣の子。
確か名前は……分かんねぇ……。名前なんてそんなすぐに覚えられねぇよぉ……。
「あー、じゃあ取り敢えず自己紹介しようか?」
そう言って苦笑気味に進行役をかってでた。ありがたい。とてもありがたい。
「俺の名前は前山。よろしく」
次どうぞと、前山さんが前の人に振る。
「私の名前は三上だよー。よろしくー」
三上さんは誰にも振らない。ので、村田さんが先にやるかなって思い、村田さんの方を見る。
すると村田さんも同じ事を思ったのか目がバッチリ合う。
少し気恥ずかしくなって目を逸らすも、もう1度目を合わせる。その繰り返しで目がギョロギョロしている。
う、うぅ。どうぞ
と言う前に村田さんは自分から自己紹介を始めてくれた。
次は俺の番だ。
「む、村上です。よろしくお願いします」
そうやって無事に自己紹介が終わり、前山さん進行の元すごろくを始める事に。
ジャンケンをして順番を決め、サイコロを振る。
改めてマス目を見ると、マス目の指示は「好きな食べ物を言う」「趣味を言う」「趣味が同じ人がいた場合2マス進む」等などかなり凝っていた。
これ絶対時間かかったやん……。
国語の先生に少し尊敬の念を抱いて進めていく。
前山さんが盛り上げてくれて、それに俺もたまに乗っかる形で結構喋れている。
村田さんも三上さんと少し仲良くなれたのかもしれない。
少しずつこの班に笑いが増えてきた。
純粋に楽しくすごろくが出来ている。これも全部前山さんのお陰だ。それと明るい三上さん。
こういう人が、真の陽キャなんだよなぁ……。
前山さんや三上さんみたいな人物になりたいと目標が明確になった。
俺の番が来て、サイコロを振ると4が出た。
4マスコマを進めて指示を読む。
「好きな本」
…………難しいの来たぁ。皆が分かりやすい本にした方がいいよね?!
でも小説とか読まない人ばっかりだったら絶対伝わらないし。
ラノベとかは論外でしょ? 漫画にするべきか……。
あ、最近映画が始まったあの小説にしよう。
「最近好きな本は『君が星になっても』です」
「おー、あれな? 最近映画始まったやつだよな?」
前山さん……!! 知ってたのか!!
俺がコクコクと頷くと、「あれいいよね!」と三上さんが興奮気味に食いついてきた。
「村上くんはもう映画観たの?」
食い気味の三上さんに若干戸惑いながらも「いや、それがまだなんだよね」と答える。
するとそこまで黙っていた村田さんが口を開く。
「私も観てないや」
「お、じゃあ2人で見に行けば?」
唐突にぶっ込んでくる前山さん。
何いってんのぉぉぉお!????!!
「見に行きなよ!」と押してくる三上さん。
絶対緊張するだろうけど……
「俺は別に構わないけど……村田さんがどうかは……」
「丁度観たかったから、私も別にいいよ。今週末でいい?」
「う、うん」
ぅゑぇぇぇぇぁ?! まさかのオーケー!? これってデ、デデートってやつ!?
いや落ち着け俺、村田さんはそんな気さらさらないだろうな。うん。そうだ。
深呼吸をして平常心を取り戻す。
「んじゃ次私の番ねー」
三上さんがサイコロを振ってゲーム再開。
そうやって皆の趣味や好きな事、色々と話をしながらゴールに辿り着いた。
結果は1位がまさかの俺。2位が村田さん。3位が三上さん。4位が前山さんだ。
「3位かーびみょいー!」
「最下位……くそ」
三上さんは微妙な順位で悔しがって、前山さんは最下位で悔しがってる。
陽キャにも色んな種類の人がいて面白いな。
それに意外と前山さんは負けず嫌いなのかも。
村田さんの方を見ると、唇をキュッと噛んで少し悔しそうだった。
村田さんも負けず嫌いなのかな……? と微笑ましい気持ちになった。
丁度終わったタイミングで、チャイムもなり授業が終わる。
先生もニコニコと嬉しそうな、満足そうな表情をしていた。
あぁ、この先生良い人や……。
そうして唐突に始まった親交を深めるすごろくは終わった。
何気に今日の目標も達成出来て、万々歳だ。
少しの疲労感を感じつつも、楽しい時間を過ごせた。
終わってから気が付いたが、俺脇汗ダラダラだったわ。
バレてないから良かったけど。
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