狐の魔物になったから、魔王になってクラスメート達に恩返ししよ!

真田モモンガ

第1話

「ほんっとうに申し訳ない!!」


頭と一緒に九つの尾をぺたんとつけた狐が叫ぶ。


「えーと、とりあえずここどこですか?」


俺―――篠原天也は確か、さっきまでここと同じような白い場所にいたはずだ。

授業中の教室の下に召喚陣みたいなやつが出て来て、光ったと思えば白い空間にいた。

そこで、仙人みたいな神様に召喚特典だとか言われてスキルを選ばされて、「気をつけての」て言われて、今に至る。


意味わかんねぇ。摩訶不思議なこと起こりすぎじゃねぇか?


「ここはお主の精神の中だ」


「はぁ」


一応相槌を打つ。


「驚かないんだな。お主の祖父にした時は「ぎょええ!」とか言ってたぞ」


「ちょっと待ってください。なんでそこで祖父が出てくるんです、祖父も異世界転移したんですか?」


「いや、お主の祖父―――明泰は我と契約しただけだ。そもそも、お主の血は我と契約していて、代々我はお主の血の才能を持つ者と契約しているんだ」


俺の家は代々神社を受け継いでおり、祀っているのは狐の神様だと聞いた。俺は長男だから、神社の跡継ぎだった。


そういえば、今日の朝じいちゃんに帰ったら話があると重苦しい雰囲気で言われた。今思えば、その事についてだったのかもしれない。


「じゃあ、今から俺は契約するんですか?」


「いや、それがなぁ、お主が学校から帰ってきたらしようと思って、前準備の我とお主の魂の縫い合わせだけ終わらせていたんだ。そしたら、異世界転移とかされてしまって異世界へ行く時の魂の再構築とやらで魂が絡まってな、契約出来なくなってしまったんだ」


「そうですか…」


昔話してもらった、祖父の呪霊を倒していたという武勇伝。嘘だと思っていたけど、本当だとしたら俺もしてみたかったな…


「あーえっと、それでな、魂が絡み合って変質してしまったんだ。その結果、お主の体は魂に引っ張られて、狐になってしまったんだ」


なんとも言いずらそうに九尾の狐が言う。


きつね、狐か〜。


狐!?狐なんて俺異世界だったらすぐ死んでしまうぞ?


「俺まだ死にたくないんですけど」


「いや、それは大丈夫だ。お主の魂は我の魂も混じっているからな、そんな簡単には死なない。だが、狐になるという事は人を辞めるということだぞ」


「別に人であることに拘りはないので大丈夫ですよ」


「そうか…」


「だけど、狐ですか、何しようかな」


人だったら、何かしらやることはあるが、狐なら生きる以外に特にやることが無さそうだ。


「魔王を目指してみたらどうだ?お主が転移―――いや、転生する先は勇者だとか魔王がいて、クラスメートたちは勇者になるようだから、魔王になってみたらどうだ?」


九尾の狐は天也がイジメまがいのことをされてることを不憫に思い、発した言葉だが、家で祖父にとことんしごかれている天也はイジメをイジメだと思っておらず、修練の手伝いをしてくれていると思っていて、


(俺が魔王になってわざと倒されたら、勇者のクラスメートたちが楽できるんじゃないか!?やっと恩返しできる!)


とさえ思っていた。


「良いですね、そうします」


「そうか、では達者でな」


「え?あなたも一緒に行かないんですか?」


一緒に行ってくれる物だと思っていた。


「異世界転移したせいで力を大分失ってしまったんだ。だから、しばらくお主の中で眠ることにする」


「そうですか、俺が死ぬまでには起きてくださいね」


「あぁ、善処する」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る