野良猫『ミナミ』

かつてとある王国に、ミナミという名の野良猫がいた。彼女はその王国で市民に可愛がられながら暮らしており、自由気ままな日々を送っていた。


「おお、ミナミちゃん、今日も元気そうだね!」


ミナミはにこにこしながら魚屋のオーナーに近づき、彼の足元ですり寄った。


「ほら、これを食べな。新鮮な魚だよ。」


オーナーは魚の切り身をミナミに差し出し、彼女は喜んでそれを食べた。その後、ミナミは市場を歩き回り、他の市民たちとも交流していった。


「ミナミちゃん、こんにちわ!今日も可愛いわね。」


ミナミはパン屋のおばさんにも近寄り、彼女が差し出すパンくずを食べると、お礼に優しく鳴いた。そして、子供たちにも囲まれることがあり、彼らと楽しく遊んだ。


「ミナミちゃん、ぼくと遊んで!」


「私も!ミナミちゃん、一緒に遊ぼう!」


王国では、ミナミは家族のように大切にされていた。


ある日の午後、ミナミは王宮の広場で寛いでいた。そこへ、厳つい顔つきの兵士が近づいてきた。


「おい、この猫は何だ?王宮の広場でくつろいでいるとは、生意気な奴だ。」


ミナミは兵士の言葉に気づかず、彼の足元で遊んでいた。しかし、兵士はその様子に怒りを感じ、声を荒げた。


「何だ、まだ遊んでいるのか?この野良猫め!」


「お待ちください、兵士さん。この猫はミナミちゃんで、王国の皆に愛されているんです。彼女を追い出さないでください。」


「愛されているだと?こいつはただの野良猫だ。王宮の広場で遊んでいるなど、許されないことだ。」


「でも、ミナミちゃんはみんなに慕われていて……」


「たとえそうだとしても、この広場は王家と兵士たちの場所だ。こんな猫がいると、威厳が保てない。」


市民は無力感に襲われ、ミナミを庇う言葉が見つからなかった。兵士Aは、ミナミを無理やり抱え、王国の門へと連れて行った。


「これでお前は王国から追い出されることになる。二度と戻ってくるな。」


言い終えると、兵士Aはミナミを王国の外へ投げ出した。ミナミは戸惑いながらも、兵士の言葉が現実だと受け入れざるを得なかった。そして、彼女の新たな冒険が始まることとなった。


王国の外で新しい生活を始めたミナミだが、モンスターがうようよいるこの地での生活は決して安全とは言えなかった。ある日、彼女は草むらで休んでいると、突然、大きな影が現れた。


「にゃあ!?」


大きな影は恐ろしい姿をしたモンスターで、その目には凶暴さがにじんでいた。ミナミは身を縮めながら震えていた。


「ほう、おいしい餌が来たか。この野良猫、私の腹の中に入れてやろう。」


ミナミは、モンスターの言葉に怖気づき、必死で逃げることを決意した。彼女は猫らしい敏捷さでモンスターから逃げ出し、森へと向かった。


途中、ミナミは小さな川を渡り、岩場を駆け上がり、時には木の上にも逃げ込んだ。しかし、モンスターは執拗に追いかけてきた。


「にゃあ〜!!」


ついに、森の中へと逃げ込んだミナミ。森の奥深くへ進むと、モンスターの姿は見えなくなり、彼女はひとまず安堵した。


ミナミは疲れ果てて、森の木陰で休憩することにした。


彼女は長い間逃げ回っていたため、お腹がすごく空いていた。


「にゃあ〜」


ミナミは腹を空かせたまま、森の奥へと入っていくことを決意した。森の中には美味しそうな果実や、猫には食べられそうな小さな生き物がいた。しかし、どれも知らないものばかりで、食べても大丈夫なのか分からなかった。


「にゃあ〜?」


そんなミナミの前に、小さな妖精が現れた。


「ねえ、君はどこから来たの?腹が空いてるんだね。」


「にゃあ」


「食べ物を探してるんだけど、どれが食べられるかわからないのね。」


妖精は優しく微笑んで言った。


「大丈夫、私が教えてあげる。この森には、美味しい果実や、君が食べられる小さな生き物がいるよ。」


妖精はミナミを連れて、森の中で食べられる果実や小さな生き物がいる場所を教えてくれた。ミナミは妖精のおかげで、お腹を満たすことができた。


妖精の助けでお腹を満たしたミナミは、森での生活に自信がついてきた。妖精たちと一緒に過ごすうちに、彼女は森の知識や生き物たちとのコミュニケーションの仕方を学んでいった。


ある日、ミナミは森の奥で、魔法使いの老人と出会った。老人は白い髭をたくわえ、優しそうな目をしていた。


「おや、こんなところで一匹の猫に出会うなんて珍しいことだね。君はどこから来たのかな?」


「にゃあ」


魔法使いはミナミの話を聞いて、彼女に同情した。


「元々王国に住んでて。兵士に追い出されてしまって、ここで暮らしているのかい。そんな過酷な運命をたどってしまったのか。私はこの森の魔法使いでね、ここで一緒に暮らさないか?」


ミナミは迷わず魔法使いの誘いを受け入れた。彼女は魔法使いの家で、暖かいベッドと美味しい食事が提供され、幸せな生活を送ることができた。魔法使いと共に過ごすうちに、ミナミは魔法の知識も少しずつ身につけていった。


そして、森での冒険や魔法使いとの日々を経て、ミナミはただの野良猫ではなく、森の中で尊敬される魔法使いの猫へと成長していった。王国での過去を乗り越え、新しい家族と共に幸せな日々を過ごすことができたのであった。


めでたしめでたし

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