シリアルキラー
懋助零
第1話 私はシリアルキラー。
「バァンッ」
無駄に広いホールに、銃声だけが響き渡る。
私の横には、なんの感情も抱いていないような顔の愛莉珠が、ナイフを片手に立っている。
もちろん、私も同様だが。
2人で手際よく死体の隠蔽、後片付けをし、今は服に着いてしまった返り血を拭いている。
「今日は、返り血浴びちゃったんだね。」
「うん、ちょっと本調子じゃないかも。」
最近、自分が殺しの仕事をする時だけ感情が無くなる事に、少し疑問を覚えていた。
「お姉ちゃん、余計な事は考えちゃいけないよ。ね?」
「そうね、私、ちょっとおかしかったみたい。」
『私たちの幸せを守るために。』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ピピピピ
「ねぇ、お姉ちゃん!!朝!起きてー!!」
妹にほっぺをぺちんと叩かれ、眠りから覚めた。
「起きた、起きたから…」
「朝ごはんできてるって!下で待ってるね〜!」
妹は軽い足取りで部屋を出ていった。まだ、鼻歌が聞こえる。
(うーん、朝から元気だよなぁ、)
そんなことを思いながら、起こしたくない体を起こし、ベットから降りた。
歯を磨き、顔を洗い、髪の毛をセットする。
私は数年前から髪の毛を伸ばし続けている為、今は背中の真ん中辺りまでのロングヘアだ。
でも、邪魔だから、ポニーテールに結んだ。
まだ眠気が覚めてない中で、階段をのしのしと降りた。踊り場辺りで、焼き立てのパンのいい匂いが漂ってくる。
その時、愛莉珠がドアを開けて部屋から出てきた。
「あ、お姉ちゃん降りてきた。今日はクロワッサンだってー!!やったね!」
愛莉珠は、手を前で合わせて、ボブのふわふわの髪を揺らしながら小さく跳ねた。
私から見ても、愛莉珠は可愛い。さぞモテるだろう。
丸くてくりくりのタレ目に、色素の薄い黒目。長いまつ毛と小さな鼻に、ふっくらとした赤い唇。
誰が見ても、「かわいい」という顔の典型だ。
私は二重といえどつり目で、鼻も小さければ唇も薄い。…それに、私はオッドアイだ。
いつだって、チヤホヤされるのは妹の愛莉珠だ。
まぁ、最近はそんな愛莉珠を妬ましく思うのではなく、誇らしく思っているのだが。
私は愛莉珠に着いていき、部屋に入った。
お母さんが、エプロン姿で先に席に座っていた。
「ごめんね、お母さん、待たせちゃった。」
「いいのよ、さ、食べましょ!」
私の家庭は母子家庭で、決して裕福では無い中、お母さんは頑張って働いてくれている。
クロワッサンなんて、贅沢な朝ごはんだ。
これも、お母さんの努力のおかげ、精一杯の感謝を伝えることしか、まだ私にはできないから。
ご飯を食べ終わったところで、私と愛莉珠は玄関で靴を履き、ドアを開ける。
『行ってきます!!』
…そう、ここまでは、いつも通りだった。
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