どうして君はそこにいる?!

くろぶちサビイ

「今朝ね、マンモスウツボガメラが荒川に現れたって、テレビのニュースに出たの」

「ああ、知ってるよ」

「そのニュースでね、河川敷に人がいっぱい集まってて、そうしたらその中に…」

「その中に?」

「クロワッパンダのミニマスコットをカバンに付けてる人がいて!」

「クロワッパンダ?…。ああ、それって…」

「良かった、覚えててくれた?!私がバイトしてたパン屋のキャラクター!もう潰れちゃってど。懐かしくて、つい、SNSにクロワッパンダのこと書いちゃったの。テレビでミニマスコット付けてた人がいたって。そうしたら、なんと昔のバイト仲間から返信が来たの!」

「何て?」

「そのテレビに映ってた人、私かもって。その人、荒川にマンモスウツボガメラを見に行った時に、テレビ局のカメラも来てたから、もしかしたら映ったのかもって。

テレビには後ろ姿だけしか映ってなかったから分からなかったんだけど」

「それで?」

「すぐに荒川に行ったの。その人に会えるかもしれないって思って。でも、もういなかった」

「そりゃそうだろうね」

「とても悲しくて、その人のSNSに連絡したの。荒川にもういないのって。そうしたら、ごめんって謝ってくれて…」

「うん」

「今どこにいるのって聞いたら、東京駅って。東京駅って聞いたらさ、そこに行ったら会えるんじゃないかって、つい考えちゃって…」

「行ったの?」

「行ったよ。でも、私が着いた時には、その人はもう東京駅にはいなかった。向こうも移動してるみたいで」

「それって、もしかして…」

「うん、追いかけた。行き先は羽田空港」

「羽田空港」

「向こうはのんびり羽田空港に向かってて、こっちは急いで後を追ってるから、追い付けそうな感じだったの。あ、相手には追いかけてることは言ってない。びっくりさせようと思って」

「それで…」

「あと一歩のところで追いつけなかった。それがなんか妙に悔しくてさ。ここで追いかけるのをやめる訳にはいかないと思っちゃったのよね~」

「で、今どこにいるの」

「私ってさ、超ズボラでしょ。鞄の中身も滅多に整理しないから、前に使ったものがそのまま今でもバッグに入ってたりするわけ。で、鞄の中にあったのよ。パスポート」

「それってつまり…」

「うん。だから、国際電話は料金が高いからもう切るね。こうなった経緯は丁寧に説明したと自分でも思ってる。だから…」

「分かったよ。怒りゃしないよ…」

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