第16話 地球2
ブウゥン。トレーラーに乗った月詠がセンサーを光らせる。
「もしかして……」
――月詠、レールガン発射。
祈るように考えると、月詠はレールガンを放つ。
前方の壁面が爆発。
ジリリリリ。警告音が鳴り響く。
そしてスプリンクラーが作動し、消火剤がシャワーのように降り注ぐ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。
僕は拳銃を撃ちながら走る。目指すはトレーラーの操縦席。
「ぐあっ」
一人の人間を撃ち抜く。
そして倒れたそいつの持っていた自動小銃を拾い上げ、撃ち放つ。
僕はトレーラーに乗り込む。
幸いにも鍵はついたままだ。
鍵を回し、起動。
僕は月詠を載せたまま、逃走する。
月詠はレールガンを放ち続ける。
倉庫内で爆発、炎上する。
データの吸い出しに使っていたパソコンも爆発に巻き込まれる。
「よし! これなら!」
クサンドラシステムは人の脳波を受信し、その固有パターンを登録する。そしてそれがパイロットとして認定される。
脳波を測定できる範囲内なら、クサンドラを搭載したAnDはコントロールできる。
つまりは脳波のみで簡単な命令なら操作可能だ。
倉庫のシャッターをレールガンで破壊する。
できた穴から脱出を図るが、敵AnDが立ちはだかる。
「くそっ!」
僕はAnDの機銃で威嚇射撃を行う。
このままでは袋のネズミだ。
次の瞬間、振動が走る。それも幾度か。
「これは……クラスター爆弾」
振動が収まる前に倉庫を抜け出す。
追ってくる敵AnD。
敵機にミサイルのシャワーが届く。
てっきり、味方機が来たのだと思っていた。でも
「これは……」
宇宙からの攻撃。
「火月か!」
「火月、データを送信する。目標は?」
「目標ポイントに月詠を確認。周辺、敵機を排除開始」
俺は操縦桿を握る手を少しずらす。
右にコンマ二。下にコンマ八。
「いっけーっ!」
そしてトリガーを引く。
背中から伸びたミサイルランチャーはミサイルを吐き出す。
それは大気圏を突入していく。
赤く染まったミサイル群。
倉庫をでて、近くの基地に向かい走らせる。
追ってくる敵機には大量のミサイルが降り注ぐ。
クラスター爆弾が複数。
まるで僕の進路を分かっていての攻撃。
これほどの精密射撃はあいつにしかできない。
それもクサンドラシステムの予測演算による補助があってこそ、だろう。
僕はAnDを載せたトレーラーを走らせる。
GPSのデータを頼りに森の中を突っ切る。
空には戦闘機。その戦闘機もミサイルの群れに呑まれる。爆炎と金属片が散らばる。
クラスター爆弾が敵機を囲む。
それにより追手を振り払うことに成功した。
目的地。自衛隊の基地に到着した。
「止まれっ!」
基地の自衛官が機銃を片手に近づいてくる。
僕はトレーラーを止めると窓を開ける。
そして胸元から認識番号の書いた手帳を差し出す。
「宇宙軍所属、内藤茂。認識番号、二三五五・五八
自衛官は手帳を確認し、遮断機を上げるように手続きを行う。
手続きを終え、中に案内される。
指定された駐車場にトレーラーを止める。
僕はトレーラーから降りると、ため息を吐く。
「お疲れ様です!」
「ああ。お疲れ様です」
「とりあえず、お風呂でもどうですか?」
「ああ。ありがとう」
お風呂に入る前に診察を受けたがその後、案内される。
僕は案内されるままに遅めのお風呂、夕食を終える。
そして宿舎で休むように促される。
宇宙司令部には連絡をとってくれていたらしく、今後の予定を明日、通達するそうだ。
僕は宿舎の窓から外を覗き見る。
なんとなく、落ち着かない。
外に自販機があったな。
僕は宿舎からでて、自販機に向かう。
ホットコーヒーを買うと、ベンチに腰を掛ける。
一口、飲むと、ため息がでる。
「ふう……」
「どうした?」
自衛官の一人が隣に座る。どうやら僕を案内してくれた自衛官のようだ。
「地球はつまらないか?」
「いや、こうしてみる地球の景色は面白い。コロニーの空は人工的すぎて」
僕は夜空を見上げる。そこには
「ほう。コロニーはそういった感じなのか」
「コロニーにいった事はないのですか?」
「ああ。生まれも育ちも地球さ」
「自分はコロニー生れ、コロニー育ちです」
「重力はどうだ? コロニーと違うのか?」
「コロニーよりも重いですよ。昔はみな、ここに住んでいたんですね」
「そうだ。地球で生まれ、育つ。それが当たり前の時代もあった」
「でも人口増加、資源の枯渇、地球温暖化。様々な問題を解決するには宇宙への進出が必須だった」
「そうだな。人口を制限するのは失敗し、かといって文明を放棄すれば多くの患者や社会的弱者が生きていけなくなる」
「……」
「そうだ! 明日から君のAnDを補修するぞ」
「ありがとうございます」
「AnDの生体認証は一度、リセットする必要があるが。どうやらクサンドラの方は解除できなかったようだ」
「それで自分の脳波に反応したのか……」
「そうか。……弾薬の補充や整備も任せておけ」
「すいません。お世話になりっぱなしで」
「いいんだ。レジスタンスはこちらの不手際でもあるからな」
自衛官と話し終えると、宿舎に戻る。
宿舎から見える月は綺麗だった。
騒音により宿舎で目が覚める。
「なんだ?」
僕は落ち着いた足取りで立ち上がる。
どうやら整備工場の方からのようだ。
着替えを終え、騒音のする方へ向かう。
倉庫とおぼしき建物に入る。
そこには月詠が鎮座していた。周囲には多くの整備士が取り付いている。
「おいっ!
「すいません! 今、持っていきます!」
「こっちはCVVの2mが必要だ!」
「ここのケーブル、断線してます!」
そんな声が倉庫内に鳴り響く。
僕の隣に機能の自衛官がくる。
「どうだ。活気づいているだろ?」
「申し訳ありません。機体の修復までして頂いて」
「まあ、脚部や腕部はそっくりそのまま交換だけどな」
そう言いながら月詠を眺める。
「お陰で細かい調整だけで済みそうだよ」
「そうですか」
「ん? 浮かない顔だな」
「いえ」
「もしかして、責任を感じているのか?」
僕は視線を落とす。これでは肯定しているようなものだ。
「責めを負う必要はない。戦闘で地球にきた事も、レジスタンスに捕まった事も」
奥歯をギュっと噛みしめる。
「作戦自体は成功しているんだ。しかもレジスタンスの拠点を破壊。称賛されても、叱責される事ではない。俺からも打診はしておく」
「……すいません」
「まあ、
そう言い残し、自衛官は整備士に話しかける。
僕は軍港の方に足を運ぶ。
コロニーにはない潮風。潮の香り。
広い海。海は波打ち、白い泡をだす。水面はきらきらと輝く。
「これが照り返しか……」
どれもこれも見た事のない光景だ。
軍港にはレールガンやミサイルを搭載した軍艦がいくつか停泊している。
その洗練されたデザインは美しくもある。
「地球は綺麗だ」
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