第13話 遥の弟、風くんに彼女!?
「え、ホントにいるの?」
風くんに彼女!? まあ、風くんは姉の私から見てもかなりカッコいいと思うし。そのうえ、たまに弟ならではの可愛さが炸裂する。……って今の私って俗にいう親──姉バカになっている気がする。
「あ、いや。別にいねぇし」
またまたぁー。お姉ちゃんにまで隠さなくてもいいのに。ねー?
「ねえねえ! その女の子の写真とか持ってないの? あ、どうせならツーショットとか見たいな~」
バンっ。
あーあ、閉められちゃった。
それにしても、風くんに彼女かー。やっぱり私とは違ってとっても可愛い子なんだろうなー。
※※
翌日。
突然、家のインターフォンが鳴った。
『遥ー! 来たぞー!』
インターフォンごしの沙也加の声に、今開ける、という旨を伝えて玄関まで走る。
玄関まで着くと、私はいつも宅配便が来たときにするのと同じようにビーチサンダルにすばやく足を通し、扉を開けた。
「おはよう沙也加!」
「うぃーっす! ……おっ! 遥の新たな一面を発見しましたぞ。じゅるり」
沙也加の視線から見るに、おそらく私がビーチサンダルを履くことに関して言っているんだと思う。あと、最後の『じゅるり』はやめてほしい。
「まだパパたちが準備終わってないみたいだから、私の部屋にでも上がって待ってる?」
すると、沙也加の表情が一瞬にしてきらきらと輝きだした。
「いいのかー!?」
その沙也加の前のめりすぎるテンションに私はやや気圧されながらも、
「う、うん。いいよ」
私がそう返事をすると、沙也加は今にも飛び上がりそうな勢いで、
「よっしゃ――! 久々の遥の部屋だぜ――!」
とテンションが跳ね上がっているのが明らかに見て取れた。
「もう。沙也加ったら……」
と半分呆れつつも、そんな沙也加に嬉しくなってしまう自分もいた。
※※
「遥の部屋っていつ来ても綺麗だよなー」
「そう? あ。でも、沙也加ってそもそもそんなに私の部屋に上がらなくない?」
「あっ!」
沙也加が急に大声を出したので「え、なに!?」と思っていると、
「言っちゃいましたねぇー、遥さん。そんなデリカシーのない遥さんを世間はー許しちゃあーくれませんよー?」
「えっ。私、そんなにデリカシーのないこと言った?」
と沙也加に訝しむ視線を送っていると、
「言った言った超言ってたぜ! なぜかって?」
と言い、今度は急に私を諭すような表情に変わり、
「だってさ。あたしにとって、遥の部屋に上がる回数ってのはさ、何よりもあたしの価値を上げてくれるものなんだぜ?」
と妙にイケボで言った。
「……」
私は意味がわからなすぎて戸惑っていると、沙也加が今度は私の顎をクイッと上に持ち上げた。
やばい。ホントに意味がわからない。今日の沙也加はいつにも増してセクハラ値がとてつもなく高い気がする。と思っているのも束の間、沙也加の顔がどんどん私に近づいてくる。
きゃーっ! 待って! ホントにヤバーい! このままだと私のファーストキスが沙也加に奪われちゃうぅぅぅ――!
と思いつつも沙也加のあまりの強引さに私が何もできずにいると、ふいに部屋の扉が開かれた。
「はるッ……お邪魔しましたー」
私がドアのほうに振り向いたときには、その声の主は唖然としていた。そして『お邪魔しましたー』という声とともに扉はすぐに閉められてしまった。
「風くん、違うのぉぉぉー!」という気持ちは私の口の中に留まり、彼には届かなかった。
「あはははは! オモロかった!」
「むぅ、オモロくないからっ!」
すると、沙也加が私をからかうような口調で言う。
「か、かわええー! あのな、あたしにとって遥の頬っぺ膨らましはご褒美でしかないからな! それをするとあたしはもっと調子に乗るぞ! 覚えとけよなっ!」
私はもう沙也加を黙らせる方法を知らなかったため、これ以上は何も言えない。
だから、代わりに沙也加にしかできないであろう頼み事をお願いしてみることにした。
「あのね。私、沙也加に一つ頼み事があるから聞いてもらってもいいかな?」
場の空気が変わった気がした。
そして、沙也加は先ほどの表情よりは少しかしこまった表情になる。
「なんだー?」
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