第54話 姉弟
──ボールが私のところに向かってくる。
そう思っていても、身体が、体育館の床に張りついているかのようにまったくといっていいほどいうことを聞いてくれない。
やばい、終わっ……てない!
その想いが届いたのか、ボールが私の首のすぐ横を突き抜けた。
「……」
こ、怖かった……。
思わず身体が後ろに仰け反り、そのまま尻もちをついてしまう。
「
「う、うん……」
そう言って立ちあがろうとするものの、腰が抜けてしまって立ち上がれない。
「とりあえず、俺が守るぜ」
「ありがとう……」
そう言ったあとに、私は何とか立ち上がることに成功する。
「あっ……!」
しかし、その分相手の内野にパスされたボールが、ノールックを先程から投げている男の子によって放たれた。
そのボールが
「当たってしまいましたわ……」
そう言って当たってしまった姫川さんがしょんぼり顔を見せながらも外野へと駆け足で向かっていった。
その後も互いのチームのラリーが続いていく。
それにしても、
相手チームは沢西にひたすらボールを投げていき、沢西はそのボールをひたすら避けたりキャッチしたり、という展開が私の目の前では行われている。
このままだと沢西が当たっちゃう……!
私にも出来ることはないか、と脳裏で過去の記憶をたどる。
『お姉ちゃん、そんなんじゃボールキャッチできないよ!』
『えっ、こうじゃダメなの?』
やれやれ、と言わんばかりに弟の風くんが私の元に歩いてくる。
『ボールは手のひら同士で挟むんじゃなくて、こうやって腰を低くして身体の中心に飛んできたものを両腕で抱え込むようにしてキャッチする──おっけぃ?』
自分の身体で再現しながら、私に見せてくれた。
そしてそれ以外のボールはキャッチしようとしちゃダメ。
「
沢西が私を呼んだ。
今度こそ……。
腰を落とし、飛んできたボールを待ち構える。
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