第2話
あの婚約話を盗み聞いた、すぐ後でキャロラインの父は慌てて帰宅した。恐らくロビンの家の使用人に聞いたのだろう。泣いてるのがバレたら不味いと考え、目の腫れが治まるまでは寝たフリをしてやり過ごした。
キャロラインは、その後もベッドから出る気にならず、嘘の体調不良を訴え、一週間ほどベッドの住人となっていた。両親も、妹も、使用人も、健康優良児のキャロラインが臥せっていることで落ち着かず、それはそれは心配してくれていた。
(私が拗ねていただけだったのね。)
ただの仮病でベッドから出てこないキャロラインを、屋敷中の皆が過保護に看病してくれている。幼い頃は、妹ばかり構っているように見えて、自分は後回しのように思えて悲しかった。妹が寝込む度に、ロビンの部屋へ避難していた。だが、家族も使用人も、自分への愛が確かにあることを、この短い期間で充分すぎる程に感じていた。
(ロビン•••。)
ロビンのことを思い出す度に涙が迫り上がってしまう。こんなに長いこと会わないのは初めてだった。
(会いたい。)
だが、ロビンはそうでは無いだろう。煩わしい幼馴染が来なくなって清々しているはずだ。そう思うだけで、悲しくて息苦しくなる。
ロビンは幼い頃から、キャロラインのことを煩わしく思っていたのかもしれない。子どもの頃から、辛いことがある度にロビンに泣き付いていた。それに、ロビンは読書が好きなのに、いくら静かに過ごしていると言っても誰かが部屋にいれば気が散っただろう。キャロラインは、ロビンの傍が居心地が良すぎて、ロビンが迷惑しているなんて夢にも思わなかった。
(ロビンに謝りたい。)
だが、謝るのもロビンに迷惑だろう。あの冷たい声でキャロラインを拒否していたことを考えると、近付かない方が良い。ロビン無しで生きていく方法は、全く分からないけれど、それでもこれ以上嫌われたくない、その思いだけだった。
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