第3話 ロボットオタク、ホワッツ・ユー
混乱しているオレをよそに、フェーが手を上げた女子を指名する。
「次はー。じゃあ、デュー」
「何で、ここにいるの?」
ツインテールの女子は、不機嫌そうに腕組みをしながら、オレを見つめてきた。
何で怒っているんだろう?
とりあえず謝る。
「ご、ごめん。何でここにいるのか、オレにも分からないんだ」
「自分の意思で来たんじゃないって、言いたいの?」
「うん、そうなんだ」
「そう。だったら仕方ないわね」
ツインテールの女子は「ふんっ」と、鼻を鳴らして座った。
なんかわからないけど、納得してもらえたのかな?
「次、ポォー」
「はぁい!」
指名された女子は、ポニーテールを揺らしながら、元気良く返事をして立ち上がる。
「初めて見た時から、決めてました! 結婚して下さいっ!」
「結婚っ?」
突然の告白に、オレの頭の中は真っ白になった。
オレはまだ中学一年生で、結婚なんて出来る年じゃない。
それに、まだ働いてないから金もないし。
オレが戸惑っている間に、女子達が次々と口を開き始める。
「だったらあたしもー!」
「結婚してー!」
「私も結婚したーい!」
「アタシもーっ!」
ひとり目を皮切りに、告白合戦が始まる。
「何だ、この状況?」
さっきの落ち着きはどこへやら、再び騒がしくなった。
するとフェーが、みんなをなだめるように言う。
「はいはい、わかったわかった。じゃあ、みんなで結婚すればいいじゃない」
「何で、そうなるっ?」
思わずツッコむと、フェーは至極当然といった顔をする。
「あら、一夫多妻なんて普通じゃない」
「そうなんだ? それはなかなか、
オレが驚いていると、フェーが笑みを浮かべながら説明してくれる。
「さっき言いそびれたんだけどね。あたし達の種族は、基本女の子でね。男の子が、なかなか生まれないのよ。だから、たまに男の子が生まれたりすると、お祭り騒ぎなの。生まれた直後に、結婚の予約が
「結婚の予約?」
「そうよ」
どうやら、
「ここじゃ、当たり前の光景なんだけどね」
「へぇ、そうなんだ?」
聞き返すと、フェーが肩を軽くすくめて笑った。
なるほど、普段モテないオレがモテモテなのは、そういう理由があったのか。
「はい」
今度は、オレが手を上げた。
フェーが意外そうに瞬きする。
「何? 君も質問があるの?」
「うん。ここはどこなのか、教えて欲しいんだけど」
「ここは、妖精と巨人が住まう島」
「妖精と巨人?」
全く予想していなかった答えが返ってきた。
当然とばかりに、頷くフェーに聞く。
「フェーは、巨人なの?」
「あんなのと、一緒にして欲しくないわね」
フェーが不機嫌そうに唇を尖らせたので、オレは慌てて訂正する。
「じゃ、妖精?」
「見れば分かるでしょ?」
「見ても分かんないから、聞いたんだよ。それにしても、だいぶイメージが違うなぁ」
「イメージ?」
「なぁに、イメージって?」
女子達が首を傾げたので、オレはひとつ頷いて説明する。
「オレが知ってる妖精は、体が手の平くらいにちっちゃくって、虫みたいな羽が生えているんだけど……」
オレの話を聞くなり、女子達が一斉におかしそうにくすくすと笑い出す。
「なぁに、それー?」
「虫の羽って、変じゃない?」
「ヘーンっ」
女子達の容姿は、オレのクラスの女子達と何ら変わらない。
服装がアレだけど、小さくないし羽も生えてない。
考えてみれば、オレがよく知る妖精は、誰かが勝手に考えた想像上の生き物に過ぎない。
現実と食い違っていても、おかしくない。
言われてみれば、哺乳類に昆虫の羽が生えているって、確かに変だ。
それにしても、「妖精」という名の種族が現実にいるなんて、初めて聞いたぞ。
だったら、「巨人(プロ野球団ではない)」も、全然違うものに違いない。
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