03
「うあっ!?」
周囲の通行人から、甲高い悲鳴が湧き起こるけれど、誰一人動こうとはせず、限りなく他人事。
バランスを崩した私の身体は、踊り場のない急斜面を後ろ向きに落下していく。
客観的には一瞬のことかも知れないけれど、真っ逆さまに落下する私からはそれが永遠に続くスローモーションのように見えた。
まばらに歩く通行人がいるだけで、後ろには誰もいない。
(嗚呼、誰もがただ見ているだけ…親には疎まれ、会社では妬まれ…ああ、私ってこんな惨めに終わるんだ…)
地面に叩きつけられる瞬間、私を突きとばした女性が脇目も振らず地下鉄に滑り込んでいくのが網膜を掠った一瞬、胸にどす黒い穴が空いたような気分になって更に絶望した。
…これは、ない。
非道すぎる。
なんてツイてないのだろう。
カレンダーなど持っていないが…まさか、今日は仏滅だったのだろうか?
それになんて女だ、他人を階段から突き落としておいて、振り向きもしないなんて。
(他人1人の命を犠牲にしてまでも、そんなに我が身が可愛いかよ?デートだか仕事だか知らないが、死んだら末代まで呪ってやるからな、憶えとけ!)
なにごともなく、今日で26歳を迎えるハズだったのに…まさか今日が人生最後の26歳になるだなんて、あんまりだ。
不運のどん底に叩き落とした女に向けて毒づいたのを最後に、私の意識はそこでブラックアウトした。
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