第4話 確かにあいつは
お昼休み
私はクラスの女子達や陽キャグループ、はたまた他のクラスに出向いたり、二年生に進級してからはだいたいそんな感じで、誰かと一緒に賑やかに過ごしていた
今日もクラスで私の周りに人が集まってきたから、みんなで一緒にお弁当を食べながらお喋りしていたんだけど、いつも隣にいるあいつの席には、今は違う男子が座って楽しそうに話している
(あれ?如月は…どこに行ったの?)
そういえば、今まで気にしたことなんてなかった。普段こうして、私の周りが賑やかな時、如月はどこにいるんだろう
そう思って、なんとなくあいつの席を見ていたら、
「三条さん?どうしたの?僕の顔に何か付いてる?そんなに見つめられると照れるよ」
「あら、ごめんなさい…」
「でも、三条さんならいいよ?」
「そ、そう?…あはは…」
この男は同じクラスの
私達が女子の四天王なら、彼も男子の中でそう呼ばれてもおかしくないイケメン…
…なのだが、
「今度一之瀬さんも誘って、3人でどこか出かけない?」
「ああ、ずるい、私達も連れてってよ~」
「そうよ、今度は私も」
「あはは、そうだね。みんなで行こうか」
まあ、分かりやすく女子にモテる。
そして本人もそれを自覚していて、男子の前では少しそれを鼻にかけるふしがあり、おそらく男子達にはあまりよく思われていない
その証拠に、こうして私達女子の中に一人だけ男で混ざってて、それをクラスの男子達は面白くなさそうにチラ見している
でもルックスは良くて運動も出来る。しかも四方堂先輩と同じで、この神楽坂くんの父親はこの学園の理事の中の一人で、それなりに影響力もあるから、みんな面白くなくても見ないフリをしているといったところかな
私は女子だから別に関係ないし、って今までは思ってた
「ところで、この前一之瀬さんが来てた時、如月くんのこと、どこか行こうって誘ってなかった?あれは何かの間違いだよね?僕の耳がおかしかったのかな?」
「ははは」と楽しげに笑いながら言う彼に、なぜか気分が悪くなる
「そういえば、この席、彼のだっけ?」
そう言ってペシペシと机を叩き、「まあ、どうでもいいけどね」と、また楽しそうに笑ってるのを見て、嫌悪感に包まれる
「そうよ。だから何?」
「え…」
思わず口にしちゃったけど、自分で思ってた以上に声のトーンが低くて、みんな少し驚いて戸惑っている
「ご、ごめんなさい…。でも、本人がいないところで、そういうのってどうかと思って」
だいぶ取り繕ってそう言ったんだけど、周りの反応は私が予想したものとは違った
「へえ、三条さん優しいんだね」
「いつもぼっちだからせっかく三条さんが構ってくれてるっていうのに、いつも素っ気ないし、何様なんだろ」
「本当そうよね。陰キャなのに」
「三条さんも別に相手しなくてよくない?」
え?待って?クラスの中では、如月と私のやり取りって、そんなふうに見られてたの?
「そうだよ。三条さんは無理に彼のような男子の相手しなくても、僕達がいるじゃない」
すかさず追い討ちのように言葉を並べる神楽坂くんに、私は何も言えなくなる
如月は…確かにあいつは地味で無愛想で、いつもこっそりラノベ読んでる陰キャだ。
でも、人見知りしてあまり話せないっていうだけで、危ないところを助けてくれたり、私に気を使って、もう話しかけてくれなくてもいいよ、って言うような、そんな…そんなやつなんだ…
そう思ったら、あの時の少し悲しそうで、でも優しい目をした如月の顔が脳裏に浮かぶ
私は周囲に「あはは…」と愛想笑いだけして何も言わず、この日のお昼はやり過ごした
五限目が始まる前には、いつの間にか如月は席に着いて次の教科の用意をしていた
私はついさっきまで一緒だったあの人達の方をぼんやり眺める。
そして、彼らに何も言えなかった自分に、少しだけ腹が立った
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