04

《金の髪に、より一層鮮やかな紫の瞳パープルアイ…この世ならぬ美しさ、というやつだな》


「ふうん…まあ、美人なんじゃない。そこだけは誉めてあげる…」


《気に入ったようで良かったよ。だが…それについて、懸念せねばならぬ問題がひとつ…》


「は、問題?」


再び見遣った神は、若干顔色が悪いようだった。


《ああ。この世界では、金の髪に紫の目を持つ人間は稀少でな…ある一部の少数民族が同じ特徴を持っていた》


「ちょっと待って…『持っていた』ってことは、まさか…その少数民族って、もう現存してないってこと?!」


《彼らは“オルゴン”という狩猟戦闘民族で、普通の人間より頑丈な肉体と精神を持つが故に奴隷商人に狩られ尽くしてしまった…残念ながら、現在一族単位での村はなく…人目を避けて隠遁生活を送るものが殆どなのだ》


「そう…。じゃあ、私もこれからは絶滅危惧種ってことなのね…」


しんみりした空気が流れる中、神は元気づける意図と諸々の謝罪も込めて、しおらしいリサを抱き締めた。


《でも、安心するといいよ。おまえを拾った男がいるだろう?》


こくりと頷くリサを確認しながら、神はさらに続ける。


《彼もオルゴンだ。髪を赤く染めつけているが、同じ種族だよ。色々助けてもらうといい…。苦労を掛けてすまないね、できる限りの加護を与えるから、そんな悲しい顔はおよし…》


(くっそう…なんかイケメンでムカつく!…中身は単なる残念野郎の癖に。っていうか、ベタベタ触り過ぎだろコイツ。ちょっと調子乗ってんじゃないの?!)


怒りにわななくリサに気付いていない神は、更に顔を近付ける。限界寸前まで神のどアップが近付いた時、ついに再びリサの堪忍袋が破裂した。


「調子にのんな、居眠りヘタレ野郎が!!」


───ドゴォッ!!


《ぶふぉっ!? さ…流石純血のオルゴンの女は…キツイ》


ばたん!と泡を噴いて大の字に倒れる神。

ノックダウンしたせいか、視界というか空間が歪みだす。


「は? なによ、純血って…」


殴り倒してから不味いと気付くも、時すでに遅し。完全にダウンしてしまった彼から、真偽を聞くことはできなくなってしまった。


「な、なんなのよ…なにが云いたかったの?」 


ようやく戻れるのかという安心と、なにも知らない世界に放り出された不安が綯交ぜになって、リサの胸の内に流れ込んでくる。

昏倒する神に悪態をついて、リサはゆっくりと夢から醒めた。

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