悪役貴族に転生したので理想の悪役を目指した結果〜ヒロイン達が次々と闇堕ちして俺を崇拝してくるのだが!?〜
路紬
第一章
第1話 大好きな悪役貴族に転生しました
「どおおおおおしてだよおおおおおおお!?!?!?」
俺が朝一に魂と腹の奥底から絶叫している理由を話そう。
簡潔に言うと日本という国で育った俺は、ある日突然ファンタジー世界の貴族になっていたのだ。
それも俺がよく知る人物に……。
「この赤目! 紫の髪! 幼いけどこれは俺の推しキャラ、ラインハルト・ブラッディギアスそのもの……ッッ!!」
やり込んだゲーム【カルマティック・ファンタジー】その登場人物であるラインハルトに俺は転生していた。
血のような赤い瞳、紫の髪、特徴的な八重歯。容姿は設定資料集に書いてあったラインハルトの幼少期そのものだ。
……と自覚したところで、頭がかち割れそうな痛みが走る。
「いだだだだだだだだアアアアア!!!!」
それは記憶だった。
ラインハルト・ブラッディギアスが生きたという6年間の記憶。設定資料集やゲームでは明かされなかったところまで事細かに、俺の頭へ流れ込んできた。
痛みは一瞬。けれど感覚的には永遠にも思えた。しかし、これで確証を得た。
俺は本当の本当にラインルトそのものに転生したと。
そっくりさんや、別世界などではなく、【カルマティック・ファンタジー】の世界のラインハルトなのだ。
さて、ここで困ったことが一つある。
「こいつ……というか俺か。悪役なんだよなあ」
ついつい独り言を口にしてしまった。
そう、ラインハルトは俗に言う悪役貴族なのだ。様々なルートがある【カルマティック・ファンタジー】、その全てのルートでラインハルトは死亡もしくは行方不明になる。
あるルートではラスボス召喚の生贄に
あるルートでは主人公に殺され
またあるルートでは闇堕ちした主人公と共闘するも、勇者と相打ちになってしまう。
けど独自の美学とキャラクター性、ビジュアルなどでファンからの人気は高い。実際、俺は男キャラならコイツ!!っていうくらいには推してた。
「嬉しいけど……っ! でも破滅するんだよなあ……」
推しキャラに転生できたのはめちゃめちゃ幸福だ。でもそれ以上にどうあがいても破滅という未来が待っている。
悪役転生の場合、普通なら破滅を回避するために善人ムーブしたり、行動を変えたりするものだが……。
「
そもそもラインハルトは複雑な身の上だから、ただ単純に善行積んで、周囲の人の好感度を上げれば破滅を回避できる……なんて甘いものじゃない。
破滅を回避するためには乗り越えないといけないいくつかの試練がある。
いくつかある試練の中には、原作が始まる前、つまり俺が17歳になるまでに起こることが何個か存在している。
この試練を乗り越えて、原作から少しでも違う結果を残すか否か。それが破滅を回避できるか大きく関わってくる。
「善行ムーブ禁止で、破滅を回避か……。とんでもない縛りプレイだが、逆に燃える! いいだろうやってやろう!!」
難易度はクソ高いが、逆にそれがゲーマーとしての闘志を燃やす。
俺には原作をやり込んだ時間と情熱、そして本編から外伝小説、設定資料集に至るまでこの世界で起こりうるありとあらゆる知識がある。これは最高の武器だ。
これらを最大限活用して、俺は破滅を回避する。かっこよく死ねるのはちょっと憧れるけど、二十歳にもならずに死ぬのは流石にごめんだ。
「ターニングポイントはとりあえず3つ。10歳、13歳、16歳。まずは10歳に起こる出来事のために対策を打つ」
ラインハルトの人生。本編開始までに起こる出来事として、ターニングポイントとなりうるのは3つ。
まずは一番近く、4年後に起こるある事件に向けて俺は対策しなくてはならない。
「今から4年後。闇神騒動までに俺は闇属性の魔法を極めてやる……!!」
こうして目的が決まった。
最初のターニングポイントまで残された猶予は4年。長いようで怠惰に過ごしたら一瞬で過ぎてしまう年月だ。
「キヒ……アハハ……キャハハハハハハハハハ!!!!!」
ついつい笑い声が出てしまう。それはラインハルト特有の笑い声と同じ。だってこんなにも楽しいのだから。破滅の結末しか見えない絶望的状況からの脱却。
推しの更なる可能性が見られると思えばそれも一興。自分で自分を満たす。そうかこれが自給自足という概念か。
まあ取り敢えずの目標は決まった。今から4年間で闇属性の魔法を極めて、闇神騒動で召喚される闇神を俺のモノにする。それが第一の目標だ。
目標が決まったのならうかうかしていられない。早速闇属性の魔法を極めるため研鑽に励まなくては。
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