第62話 やはり遥はバパが大好き
階段をいつもより時間をかけて駆け降りると、玄関にはすでにパパの姿がなくなっていた。
「どこいったんだろう……」
そう思いながら洗面所を覗いてみたけれど、パパの姿はそこにもなかった。
トイレの鍵も閉まってないし、自分の部屋にいるのかな……?
そしてパパの部屋の前まで来て、上半身を少し屈ませる。こうすることによって部屋のドアの隙間からその部屋の明かりがついているか、ついていないのかがわかるのだ。
「もう、何やってんのよ」
突然の声にひっ、と身体を震わせてから、顔を横に向ける。
「ママ……」
正直、こんな気持ち悪いことをしてるところを見られたくなかった。
「ノックしてみたら?」
ママが提案してくれたけど、私はすぐに首を横にぷるぷると振る。
「寝てるかもしれないから……」
「そのぐらい大丈夫よ」
でも仮に寝ていたとしたら、帰ってきて間もないしまだ浅い睡眠の最中の可能性がある。そう考えると、私が部屋をノックしたことによってパパが起きてしまうかもしれない。
「パパのことになるとすぐ神経質になるんだから」
「からかいすぎですぅー!」
ママだって、私が学校から帰ってきてから私に向かってパパパパって何回もいいすぎだからね?
「まあ、その辺はあなたに任せるわ」
それだけ言って、ママは洗面所に向かっていってしまった。
むう。なんでそうやって人任せにするかなー。
結局その日はパパが起きてくるよりも私が先に寝てしまったため、パパに告白をすることはできなかった。
※※
土日を挟んで月曜日。家にパパはずっといたけれど、告白はまだできていなかった。
好きな人に「好き」というたった二文字の言葉を伝えるのがここまで大変だったなんて思ってもみなかった。
教室に入ると、咲島が心配そうな顔をしながら私のもとに駆け寄ってきた。
「ちょっと……顔色よくなさすぎるけど……」
「大丈夫だよ。ママにも今朝言われたけど、私はすごく元気だから」
それでも「本当に?」と何度も訊いてくるのでその度に「うん、大丈夫だよ」と苦笑を交えつつ答えた。
その時、後ろから何度も視線を感じたので見てみたら、沢西がこちらを見ていた。しかしすぐに視線が外される。
告白の結果が気になっているのであろうことはすぐに予想ができた。
もう少し待っててほしい、と心の中で呟く。
××
帰りのホームルームが終わり、一応は仲直りをしたと──少なくとも私は思っている仲である、沙也加をいつもの場所で待っていた。
しかしそんな私の考えとは裏腹に、二、三〇分待っても沙也加の姿が見えることはなかった。
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