幼馴染の女の子と宅飲みした翌日の話

高久高久

女の子と宅飲み。何か起こるはずもなく――

「正座」

「いや、あの」

「正座」

「えっと、その」

そこ、に座れ」

「はい」


 圧に負けて床に正座させられると、幼馴染の女の子が俺のベッドに腰掛ける。

 この子の名は奏。それこそ幼稚園くらいの頃からの腐れ縁というやつで、酒を飲めるこの年頃になっても付き合いがある。

 昨晩も宅飲みに付き合わされ、朝起きたらこの有様である。


「な、何の? というか、何で俺正座させられてるの?」

「わからない?」

「全然」


 そう言うと、奏はわざとらしい溜息を吐いた。


「昨日、湊の家で宅飲みしました」

「はい」


 俺は頷く。ちなみに湊は俺の名前だ。


「夜遅くまで飲みました」

「はい」

「酔って私、寝ちゃいました」

「はい」

「――なんで、手を出さない」

「はい?」

「ここまでお膳立てしてるのに! なんで! 手を出さない!」

「えぇ……」


 何か理不尽に怒られた。ちょっと足を崩そうとしたが即座に「正座!」と怒られる。解せぬ。


「昨夜の話から! 私達、飲む! 私、酔う! 暑くなって服、脱いだ! 下着姿になりました! そこで『眠くなってきた』と私は転がりました! はい! 湊はどうした!?」

「えっと、俺のベッドに運びました」

「はいそこまでは良い! それでベッドに運んで!?」

「布団をかけました」

「何で!?」

「風邪引いちゃうといけないから」

「そういう優しいところ大好き! だけど! そうじゃない! そこは襲う所でしょうが! 折角勝負下着着て来たのに!」

「えぇ……」


 理不尽。だけどそう言ったら怒られそうだから黙っておく。


「その後! ソファで寝てた湊の隣! 私は寝ぼけて布団にもぐりこもうとしました! 全裸で! 全裸で挑みました! さて、湊君はどうした!?」

「いや、そのままだと風邪引くからまたベッドに連れて――」

「優しい! 好き! 大好き! でもそうじゃない! 温めるなら布団じゃなくて! 抱きしめなさいよ!」


 バンバンとベッドを叩く奏。


「据え膳だよ据え膳! これ以上までにない襲えってアピールしてるのに! なんで! 私を! 襲わない!」

「いや、だって……そもそも俺達付き合ってないし……付き合ってない女の子が酔ってる所を襲うって最低じゃない?」

「こっちは襲われるアピールしてるのよ! それくらいわかりなさいよぉ! あとちゃんとこっち見てよぉ! 自信失くすからぁ!」

「や、その、服着てよ……」


 バンバンと叩く度に、奏のぺぇが揺れる。ここまで、ずっと彼女は全裸のままである。なので俺はチラチラとしか彼女を見れない。


「何!? 私の裸なんて見たくない!? そこまで興味ない!?」

「いや、興味は――」

「あ、そこは答えなくてもいい。興味ないとか言われたら私死ぬと思うから」


 遮られたが、実は滅茶苦茶あります。幼稚園の頃とかは一緒の風呂とか入っていたけど、今はもう普通に成長しているから。ぺぇだって揺れるくらいある。見ていいならガン見したい。こっちだって男の子ですから。

 でもそんな事言えない。恥ずかしいので。


「そこは言えよぉ!」

「人の思考読まないでくれる!?」


 両肩を掴まれてガクガク揺らされる。ちょ、視界の端に揺れるお胸様が。お胸様がぁ!

 目を瞑って堪えていると、ピタリと急に動きが止まった。


「――言い訳できるようにはした」

「え?」

「ついムラムラってなって、襲っても仕方ないって状況シチュは作った。でも駄目だった」

「あの、奏さん?」


 奏が体重をかけて来て、俺は押し倒されていた。


「この鈍感男に手を出す言い訳を与えても駄目だった。待ってもこの鈍感男から手を出して来ない」

「いやあの、何で俺服脱がされてるの?」

「いいよね? もう襲ってもいいよね? こっちはもう好きって言ってるし、襲っても何の問題も無いよね? むしろ良く我慢したわ私」

「問題しか無いと思うよ? 後目がマジの目で怖いよ?」

「マジなんだから当然でしょ?」

「怖い怖い怖い怖い――って酒くせぇ!? まだ酔ってる!?」

「朝イチ起きてから一気に飲んだわよ! こんな事シラフで出来るかぁ!」


 ファースト――ではないか。幼稚園くらいにしたことはあるが、まぁ、奪われた唇は、酒臭かった。

 そしてこの後滅茶苦茶――以下略

 

 ――コトが済んだ後、奏も冷静になったようで超気まずかった。


「……奏さん、言い訳はありますか?」

「――えっと、ここまで拗らせるまで追い込んだアンタが悪い、って事でいいんじゃない?」

「いいわけあるか」



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幼馴染の女の子と宅飲みした翌日の話 高久高久 @takaku13

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