第4歩 会話の結果……気まずくなっただけでした

《4日目》


 昨日目標を達成出来なかった罰として筋トレをしたからか、朝から全身が筋肉痛で起きるのが大変だった。


 痛みに耐えながら支度をし、学校に向かう。



「完全に無理しすぎた……」


 もっと最初は10回とかから始めれば良かったと後悔している。


 ずっと運動してなかった奴が最初から100回とか今思い返すと馬鹿過ぎる。


 でも、まぁ罰だからしょうがないか……。


 重い身体を頑張って動かし、遅刻しないように痛みを我慢する。








「いてて……」


 学校に着き、自分の椅子に座る。椅子に座るという動作だけでも筋肉を使う訳で、痛い。



「あ、おはよう」


 忘れず今日も村田さんに挨拶。千里の道も一歩から。毎日挨拶をしていたからか、4日目の今日は少し簡単に出来た。


「おはよう」


 村田さんに挨拶を返して貰える安心感が出来たからなのだろう。


 今日の目標は達成出来なかったから昨日と同じ「少しでも会話する」だ。


 さて、どうしたものか。あれからずっと話題が無いか考えて、スマホを使って検索してみたりするも如何せん、村田さんが何に興味があるのかが全く分からない。


 いっその事、それを聞いてみるか……? いやしかし、自己紹介の時に特に趣味がないって言っていた。そのまんま返されたらそこで会話が終わってしまう。それでは意味が無い。



 いや……待てよ?俺がアニメが好きって事を人に言い難いように、村田さんもあまり人に言いたくない趣味なのか!?



 その可能性に賭けてみる価値はある!!


「む、村田さんって趣味とかあるの……?」


 スマホを観ていた村田さんは顔を上げて「特にないです」とだけ言ってまた顔を下げた。


「あ……そうなんですね…………」



 チーンと頭の中で効果音が勝手に再生される。



 …………ですよねぇ。人に言いづらい趣味ならまだ出会って4日目の俺なんかに教えるはずないですよねぇ……。



 しくじった。気まずい。ゲームオーバー。小中と女子と関わって来なかった自分に嫌気がさす。本当に、どういう会話をすればいいのかが全くわからない。


「……やっぱり仲良くない人には教えたくないですよねぇ……」


 と無意識に零れてしまった独り言。


 はっ、と気付いた時には村田さんは顔を上げてこっちを見ていた。

 相変わらずの無表情で何を考えているのか、どう思っているのかが全く読めない。


「っ!!……すみませ」

「別に本当に趣味が無いだけです」


 謝ろうとした瞬間に、村田さんが口を開いた。


「え、そうなんですね……す、好きな物とかも無いんですか……?」


「無いです」


「あっ、そ、そうなんですね」


「「…………………」」


 沈黙を破ったのはチャイムでした。


 助かったぞチャイムよ。


 何も会話を広げられなかった……。気まずかったからナイスタイミングだ。


 今日の目標これで達成でいいよね!?ね!

 頑張って会話したんだから!


 とことん自分に甘いのは許して欲しい。俺は褒められて伸びるタイプなのだ。


 褒めてくれる人がいないなら自分で褒めるしかないのだ。


 てことで、今日は筋トレを免れて良かったと安堵する。


 この筋肉痛じゃ、とてもじゃないけど出来なさそうだったからね。

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