ミッション開始
「はぁ」
普段なら長く感じる授業の時間が今日はやけに過ぎるのが早い。授業の半分以上上の空で痴女先輩とどうすればうまく接触できるかを考えているというのもあるが。
「しかし、しまったなぁ……」
朝は痴女先輩の下駄箱に手紙をなんて案も候補に挙げていた僕だが、よくよく考えると痴女先輩の下駄箱の位置がわからないのだ。
「いや、聞けばいいのかもだけど」
痴女先輩の恋人が興味津々のフリはここでも有用に働く。それこそ恋人と下駄箱を使って連絡を取ってるのではと思ったからという建前で知りたいと思ったとすれば不自然ではないだろう。
「まぁ」
以後、聞いた人間の認識内で「先輩の恋人探しに精を出すミーハーな連中」の仲間入りをするという代償は払うことになるが。
「って、あれ?」
そこまで考えて、ふと気づく。
「下駄箱じゃなくていつも落ち合ってる場所に書置き残していけばよいのでは」
と。
「問題があるとしたら、書置きを誰かに見られた場合。それを持って行かれてニセの書置きとかを残された場合だけど」
推理モノと言われるジャンルの漫画や小説に出てくる犯人や名探偵でない僕に残された時間で対策を思いつけなどと言われても無理な話だ。
やれることと言えば、単純に恋人探しされてることを伝える文面を複数残して、あとは痴女先輩の推理力に頼るぐらいで。
「ここに潜んでいたら決定的瞬間とか……いや、そもそもここでいいのかもわかんないか。まずは――」
いつも痴女先輩と落ち合う放課後より早い時間帯、昼休みを利用してそこへ出向いた僕は、一応は先輩の恋人を探るために隠れつつ様子を窺おうとする人物のフリをしつつ、いつもの場所に足を運んだ僕は隠れられそうな場所をまずチェックしていた。
もちろんこれは先客が居ないかの確認だ。
「うん、まぁ」
流石に午後の授業をサボって今から潜んでいる気合の入ったある意味バカな人物はいないかとそう安堵しつつ手を伸ばすのは、掃除道具入れの扉。
「やぁ」
その中に「主におっぱいがとても窮屈そうに詰まった痴女先輩」を発見した僕は、無言で扉を閉めたのだった。
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