第4話 大会2
休憩中に女子チームも無事、二試合目に勝ち進んだそうだ。
次は二試合目だ。相手のAnDは
この宙域は小さいデブリが多い。昔の人工衛星が壊れたものだろう。ジャンク屋のバイトでよくお世話になっている座標だ。
二試合目の相手は大会が始まった時から参加している古株だ。今度は、まともな試合ができそうだ。
実況アナウンサーが合図する。
「試合開始!」
「どうするんっすか?」
火月が熊の指示を仰ぐ。
「よし。内藤は先行して敵座標を特定しろ。火月はそれを基に打て」
「了解」
「いつもどうりかよ」
僕はデブリを避けつつ、先行して行く。その後ろを熊の機体が追いかける。デブリに身を隠しながら。
センサーに反応なし。敵は視認できない。どこにいるんだ。そう思いながら、中心部へ向かって行く。
こちらが動くと、そのバーニア光が相手に気付かれる可能性が高い。つまり僕は囮なのだ。しかしそれも僕の反応速度があれば回避できる。という判断の基から、このような戦術をとっている。
中央から敵がいた筈の方向へさらに先行する。未だに敵の姿は捉えられない。どこだ。どこにいる。目を凝らし探す。
通信が入る。火月からだ。
「まずい。敵だ。攻撃を受けている」
と同時に敵座標が送られてくる。No1、No2、No3とモニターに表示される。
「何!陽動が読まれたのか!」
「すぐに向かう」
熊と僕は焦って、火月の元へと向かう。
火月はシールドで弾を防ぎ、スナイパーライフルを槍のように振り回す。スナイパーライフルは鈍器のように扱えるのか。確かに質量は相当のものだが。
火月は時折、ペイント弾を打つ。そのタイムラグを失くすため、鈍器として扱っているのだ。
「距離を取りたくてもとれねー!」
火月が愚痴る。
「捉えた」
熊が加勢に入る。が次の瞬間、火月がペイント弾の餌食になる。
「やられた!」
「くそぅ」
火月と熊が嘆く。追いついた!
「加勢します」
「まずはNo2だ!」
「了解」
と、会話した後、相手の動きが変わる。デブリの影に隠れて行く。
「ヒットアンドアウェイか」
「一人一人、倒して行くのか」
さすがに大会慣れしているだけの事はある。どうする?
「俺から離れるなよ」
「了解」
そうか。一人一人仕留めるのなら、一人にならなければ問題はない。しかし相手もそれは想定しているのではないだろうか?
センサーに反応。三方向、別々の方向から弾が飛んで来る。僕は、それを全弾回避する。熊は? そう思い、モニターで確認するとペイント弾で染まっていた。と同時にNo2もペイント弾で染まっている。熊が一矢報いたようだ。
No1とNo3がデブリに隠れて行く。
「逃がすか!」
僕は近くにいたNo3に向けてバーニアを吹かす。No3が応戦しつつ、後退して行く。ハンドガンを打ちながら、追い詰めて行く。逃がさない。
ピピ。
音を立ててレーダーに反応があった事を知らせる。後方からNo1が接近してくる。No3を追い立てつつ、僕のAnDー
この瞬間を待っていたいんだ。
No3にこれでもかとハンドガンを打ちまくる。No3のシールドをかわしペイント弾が飛んで行く。No3本体に被弾する。
続いてNo1に接近する。ハンドガンを打ちながら。No1が慌てて後退する。No1が応戦するも右左へと機体を揺らしかわす。デブリの動きを予測する。
シールドを手放し、近くの小型デブリをNo1へ投げつける。No1がそれを避けるが近くの別のデブリにぶつかる。そこを狙いハンドガンを撃つ。No1の本体がペイント弾で染まる。
「試合終了!!まさかの東武ミリタリー高校の逆転勝利~!」
「よくやった!」
「やるじゃんかよ!」
熊と火月が褒めてくる。そういうのには慣れてない。
「次は三試合目ですね」
そう答える。
「そうだな。しかし今は勝利した幸福を味わっても良いんじゃないか?」
「たく。おめーのそういう所が嫌いなんだよ」
じゃあ、どう答えるのがベストだったんだ。僕には分からない……。
三試合目は明日だ。それまで各自、休息をとるように言われた。
輸送機
コロニーに着くとシャワーを浴び、汗を流す。女子チームも無事二回戦目を勝ち抜いたらしい。菫は優れた操縦技術を持っているし、水越先輩は自信がないが優れた戦術を考え付く。心配するまでもないか。
そういえば、今日はスーパーに寄ってから自宅に帰るか。そんな事を考えていると、隣のシャワーを火月が使い出す。
「火月のライフルの命中率はすごいな……」
小さな声でそう呟く。火月が驚いてこちらを見る。
「……なんだ?」
なぜ?そんなに驚いているんだろう。
「いや、お前。人を褒められるんだな」
「それってバカにしてないか?」
「…………」
シャワーの音で聞こえなかったのだろうか? もしくは……。気にしないようにしよう……。
スーパーに寄り、何日か分の食材を買う。今日は野菜炒めにでもするか。
帰り道に警察が建物を囲んでいた。野次馬が人だかりを作っている。軍事用のAnDー
「内藤さん」
そう呼びかけて来たのは、メカニックの一郎だった。野次馬の中にいたらしい。
「
「偶然ですね」
「ああ」
そんなに会話した事がないがなぜ話しかけてきたんだ。そう思い、一郎をよく見るとコンビニの袋を持っている。買い物帰りか。
「この騒ぎは何なんだろうな?」
僕は疑問を口にする。
「どうやら、泥棒らしいですよ」
「泥棒?」
いったい何を盗んだんだ?AnDのパーツなんか盗んでもしょうがない筈だが……。
「盗まれたのは、極秘データらしいですよ」
「データか。でもAnDのデータを盗んでも一般人にはどうしようもないだろ」
「そうですよね。まあ、テロリストや反政府組織ロスト、他国の軍人ならまだしも……」
もしかして、そういった連中の仕業じゃないのか?
「そういた人間だったらどうする?」
「え! まさか! そんな連中ならもっとうまくやっているんじゃないですか?」
確かに。データなら外部からハッキングすれば良い筈だ。わざわざ、乗り込んで盗む必要があったのだろうか? それともそれだけ重要なデータだったのだろうか。
外部サーバから隔離されたような、そんなデータだったかもしれない。
「もしも、外部サーバに繋がっていないデータだったら?」
「それで、盗みに入ったんですか?」
「いや、もしかしたらだが……」
いやな予感がした。須賀工業研究開発株式会社は、
少し間を置いてから聞く。
「そういえば、一郎は兄弟でもいるのか?」
一郎という名前からして、
「いきなりですね。居ますよ。双子の弟が」
「そうか」
「でも、両親が離婚して今は離れて暮らしてます」
「悪い」
軽い気持ちで聞いてしまった。僕以外にも苦労している人が居るのは知っていたがこんな近くにいるとは思わなかった。
「いえ。良いんです」
「自分も両親は別々に暮らしているんだ」
「……内藤さんも色々あるんですね」
その後、一郎と別れ帰路についた。
以前は、こんな事は考えなかった。
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