第6話
私はこのダンジョンで産まれた訳では無い。
親が死んで、森の中で生きることが出来なくなったからダンジョンに入って来た。
生きて行けなくなって逃げて来たのに、このダンジョンでも私は食物連鎖の最底辺だ。
そもそも〖狐族〗が弱いのだ。少し、ほかの種族と比べて賢いというだけで、集落の作物を頂戴しようとした時も、集落の子供に追い払われてしまう弱さだ。
だから、私はいつも隠れながら過ごしていた。
私が知る限り、この階層で1番強いグレイトウルフの食べ残しを食べて細々と生き延びる、そういう生活を送っていたのだ。
なのに、いつも通りグレイトウルフの食べ残しを食べていたら、番のグレイトウルフが出てきたのだ。
私は必死に逃げた。いつの間にか2匹のグレイトウルフに追われていたが、気にせず逃げた。だけど、すぐに限界が来た。
足がもうこれ以上動かない―――
そう思った瞬間だ。
「グルヴァァ!」
グレイトウルフの初めて聞いた苦しそうな声に後ろを振り向いた。
そこにいたのは昔、母から聞いた事のあるような金色の毛を持つ狐―――こんじき様だった。
忌々しいグレイトウルフがこんじき様をを振り払おうとする。だが、こんじき様は離さない。
その後、もう1匹の方が体当たりをして、こんじき様を吹き飛ばす。
矮小なグレイトウルフごときがこんじき様を傷つけるなんて。微力ながら私も手伝おうとするが、こんじき様は1人で戦おうとしていた。
グレイトウルフの肉を咀嚼するこんじき様もワイルドでかっこいい!
その威光にようやく気づいたのか、グレイトウルフ共は逃げ出した。
助けていただきありがとうございました!
「こぉーん!」
「こん、こんっ」
何かお礼されてください。
「くぉーん」
「くぉ、こん」
また、お会いしましょう!
「こーん!」
こんじき様は下層へ向かう階段へと歩いて行った。
こんじき様は強くなろうとしてるのだ。
なのに、私はグレイトウルフの食べ残しで何とか生き繋いでいる。私は生き残るために毎日過ごしているのだろうか…
いや、そんなはずがない。そんなことあってはならない。
私は決心した。強くなって、こんじき様の横に立つと―――
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