幼馴染が僕の知らないうちにアイドルになっていた
浅木蒼依
第1話 変ってしまった日常
鳴っている目覚ましを止めて俺は起き上がる。朝食を食べ、学校に行く支度をした後玄関を出る。朝とは思えないほど太陽が我々を照らしており、涼しい家に戻りたいと思うほどだった。
「おはよ~。今日も暑いねぇ」
服を扇ぎながら話しかけてきたのは俺の幼馴染だ。田舎なので近くで進学できる高校も限られており、小中高と同じ学校に進学した。そのため小学校の頃から毎日一緒に登校していたため今更辞められず、今も一緒に登校している。
「それな。早く夏終わらないかな~」
「でも夏終わったらサッム~イ冬がきちゃうよ?」
「丁度いい暖かさ...春が一年中続けばいいのにな」
「そうだよね~ちなみに魁人は夏と冬どっちが好きなの?」
「冬かな。ウィンタースポーツできるし寒いのは厚着すれば何とかなるしな」
「春香はどっちが好きなの?」
「私は春よ。なんだって名前に入ってるんだもん。」
「夏か冬か聞いてるのにそりゃね~だろ。」
「えへっ!正直に答えると夏かなぁ~。セミの鳴き声を聞きながら扇風機の風を浴びて食べるかき氷は美味しいんだもん。」
「あと魁人が暑さでやられて弱ってるのを見れるしね。」
「ん?なんか最後余計なこと言わなかったか...?」
「さぁ~どうでしょう。それよりも急ご、電車遅れちゃうよ~」
「あっおいまてよ~」
僕らは小走りで駅へ向かい、無事電車に乗った。通学時間ということもあり、車内は学生でいっぱいだ。そのまま学校の最寄り駅についた僕たちは学校に到着した。
「じゃあ魁人また昼休みにいつもの所で」
「おう!授業中寝るなよ」
「魁人じゃないんだから大丈夫だよ」
「俺も寝ねーよ!」
「ほんとかな~?じゃあまた」
クラスが違うので昼休みに一緒にご飯を食べる約束を取り付けつつ僕らは自分たちのクラスに入っていった。
「魁人!また未来のお嫁さんとラブラブ登校ですか~」
「否定はしないけどなんかその言い方悪意こもってないか?」
「いやいやあんな才色兼備の春香と付き合ってるのがまさかの魁人なんていまだに信じられないとはつゆにも思ってないぞ」
「いやそれ口に出してる時点で十二分に思ってるじゃねーかー!」
こんなたわいもない会話をしながらも僕たちはSHRの準備をする。春香はかなりの美人で学校の男子からかなり評判がいい。テレビに出ている女優やアイドルと同じかそれ以上といわれるくらいだ。そんな春香と付き合えているのも幼馴染の特権なのかもしれないと思いつつも幸せな日々を過ごしている。
「そういえば魁人。昨日の”おしおし”みたか??」
「いや見てない。そもそもテレビ見ないしな。」
「おしおしってなんだ?」
「そうだった。お前はそうゆうやつだったな。」
どうやら”おしおし”というのは略称であり、正式名称は”教えてあなたの推しアイドル”というらしい。視聴者が自分の推しアイドルについて番組に手紙かメールを送って実際にそのアイドルを呼ぶという企画らしい。この番組には新人から超人気アイドルまで様々な人たちが出ていおりアイドル界隈ではかなり有名な番組らしい。この番組に出ることがアイドルの登竜門の一つといわれるほど視聴者・アイドル双方から支持されている番組のようだ。
「なるほどな。でっその番組がどうした?」
「出演したアイドルの中に春香ちゃんに似た人がいたんだよ!」
「まじで!?」
「ちょっ魁人声大きいって」
いきなり立って大声を出してしまったので、クラスメイトがびっくりした様子でこちらを見ていた。
「すまん。で、春香に似た子っていうのは誰なんだ...?」
「ちょっと待ってくれ.....いたいたこの子だ。名前は....こはるちゃんっていうらしい。」
見せてもらった動画を見るに確かに顔や声が春香に似ている。しぐさもよそ行きの春香っぽい。にわかに信じられなかったが、春香がアイドルということに納得してしまっている自分もいた。
「確かに春香に似ている。」
「だろ。その様子だと春香ちゃんから何も聞いてないな。」
「そうだよ今知った。でも、本人に聞くまでは本当かわからない。この世には似てる人が三人いるっていうじゃん。」
「確かにな。ほんとにこの子が春香ちゃんなら何か魁人に隠す理由があるのかもしれない。最近何か春香ちゃんが変わったと思ったことはないか?」
「いや特に...」
「だろうな。今日もお昼一緒に食べるんだろ。ならその時にそれとなく探りを入れてみてくれ。」
「分かった。そうしてみる。もしかしたら春香の方から行ってくるかもしれないしな。」
「とりあえず昼休みまでは授業に集中しよう。」
「さすが切り替えの天才。俺にはできねぇよ。」
「落ちこぼれはこりごりだからな」
「どうゆう意味だ...?」
「まぁいい。このことは昼休みの状況しだいだ。そろそろSHRがはじまるぞ」
席に着くと同時にSHR開始のチャイムが流れると同時に席に着くよう言いながら先生が入ってきた。普段と何も変わらないチャイムが日常が変わっていく合図のようにも聞こえた。
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