ガチ恋編

第18-1話 新学年

 俺は蔦原に付きっきりで勉強を教えてもらい、無事追試を乗り越えることに成功した。


 付きっきりであったにも関わらずギリギリの成績だったことに関しては蔦原に申し訳ないと思うが、進級できたのだからよしとしよう。


 そして今日から俺たちは晴れて2年生になる。


 蔦原にゲームセンターで出会ったあの日の俺は、これほどまでに人生が好転するとは思っていなかった。


 まあこれだけ上手く人生が進んでいるのはただの偶然ではなく、自分が頑張ったからというのもあるだろうし、そこは素直に自分を褒めてやりたい。


 そして今日は残り1年の高校生活を楽しめるか楽しめないかが決まる一大イベント、クラス替えの発表がある日だ。


 俺は蔦原と一緒に登校しており、俺たちの会話はクラス替えの話題で持ちきりだった。


「クラス替え嫌だなぁ……。せっかく仲良くなったみんなと別のクラスになっちゃうなんて」

「まあ流石に誰か1人は別のクラスになったりするだろうな」


 俺たちのグループは俺と蔦原、臼井と和泉、そして賀川と金田の6人で構成されている。


 できれば全員同じクラスになりたいが、流石に6人が6人同じクラスになることはないだろう。


「やっぱりそうだよね〜……。なんでクラス替えってする必要があるんだろう」

「今の俺たちからしてみれば今のクラスに満足してるからそう思うわな。でもまっ、友達と離れ離れになったりしてる奴からしたら今のクラスには納得できてないだろうし、そっち目線で考えれば逆に救済措置だろうな」

「それもそうだな。はぁ、憂鬱だな〜。せめて紅とだけは同じクラスがいいなぁ」

「--へ?」


 蔦原は息を吐くように、俺とだけは同じクラスがいいと言った。

 

 冷静になって考えればその発言の真意は、信頼度100%である俺が同じクラスにいた方が心強い、というだけなのだろうが、その真意とは違う意味の解釈をしてしまった俺の顔はみるみるうちに温度を上げた。


「え、い、いや違うよ⁉︎ 私たち信頼度100%だし⁉︎ 他の誰かと同じクラスになるよりもせめて紅とだけ同じクラスになれたら安心だなって思っただけで、別に他意はないからね⁉︎」


 そこまで必死になって否定されると流石に心が痛むな。


「あ、ああ。そうだよな。俺も確かに蔦原と同じクラスになれるのが1番安心するわ」

「うんうんそうなんだよ。もちろん他の誰と同じクラスになっても嬉しいんだけどね! ……ほら、学校まで走るよ!」

「な、なんで走るんだよそこまで急ぐ必要あるか⁉︎」

「つべこべ言わずほらいくよ!」


その真意は分からないが、蔦原が急に走り出したのは、俺に紅潮した表情を見られたくなかったからなのではないだろうか。

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