第5話 ロボットオタクと、さがしに行かないか

「行ってらっしゃーい!」


「気を付けてねー」


「必ず無事帰って来てー」


「フェー! デュー、ツィー! アンタ達何があっても、彼を守りなさいよーっ!」


 たくさんの女子達が、盛大にオレ達を見送ってくれた。

 まるで、人気アイドルに群がるファン並の盛り上がりだ。

 その騒ぎに、フェーが苦笑する。


「はいはい。全く、みんな浮かれてるわねぇ」


 実は巨人の国へ行くと決まった時、女子達は我も我もと、行きたがったのだが。


「ダメよ。そんな大勢で行ったら、危ないじゃない」


 と、フェーが一蹴した。

 ただし、何かあった時の要員として、フェーの他に二名を選出することになった。

 それはそれは壮大な、じゃんけん大会が繰り広げられた。

 そして十数分にも及ぶじゃんけん大会で、勝ち上がった女子二名が決定した。


「わたくし、デューと申します。何とぞ、よろしくお願いしますね」


 ひとりは、はにかみながらお辞儀をする、みつあみの大人しそうな女子、デュー。そして、もうひとりはツインテールの典型的なツンデレ女子ツィーだ。


「わ、わたしは、ツィーよ。教えて上げるから、一度で覚えなさいっ! あ、あんた達じゃ、帰って来られそうにないから、仕方ないからついていって上げるんだからねっ!」


 ツィーは、勝気に「ふんっ」と鼻を鳴らすが。

 ここまで勝ち上がってきたってことは、相当行きたかったってことが、見え見えなんだけどな。

 そんなツィーの発言に、フェーが小さく笑う。


「大丈夫よ。何もなければ、すぐ帰ってくるから」


「『何もなければ』って、そんなに危険なところなのか?」


 オレが聞き返すと、フェーはニヤリと意味深長に笑った。


「うわっ、何だその顔」


「まぁ、行けば分かるわよ」


 そんなこんなで、フェーとデューとツィーとオレの四人で、巨人の国へ行くことになった。


 広い空の下、二台のバイクは走る。

 ツッコミどころ満載で、どこからツッコめばいいのかわからない。


「緑だ」


 空を見上げて、ぼそりと呟いた。

 さっきまで青かった空が、何故か緑色に変化していた。

 オレの前に座ったフェーが、小さく笑う。


「なぁに? そんなに珍しい?」


「うん。青空や夕焼け空なら見たことあるけど、緑色の空なんて初めて見た。虹は七色なんだから、緑もあるっちゃあるんだろうけど。でも、何だか変な感じだ」


「そう? あたしは見慣れているけどね」


 フェーがおかしそうに笑ったので、ちょっと悔しい。


「まぁ、ここに住んでいるなら、緑の空なんて当たり前なんだろうけどさっ」


 東京では無理だけど、「白夜」という現象が見られる北極や南極の近くでは、空が緑色に見えることがあるらしい。

 ここも、そういう場所なんだろうか?


 そしてフェーが「バイク」と呼んだものは、馬並みにデカいカラスだった。

 地方によって、物の名前は色々変わるっていうけど。

 何をどうしたら、カラスがこんなにデッカくなるんだ?


 カラスの首に巻かれた手綱をフェーがにぎっていて、フェーの腰にオレがつかまっている。

 自転車に、ふたり乗りしている状態と同じだ。

 横にいるカラスにも、同じようにツィーとシューが乗っている。


 生地の薄いベールのようなワンピースのせいで、フェーの体が透けて見えている。

 しかも、ノーブラノーパン。

 裸の背中にしがみ付いているようで、妙にエロい。

 細いウエストの上には「おバスト様」が!

 そして下には「おヒップ様」がいらっしゃるワケで!

 上に、いやむしろ下に手が滑った時には、ああっ、そりゃもう大変なことにっ!

 何が大変って……。

 はっ! 危ない危ない……エロ妄想に突入するところだった。


 妄想を振り払うように、頭を横に振って、フェーに話しかける。


「これがバイク?」


「見たことないの?」


「ううん。でも、羽があるのに飛ばないカラスは、初めて見た」


「カラス?」


「東京では、コイツのことをカラスって呼ぶんだよ」


「へぇ。そうなの?」


 それにしてもカラスは、あまり乗り心地の良い乗り物ではない。

 羽がチクチクするし、むちゃくちゃ揺れる。

 そもそも、カラスに乗ったことがある人も、そういないだろう。

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