第16話 緋灯とは

しばしの抱擁のあと、僕らはソファに腰かけていた。

「さてと、そろそろ授業でもしましょうか」

「「はい、お願いします」」

「じゃあ、まずは精霊に関しての知識は大丈夫よね?」

精霊。この世界には、様々な精霊がいる。

火、風、水、木、雷、光、闇、影などさまざまだ。

「大丈夫そうね、この魔導書には精霊魔法に関して記述がされているわ」

「「精霊魔法」」

僕は、目を輝かせながら前のめりになっていた。

隣を見るとリサもだった。

「あらあら、同じ反応なのね。

さて、我が家の守護精霊はわかるかしら」

「「火」」

「そう、火の精霊。でもね、それだけじゃないの。わかるかしら?」

「「光」」

「そうよ、火と光の精霊が守護精霊ね」

なるほど、あの魔導書は「火の精霊魔法」が書かれているのか。

つまり、あそこにあった10冊の魔導書はそれぞれの精霊魔法が書かれているってことか。

「私たちイグネシア家は、「緋灯ひとう」と呼ばれているわ。

灯火は導き手。私たちは、先頭に立って人々を導くことになるわ。

イグネシア家の家系は、みな赤い瞳を持っているの。

でも、いまでは私達4人しか赤い瞳はいないのよ。

だから、同族婚と近親婚が許されているの」

濃い血と薄まる血か。

父上には、他にも子供はいる。

だが、正妻の子も瞳の色は違うということだろう。

「二人は気づいたようね。シンくん、貴方がリクの後を継ぐのよ。

きっと、経営なんかの勉強もこれからは増えるでしょう。

あら、脱線しちゃったわね。

さて、この魔導書を読みには私たちのこの目が必要なの。

精霊視を・・・あれ?できるかしら」

精霊視。う~ん、知らないな。

僕は、リナを見る。

彼女も首を傾げていた。

「ふふ、よかったわ。わたしにも教えられることがあって。

二人は、知識はあっても技術が伴っていないのね」

母上は、僕とリナの視覚を手で遮った。

その手は、とても暖かかった。

春の日差しの様に。

「二人共きっと驚くわよ。さあ、もうすぐね」

母上が、手を離したとき世界の色彩は変わった。

より鮮やかに。

柔らかな光が部屋いっぱいにみえた。

隣にいるリナも驚いている。

「兄さん、すごいね」

「ああ、こんなに言ったんだな。暖かい光だ」

「あらあら、これが私たちが見てる世界よ。

ここには、火と光の精霊しかいないけど」

僕らは、心を奪われていた。

綺麗な世界だ。

「さて、じゃあ読んでみましょうか」

母上は、僕らに魔導書を差し出してきた。

そして、二人で一緒に読んでいく。


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